電脳筆写『 心超臨界 』

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( H・ジャクソン・ブラウン・Jr. )

歴史を裁く愚かさ 《 領土問題における米国の立場——西尾幹二 》

2024-09-17 | 04-歴史・文化・社会
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米国はかつて日ソ間に国境紛争が永く継続することを画策して、日本の北方領土の領有範囲をあらかじめ不明確にした当事国である。自国の利益のためとあれば、何でもする国である。日ソ間に争いを残したほうが米国にとってよい。そこまで残酷で、かつ冷酷に計算する米国はいま、尖閣諸島紛争が出来(しゅつらい)するや否や、しめたとばかりに、日中間の紛争で米国自身が漁夫の利を得るために、これを黙過し、どちらかに決して加担しない。これが米国の年来の流儀であり、生き方である。驚くべきことでもなんでもない。


『歴史を裁く愚かさ』
( 西尾幹二、PHP研究所 (2000/01)、p197 )
第4章 日本人よ、知的に翻弄されるな
1 「第二占領期」に入った日本

◆領土問題における米国の立場

しかし1996年において、外からの日本への圧力は、ようやく目に見えて少し厳しくなってきた。竹島、尖閣諸島にはじまる領土のしめつけ、そして沖縄問題。いよいよ冷戦後の何かが身近に迫ってきたのである。

サンフランシスコ講和会議で放棄をうたっていない――従って1905年の条約が国際法的に生きている竹島。もし韓国が本気で争う気なら、国際司法裁判所への日本の提訴を逃げるべきではないだろう。日本敗戦後の不法占拠は、どさくさ紛れの「侵略」といっていい。そして裁判の回避は侵略の継続にすぎない。

尖閣諸島の場合はもっと簡単だ。米軍は沖縄統治時代にここを射爆場にしていた。尖閣諸島が沖縄の一部であると認知していた証拠である。けれどもクリントン政権は尖閣諸島の危機に際して、日米安保条約が発動されるとは決して口にしなかった。竹島領有問題にももちろん立場を明らかにしない。

しかし、米国の戦略をひるがえって考えてみれば、これは当然である。

米国はかつて日ソ間に国境紛争が永く継続することを画策して、日本の北方領土の領有範囲をあらかじめ不明確にした当事国である。自国の利益のためとあれば、何でもする国である。日ソ間に争いを残したほうが米国にとってよい。そこまで残酷で、かつ冷酷に計算する米国はいま、尖閣諸島紛争が出来(しゅつらい)するや否や、しめたとばかりに、日中間の紛争で米国自身が漁夫の利を得るために、これを黙過し、どちらかに決して加担しない。これが米国の年来の流儀であり、生き方である。驚くべきことでもなんでもない。

米国が北方領土を不明確にする戦略を立てていたのは1940年代だといわれる。しかし当時、米国文書に尖閣諸島の名は出てきていなかった。さしもの米国ですらあの小島は関心の外だった。しかし今、国務省は日本と中国を半永久的に敵対させる手段をついに手に入れたことに、秘かにほくそ笑んでいるに違いない。だから領土問題で米国が日本を応援することなど考えられない。

それならそれでいい。日本政府は尖閣問題で一言、安保適用内を発言するよう米国政府に正当な要求をし、さもなければ、沖縄の米軍基地の使用についてもなんらかの制限を言うべきであろうし、論理的にも言うことが可能なはずであろう。
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