孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ベネズエラ  大統領選挙に向けて想定される、いろいろなシナリオ  先住民虐殺情報の謎

2012-09-06 22:54:40 | ラテンアメリカ

(アマゾン先住民族である「ヤマノミ」は狩猟・採集で生活しており、衣服は殆んど着用しないそうです。
ブラジル・ベネズエラからの保護を受けていますが、近年、ヤノマミ族の居住地域で金が発見され、鉱夫の流入は疾病、アルコール中毒、暴力をもたらしているとも言われています。【ウィキペディアより】
写真は“flickr”より By todogaceta.com http://www.flickr.com/photos/todogaceta/7911312334/

健康問題を抱えるチャベス大統領 追い上げる野党統一候補
南米ベネズエラでは約1カ月後の10月7日に大統領選挙が行われます。
その極端な反米的言動などで何かと世間を騒がせることが多いチャベス大統領が再選を目指しています。
海外での悪評にもかかわらず、国内では石油収入によるバラマキ政策の成果もあって高い人気を誇るチャベス大統領の最大の問題は健康問題です。

チャベス大統領は昨年6月以降、がん性腫瘍を骨盤から摘出する手術を同盟国キューバで2回行っていますが、具体的な発症部位やがんの種類は公表されていません。

7月9日には、がんは完治しており、10月の大統領選に向けた激しい戦いの障害となる健康上の制約はないと2回目の“完治”宣言を行っています
“「こうしてここに立ち、日々体調が良くなっていくのを感じられることを神に感謝している。『健康上の制約』という言葉が選挙活動の(障害となる)要因にはならないと確信している」”【7月10日 AFP】

しかし、キューバでの治療で国を空けることも多く、重体説が何度も流れる状況で、“完治”を信じていない向きも多いようです。
チャベス大統領の政治への評価に加え、そうした健康問題もあって、選挙戦では対立候補のカプリレス前ミランダ州知事が追い上げてきているとも言われていますが、チャベス大統領の人気の壁は厚く、健闘はしているものの壁を突き崩すまでには至っていない・・・というのが大方の見方です。

****ライバルの人気上昇でも、チャベスは強し*****
もし選挙が持久力で決まるものなら、10月7日のベネズエラ大統領選は、野党連合「民主統一会議(MUD)」の統一候補であるカプリレス前ミランダ州知事の大勝だろう。
若く活動的なカプリレスは、現職のチャペス大統領を支持率で追い上げ勢いづいている。一日にいくつもの町を回って演説し、記者の質問に答え、子供たちとバスケもして汗のかきどおしだ。

カプリレスはかつて、チャペス体制に対する暴力を扇動したとして短期間収監されたことがある(後に不起訴となった)。この経歴から彼は、チャペスの社会主義的「ボリバル革命」に立ち向かう闘士、野党の新たなスターとして台頭した。

政権交代はいつ起こってもおかしくない。肥沃な土壌と豊富な石油資源に恵まれながら、13年間のチャペス体制のせいで停電や生活必需品の不足、21%のインフレ率に悩まされている。

チャベスの支持率は、過去最低といってもまだ50%近く、勝算は十分。癌闘病中でもあるというのに強いのは、13年間バラマキ独裁を続けてきたから。ベネズエラ人の2人に1人は何らかの政府援助を受けている(原油収入のおかげた)。

メディアに対する締め付けは中国も驚くほど。カプリレスが全国を遊説する間にも、テレビで数百万人に語り掛ければいい。
「ほとんどの人は、指導者といえばチャベスしか知らない」と引退したベネズエラの外交官ディエゴ・アリアは言う。 カプリレスが汗をかかなければならないわけだ。【9月12日号 Newsweek日本版】
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仮に、カプリレス候補が今後更に追い上げて勝敗の行方が分からないような状況になったら、チャベス大統領が素直に選挙を行うだろうか?という疑問もあるようです。
支持勢力を使って社会混乱状態を起こせば、非常事態宣言を出して選挙を先のばしすることも可能です。

また、カプリレス候補が勝利したとしても、軍部がどのような出方をするのか?議会で過半数を占める現与党勢力がどのような対応に出るのか?・・・いろいろ問題は尽きないようです。

一方、チャベス大統領が勝利すれば、 “本当に職務を全うできるのか?”という大問題があります。
任期6年間の最初の4年間に職務を遂行できなくなった場合は、特別選挙が行われる憲法上の規定があります。
チャベスなき「特別選挙」となれば、与党側の勝利は難しいとも思われますが、そうなると与党側がどのような対応に出るのか・・・という話になります。【8月8日号 Newsweek日本版より】

10月7日の投票日に向けて、また、選挙結果確定後もしばらくは、いろんなケースがあり得るベネズエラ情勢です。

アマゾンに住む先住民族「ヤノマミ族」の虐殺情報、政府・大統領は否定
そのベネズエラで、何やらよくわからない事件が話題となっています。
ベネズエラのブラジル国境に近いアマゾン地域に住む先住民ヤノマミ族の約80名が、ブラジルの金採掘業者に虐殺された・・・・という情報です。

