孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

東南アジア諸国への日本企業進出  加速する“脱中国” 所得水準向上で日系小売業の展開

2012-09-29 21:38:29 | 東南アジア

(今年6月、フィリピンに初出店したユニクロ “flickr”より By hiboshizakana http://www.flickr.com/photos/torax3/7433216292/

【朝日】が今月25日から27日かけて、日本企業の東南アジア進出に関する記事を掲載していました。
非常に興味深かったので、それら中心に概略をまとめてみました。

チャイナリスクで日本企業の“脱中国”加速
多くの日本企業が中国での経済活動を行っています。
近年の人件費の上昇を背景に東南アジア諸国に別の拠点を設ける“中国プラス1”の流れが以前からありましたが、先日来の暴徒化した反日デモに見られる“チャイナリスク”が改めて認識されたことで、“脱中国”の動きが加速しているようです。

“脱中国”の受け皿となっている国のひとつがカンボジア。今年の日系企業の投資は昨年の7倍になるとか。
安価な人件費に加え、インドシナ半島地域における中国・日本の開発援助競争で整備された幹線道路網の整備も、こうした動きを支えているようです。

****投資、向かうカンボジア 中国リスク、追い風に****
「そちらの団地を視察させて」「高度な技術を使う工場もやっていけますか」
カンボジアの首都プノンペン市街から車で西へ約45分。電気や上下水道などのインフラ設備が整った工業団地を開発・販売している会社「プノンペン経済特区」の上松裕士社長はいま、中国で事業を展開している日本企業からの問い合わせに追われている。(中略)

問い合わせが増えたのは、日本政府による尖閣諸島の国有化を巡って中国で大規模デモが起き、日系企業が略奪や放火にあった今月16日ごろからだ。上松社長は、それが「脱中国」の背中を押しているとみている。

日系企業のカンボジア投資は2010年からぐんぐん伸びた。今年は昨年の約7倍の5億ドル(約390億円)にのぼる見込みだ。政府の外国投資の窓口のカンボジア開発評議会によると、10年以降、これまで約500社の日系企業から相談があり、半分が製造業。その8割が中国からの移転話だったという。

2000年代後半以降、中国に進出した日系企業は、人件費の急騰や人手不足に音を上げ、中国事業を縮小・清算して新たな投資先を探す動きが出ていた。10年9月には尖閣諸島付近で日本の海上保安庁の巡視船に中国の漁船が衝突し、日中関係が悪化。日系企業が背負う中国リスクは一段と膨らんでいた。06年に沸き起こったベトナム投資ブームも、05年4月の中国の反日デモが背景のひとつだった。

「プノンペン経済特区」の開発済みの工業団地は東京ディズニーランドの2倍の広さ。すでに全区画、入居する企業が決まっていて、隣にその1.5倍ほどの工業団地をつくっている。「そこも来年末には売り切れるだろう」と上松社長。「心苦しいが、いまの状況はわが社には追い風です」

■輸送網整備、進む分業
20年前まで内戦が続いていたカンボジアは成長する東南アジア諸国連合(ASEAN)のなかでは落ちこぼれ組だった。人口約1300万人と小国ながら、労賃は安く、外資に対して開放的。輸送網が整い、国境を越えた貿易が急速にやりやすくなったことで中国に代わる投資先(中国プラス1)としての評価が一気に高まった。

ベトナムと国境を接するカンボジア南東部の町バベット。ベトナムからの観光客でにぎわうカジノ街を抜け、水牛が寝そべる水田地帯をさらに15分ほど走ると、マンハッタン、タイセンの工業団地がある。税制や通関手続きなどで優遇措置を受けられる経済特別区に指定されている。(中略)
 
特区の入り口には凱旋(がいせん)門のような重厚な門。その下をコンテナを載せたトレーラーがひっきりなしに出入りする。大半がベトナムナンバーだ。団地内の企業の製品が積まれ、65~80キロ離れたベトナム南部最大のホーチミン市の空港や港に運ばれる。

メコン川流域の各国のつながりを深め、地域全体を底上げしようという「大メコン圏開発計画」がアジア開発銀行(ADB)主導でスタートして20年。輸送網の整備が集中的に進められ、インドシナ半島を縦横に走る三つの幹線道路がほぼ出来上がった。ホーチミン市からバベット、プノンペンを通ってバンコクに抜ける「南部回廊」はそのひとつだ。

地域の国々は、物資の行き来をさらにスムーズにするため、入国管理、税関、検疫などの手続きが1カ所で済むワンストップサービスを導入。国境を越えるトラックにとっての利便性が飛躍的に高まった。

