電脳筆写『 心超臨界 』

計画に失敗すれば、失敗を計画したことになる
( アラン・ラケイン )

彼の穏やかなやり方は、はるかに道理にかなったものだった――フレッド・ウィルポン

2010-10-22 | 08-経済・企業・リーダーシップ
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「リーダーになるために」
【 D・カーネギー協会[編]、創元社、p19 】

フレッド・ウィルポンは野球チーム、ニューヨーク・メッツ球団の社長である。ある日の午後、ウィルポンは生徒の一団を連れてシェー・スタジアムを案内していた。
彼は子どもたちをホームプレートの後ろに立たせたり、チームのダグアウトに入れてやったりした。それからクラブハウスの選手用通路を通らせてやった。スタジアム見学の終着点として、彼は生徒たちをブルペンに連れていってやろうとしていた。ピッチャーがウォーム・アップするところだ。

ところがちょうどブルペンの入口の外側で、彼らは制服を着た警備員に止められた。

「ブルペンは関係者以外には公開されていません」。警備員はウィルポンに、明らかに彼が誰なのかを知らずに言った。「お気の毒だが、そこへ行くことはできません」

ところで、フレッド・ウィルポンはたしかに、その時、そこで、自分のしたいことをする権力を持っていた。彼はその哀れな警備員にこの偉い自分の顔を知らないのかと言って、叱りつけることができたはずだった。また大袈裟な身振りで自由通行証をさっと取り出し、子どもたちに彼がシュー・スタジアムでどれほど力を持っているかを見せつけて、彼らの眼を丸くさせることもできたはずだった。

しかし、ウィルポンがしたのは、そのどちらでもなかった。彼は生徒たちをスタジアムの向こう側に連れていき、別の入口からブルペンに入れてやった。

なぜ彼はそんな面倒なことをしたのだろう? ウィルポンは警備員に気まずい思いをさせたくなかったのだ。警備員は何といっても自分の役目を果たしていたのだから、しかも忠実に。その日の午後、ウィルポンは自筆のメモを警備員に送って、彼の仕事ぶりに感謝の念を示しさえしたのだった。

もしウィルポンがこんなふうではなく、わめきたて大騒ぎを演じていたら、警備員はきっと怒り、その結果、彼の仕事ぶりにも影響が出てくることになるのは疑いのないことであった。ウィルポンの穏やかなやり方は、はるかに道理にかなったものだった。警備員は彼の気配りにたいそう恐縮した。この次にもしこの二人が会うことがあったら、ウィルポンを見間違えるなどということは、きっとなかったであろう。

フレッド・ウィルポンはリーダーである。といってもそれは、彼の肩書あるいは彼の稼ぐ給料のせいではない。彼を人びとのリーダーたらしめているのは、彼が人と人とが相互に影響し合うあり方を心得ているからである。

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