****ベネズエラ、少数民族ヤノマミ族が大量虐殺****
非公式筋の情報によると、ブラジルとの国境に近いベネズエラの熱帯林イロタテリ村で大量虐殺の結果、約80人が死亡した。AP通信が伝えた。RBKの報道によると、アマゾンに住む少数民族のヤノマミ族はすでにベネズエラ政府に対し、虐殺の状況についての調査を依頼している。

ヤノマミ族のリーダー、ルイサ・シャチヴェ・アヒヴェイ氏によれば、襲撃が行われたのは7月初めで、イロタテリ村を通った隣村の住民が村が完全に焼き払われているのを発見。ある家屋からは黒こげの死体が見つかったことから大量虐殺が行われたのではないかとの疑惑が持ち上がった。

事件当時、村の3人の住民は森に狩りに出ていて命拾いした。3人は銃声、爆発音、ヘリコプターの音を聞いており、隣国ブラジルの金鉱山労働者らが貨物輸送にヘリコプターをよく利用することから、アヒヴェイ氏によれば虐殺を行ったのはこうした労働者ではないかとの疑いを抱いている。

襲撃の原因については、イロタテリ村の生き残った3人もヤノマミ族も、炭鉱労働者に襲われそうになったヤノマミ族の女性をこの村の住民が助けたからとの見方を表している。
ベネズエラ政府は現段階ではこの情報を公式的には確認していないものの、調査を開始することを約束している。
【8月30日 The Voice of Russia】
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この先住民虐殺情報に関し、ベネズエラ政府は“虐殺の証拠は発見されなかった”としています。

****アマゾン先住民虐殺か、ベネズエラ政府は「証拠発見できず****
南米ベネズエラのアマゾン地域に住む先住民ヤノマミ族がブラジルの金採掘業者に虐殺されたとの情報について、ベネズエラ政府は同地域を調査した結果、虐殺の証拠は発見されなかったと明らかにした。

ブラジルとの国境に近いベネズエラ南部に住むヤノマミ族の代表組織は先週、ブラジルの金採掘業者が国境を越えて同族の集落をヘリコプターから攻撃したと発表。70人以上が殺害された可能性があるとしている。
攻撃が発生したのは7月とされているが、ヤノマミ族の集落が孤立しているなどの理由から、ベネズエラ政府に連絡するまでに時間がかかったという。

一方、同国当局は先週末、攻撃があったとされる地域を低空飛行して調べたが、虐殺の事実はなかったとの結論に至ったと発表。マルドナド先住民問題担当相は「証拠は見つからなかった」と述べた。

先住民の人権団体は声明を発表し、同地域が遠隔地にあることや、ヤノマミ族が一つの場所に定住しないことから、当局者が虐殺発生現場を見つけることは困難だと指摘。ベネズエラ政府に調査の継続を要求した。

ブラジル政府は先週、ベネズエラに詳細な情報を求め、ブラジル人の関与について問い合わせたと発表。ブラジル外務省は3日、ベネズエラ側から調査支援の要請はまだ受けていないと明らかにした。【9月4日 ロイター】
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5日には、チャベス大統領自身が「虐殺の証拠は存在しない」と発表しています。

****ベネズエラの先住民虐殺、「証拠存在せず」 チャベス大統領****
ベネズエラ南部のブラジルとの国境付近で7月に先住民族のヤノマミ人80人が虐殺されたとされる問題で、同国のウゴ・チャベス大統領は5日、虐殺の証拠は存在しないと述べた。(中略)

5日の記者会見でチャベス大統領は、「(虐殺に関する)証拠や先住民族の証言は、どこからも出てこなかった」と述べ、虐殺の事実を否定した。【9月6日 AFP】
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普段なら「アメリカの陰謀だ」とか、騒ぎを大きくするチャベス大統領が随分あっさりと「何もなかった」と幕引きをしたがっているのが、却って奇妙な感じもします。
ブラジルともめ事を起こしたくない事情でもあるのでしょうか?
もっとも、【8月30日 The Voice of Russia】に見るように、虐殺を主張する側の言い分もかなり曖昧な部分がありますので、本当のところはわかりません。

なお、ベネズエラ・カラカスのアメリカ大使館職員が「選挙戦でチャベス大統領を追い込む予想外の出来事が起こる」と、謎めいた(あるいは、根拠のはっきりしない)発言をしています。
「US Embassy in Caracas predicted an “extraordinary event” that will defeat Chávez in the October 7th Presidential election」(http://www.voltairenet.org/US-Embassy-in-Caracas-predicted-an

上記ページでは、ベネズエラ西北部パラグアナにある同国最大のアムアイ製油所で8月25日に発生した爆発事故による火災(死者48人)との関連を取り上げていますが、どうでしょうか・・・。
コメント
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