プノンペンの工業団地にある精密部品大手「ミネベア」の工場には週1、2回、約650キロ離れたタイ工場からデジタル映像機器に使う小型モーターの部品がトラックで運び込まれる。これらを組み立て、タイに送り返す。南部回廊のおかげで高度な加工技術が必要な作業はタイ、組み立てという人海戦術の作業は労賃が割安なカンボジアという「分業」が可能になった。

「わが国はハイテク産業の投資を誘致する新時代に入った」。昨年12月17日の開所式では、民間企業の行事にはめったに足を運ばないフン・セン首相があいさつに立ち、カンボジアでは初のハイテク工場の誕生に胸を張った。

■後発組に脚光、進出の機運
日本企業はいま東南アジア進出に前のめりになっている。「中国プラス1」として、インフラ整備で先行するインドネシアやベトナムで事業をできそうな工業団地を血眼で探し回っている。ただ、どこもいっぱいで賃金も高い。そこで注目しているのがカンボジアのほか、ミャンマー、ラオスといったASEAN域内の後発国だ。

民主化に踏み出したミャンマーは人口6200万人。エネルギー資源も豊富で、日系に限らず海外企業の関心は非常に高い。日本からの「下見」の出張者が急増していることもあって、宿泊設備が極端に不足。ヤンゴン市内の外資系高級ホテルの料金は昨年の2~3倍になっている。

人口が640万人と少なく、出遅れたラオスも好機を逃すまいと懸命だ。「我が国も産業化を進める時代になった。事務所を開設してほしい」。先月下旬、ラオスを訪問した日本貿易振興機構(ジェトロ)の石毛博行理事長は、面会したトンシン首相ら政権幹部から熱望された。隣のカンボジアでジェトロが事務所を開いた2010年から日系企業の投資が急増していたことを意識したとみられる。

これまでASEANの中での成長株はシンガポールやタイ、マレーシアといった海路をフル活用して輸出を伸ばしてきた国々だった。「カンボジア、ミャンマー、ラオスが陸路を通じて生産ネットワークに組み込まれ、経済的離陸を始めた。インドシナ半島を舞台にした『陸のASEAN』の登場だ」。ミネベアのカンボジア工場の香月健吾副社長は指摘する。 【9月25日 朝日】
************************

もっとも、販売市場としての中国の重要性を指摘し、生産の側面からだけの東南アジアへの拠点分散に対する否定的な見方もあります。

****チャイナ・プラス1は古い」=拠点の分散加速を否定―岡村日商会頭****
「チャイナ・プラス・ワンは遠い過去のものだ」。ベトナム訪問中の岡村正会頭(東芝相談役)は25日、尖閣諸島をめぐる日中関係の悪化を受け、日本企業がベトナムなど東南アジアへの拠点分散を加速させるとの観測が浮上していることについて「企業は生産と販売の両面から進出先を決めている」と語った。ハノイでの記者会見で語った。

岡村氏は「チャイナ・プラス・ワンは、生産拠点をどこに置くかという時代の発想。中国や東南アジアの市場の進展は早い」と指摘。製品の販売市場として重要性を増す中国から、日本企業が直ちにシフトすることはないとの認識を示した。【9月25日 時事】
********************

低賃金の労働力だけに頼る経済成長はいずれ限界に達する
安価な人件費もやがては上昇します。
インドネシアでは、日系企業など数百社が製造拠点を置く西ジャワ州ブカシ県の工業団地で今年1月、賃上げを求める労働者たちが、工業団地近くの高速の出入り口を封鎖しました。
高度成長の陰で所得格差が縮まらず、最低賃金の低さへの不満が充満しているためで、労働組合は来月3日に全国21カ所で200万人規模のゼネストを計画しています。

“日本貿易振興機構によると、東南アジア8カ国の昨年から今年にかけての賃上げ率の平均は8.0%。その1年前と同じハイペースの伸びだった。職場の賃金水準は口コミや携帯メールであっという間に広まる。企業は人手をつなぎとめるためにも周りと横並びで賃上げするしかない。外資の間では「このままだとコスト競争力が損なわれる」(ベトナムの日系企業関係者)との警戒感が広がっている。” 【9月27日 朝日】

****限界突破へ構造改革 ****
「東南アジアは、中国のような成長はできない」(小島オーナー)という見方がある。中国には2000年代後半まで、低賃金でスト権などを持たない労働者が無尽蔵にいたから外資もなだれをうって進出し、利益を上げた。しかし、いまの東南アジアで、労働者の権利が全く保障されていない国はないからだ。

ただ、賃金上昇は長い目で見て悪いことばかりではない。アジア開発銀行の東南アジア担当首席エコノミスト、ケリー・バード氏は「生活水準が上がり内需も増える。付加価値の低い製造業は国外へ出るかもしれないが、産業が高度化すれば働き手にも、経済にも利益は大きい」と解説する。

低賃金の労働力だけに頼る経済成長はいずれ限界に達する。その壁を打ち破ろうとしているのがタイだ。政府は企業に最低賃金の引き上げを突きつけて、人手が勝負の単純労働を周辺国に移すよう迫る。タイの大手ゼネコン幹部は「ミャンマーは15年でタイに追いつくだろう。労働集約型産業はもはやタイ経済の中核にならない」と言う。

マレーシアも最低賃金制度の整備を進めて「脱・労働集約型産業」を加速させる。「最低賃金は、東南アジアでシンガポールに次ぐ高い水準になる」(日本貿易振興機構)という。

東南アジア諸国連合(ASEAN)の先行組が構造改革を進めれば、インドネシアやベトナム、ミャンマーに仕事が回り、雇用が増える。格差が縮まって社会不安が収まるという好循環が生まれる可能性がある。それこそが台頭するアジアの未来のカギを握る。【9月27日 朝日】
************************

【「パイ自体がどんどん増えている」】
東南アジア各国での賃金上昇は、生活水準上昇に伴う消費構造の変化をもたらします。
そうした流れに沿った日本の小売業界の進出に勢いがあるようです。

****ファミマ、タイで3千店計画 コンビニの海外進出加速****
日本のコンビニエンスストアが海外にどんどん出店している。国内はやがて出店が頭打ちになるため、若者が増えるアジア各国で「陣取り合戦」を始めた。
ファミリーマートは24日、タイでの店舗数を今の746店から10年後には約4倍の3千店に増やす計画を発表した。(中略)

タイではセブン―イレブンが6千店以上を構えており、これを追う態勢を整える。
ファミマの海外店は約1万2千店あり、すでに国内9千店を上回っている。さらに計画では8年後に「世界4万店体制」を目指す。

大手コンビニは若者からお年寄りまで客層を広げることで2012年2月期に軒並み過去最高の営業利益をあげた。ただ、少子化でいずれは国内の成長も鈍るという危機感から海外出店を急ぐ。
とくにセブン―イレブンは海外にすでに約3万3千店を出し、断トツだ。「本家」の米セブン―イレブンの運営会社を1991年に買収したことで世界中に店舗網が広がった。(中略)

日系コンビニには新興国の関心も高く、提携の誘いも多いという。ただ、SMBC日興証券の川原潤シニアアナリストは「どの国も外資を嫌う傾向があり、政情不安の危険もある。提携先の見極めが重要だ」と忠告する。(古谷祐伸) 【9月26日 朝日】
**********************

今年5月の中国旅行で上海の北新駅周辺に宿泊した際に、ローソンとファミリーマート(全家)の日本国内以上の多さに驚きました。道路向かいも同系列店がもうひとつある・・・といった具合で、計画的な出店の発想はないのだろうか・・・と訝しく思いました。
それはともかく、ファミリーマートは今後、フィリピンやインドネシアにも出店の計画があるようです。
セブン・イレブンが20年以上前に米本家を買収していた話は知りませんでした。

日本の小売業界でコンビニと並んで元気があるのが“ユニクロ” 日本の消費行動のひとつのパターンにもなりつつありますが、東南アジアへの出店も盛んなようです。
背景には、東南アジア諸国の所得上昇に伴う消費構造の変化があります。

****東南アジア、消費沸騰 中間層増え「高級」ユニクロに列****
今年6月、マニラ首都圏パサイ市のショッピングモールに「ユニクロ」のフィリピン1号店がオープンした。最初の3日間で1万人が訪れ、470坪の店内に入りきらず、行列は1時間半待ち。特別価格590ペソ(約1100円)のジーンズ、Tシャツ、ポロシャツが飛ぶように売れた。

ユニクロの出店は、東南アジアではシンガポール、マレーシア、タイに続く4カ国目だが、2千ドル台の1人当たり国内総生産(GDP)は先行国と比べて格段に低い。日本とほぼ同じ値段で売られるユニクロの商品は、フィリピンでは「高級」の部類に入る。それでもフィリピンの店は日本・海外の計1200店舗の中でもトップクラスの売り上げを記録している。

ファーストリテイリング・フィリピンの久保田勝美・最高執行責任者(COO)は「ずばり、中間層の『手が届くあこがれ』にハマった」と説明する。フィリピンでも近年、中間層は確実に増えている。家や自動車は無理だけれど、上向いてきた生活を実感したい。ちょっといいものを着たい。そんな強い欲求をすくい上げた。
ユニクロの出店目標は3年で50店舗。久保田さんは「日本との一番の違いは、パイの奪い合いになっていないこと。パイ自体がどんどん増えている」と話す。

フィリピンとともに東南アジア諸国連合(ASEAN)の中で大きく出遅れていたインドネシア。午前4時半、日の出前のイスラム礼拝を呼びかけるアザーンが流れるなか、荷台に「サリ・ロティ」のパンを積んだ15台の自転車が首都ジャカルタの狭い路地裏に飛び出した。各家庭を回り、午前8時までに1台で100点ほどを売る。
食パン1斤の値段約80円はコメなら十数食分に相当する。「昔は『朝食に高価なパンなんて』と言われたものだ。3食米飯を食べるのが普通だったから」と、売り子を始めて15年のトゥギマンさん(43)。

サリ・ロティは日本の敷島製パンと双日、インドネシアの財閥サリムグループなどが出資する国内最大のパンブランド。売り上げの7割を占めるコンビニエンスストアやスーパーとともに、全国2千台の自転車売りは販売の両輪となっている。売り上げは2006年から毎年2割以上伸び、今は毎月、食パン1千万斤など2500万点を売る。
6工場での製造が追いつかず、年内に新たに2工場がオープンする。双日インドネシアの岡部卓夫・食料部長は「路地裏でも中間層は増えている。消費が本格的に爆発するのはこれからだ」と意気込む。

1人当たりのGDPが3千ドルを超えるとモータリゼーション(自動車社会)の時代に突入するとされる。70年代の日本、80年代の韓国がそうだった。インドネシアが3千ドルに乗ったのは一昨年。昨年の国内新車販売台数は89万4千台余りで、タイを抜き、ASEANでトップに躍り出た。(中略)

■さらなる成長、外資カギ
成長の歯車が回り出した背景には、政治の安定がある。フィリピンは01年の政変後に発足したアロヨ政権以降、インドネシアは04年のユドヨノ政権の登場で政治が落ち着き始めた。ビジネス環境が改善する中、「人口大国」ともてはやされるようになり、海外から資金が流入。株価は史上最高値を塗り替え、旺盛な消費が成長を押し上げる。

ただ、危うさも垣間見える。インドネシアではクレジットカードのローンが社会問題化している。同国の中央銀行によると、カードの発行枚数は約1600万枚で、この5年間で約680万枚増えた。
身の丈以上に出費する人が少なくなく、一時は貸出金のうち不良債権が13%近くに達した。中銀は、来年からクレジットカード保有数を1人2枚までなどとする規制強化に乗り出した。

一方、銀行口座を持っているのは人口のわずか3割にとどまる。貯蓄が増えず、息の長い成長に必要な投資に回す資金を準備できなくなる可能性がある。もう一段上の成長のステージに乗るには、海外からの投資がかぎを握る。外資をどんどん取り入れて急速に豊かになったタイが手本になる。

インドネシアはしっかりとタイの軌跡を歩むことができるか。そしてフィリピンはインドネシアに続くことができるか。ASEANの「期待の星」は成長の難路に差しかかっている。【9月26日 朝日】
********************

なお、反日デモのさなかにいろいろ話題にもなったユニクロですが、28日には北京と遼寧省瀋陽に新しい店をオープンさせています。
“中国の建国記念日「国慶節」の大型連休を控え、10月1日までに予定通り、さらに10店を出す。反日機運のなかでも、巨大市場、中国への攻勢を続ける方針だ” “8月末現在で中国内には145店を展開する。毎年100店ほどの出店を目指しており、今年も80店ほどのめどがついているという”【9月29日 朝日】
日本製品不買運動の動きもあるなかで強気の展開ですが、それだけ消費者ニーズに合致した強みがあるということでしょう。

日本の「イオン・モール」も、2014年、カンボジア・プノンペンに初出店するそうです。
出店数は150店。プノンペンで最大級のショッピングエリアとなるとか。
“集客のターゲットは「若いファミリー」。人口の7割が30代以下の国で、購買力を持つ働き盛りの人口は、末広がりに増えていく。(中略)「今のカンボジアは日本の1960年代の状況と似ているが、成長のスピードは日本の4倍ともいわれる。その勢いに期待を込めた」と、同社幹部は言う。”【9月28日 DIAMOND online】

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ロシア  メドベージェフ首... | トップ | ソマリア  南部拠点都市か... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
今日の朝日新聞での記事見たぜ。 (ssri)
2012-12-09 06:39:07
ひでえな、この経済音痴が。一からやり直せ。
反日新聞にご協力か。困ったもんだぜ、よお、売国奴!
返信する

コメントを投稿

東南アジア」カテゴリの最新記事