孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ギリシャ  難航する緊縮策国内調整 厳しさを増すEUからの圧力 国内では極右が支持拡大

2012-09-09 21:35:48 | 欧州情勢

(ギリシャ第2の都市テッサロニキで行われた9月8日の緊縮策抗議デモを呼びかけるポスター(?) “テッサロニキから反撃が始まる 我々か、それとも彼らか!!!”と表現は過激ですが、デモは大きな混乱はなかったようです。ただ、それは国民の不満が大きくないことを示すものではありません。 “flickr”より By Dimitris Vassios http://www.flickr.com/photos/67463737@N05/7938858134/

【「細かい技術的な問題」が残っている
ドイツ・メルケル首相、フランス・オランド大統領との協議を何とか終えて帰国したギリシャ・サマラス首相ですが、肝心の緊縮策に関する国内における与党間の最終調整が難航しています。

サマラス政権は2014年までに財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以下にするため、115億ユーロ(約1兆1500億円)規模の新たな歳出削減策を取りまとめる作業を行っています。
一方で、この目標の実行期限を2年間延長することを求める緩和策も要請しています。

****緊縮策の最終調整が難航=低所得者負担で一致せず―ギリシャ****
ギリシャのサマラス首相は29日、欧州連合(EU)などと合意した緊縮財政策の具体策をめぐり、政権に協力する左派2党の党首と会談した。だが低所得者の年金削減などで調整が難航、最終決定に至らなかった。同国への支援を判断するEUなどの財政監視団との協議を来月に控え、首相はぎりぎりの調整を続ける。

ギリシャからの報道によると、ストゥルナラス財務相は会合後、「細かい技術的な問題」が残っているとしながらも、緊縮策の大枠は政治合意に達したと語った。
しかし、全ギリシャ社会主義運動(PASOK)のベニゼロス党首は、緊縮策の詰めの協議を続けると指摘。民主左派のクベリス党首は「低所得者がこれ以上負担を負うべきではない」とし、最終合意はできていないとの認識を示した。【8月30日 時事】
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先週末からは、欧州委員会と欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)で構成するトロイカの調査団がギリシャを訪れて協議がなされており、また、14日にはキプロスでユーロ圏財務相会合が開催される予定ですが、国内最終調整が完了したという話はまだ聞きません。

****ギリシャは政策実行が鍵」 緊縮策めぐり連立3党の調整続く****
ギリシャの連立政権は、ユーロ圏残留のために国際社会の債権者を納得させることを目指し、さらに2年間に及ぶ財政緊縮策について一致点を見いだす努力を続けており、サマラス首相は今後1週間、各方面と激論を戦わせることになる。

欧州連合(EU)の行政執行機関、欧州委員会と欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)で構成するトロイカの調査団は、7月に始まった支援条件の履行状況をめぐる審査を完了するため、7日にアテネに戻る。しかし、サマラス連立政権の結束を試す115億ユーロ(約1兆1300億円)相当の予算削減案に関する連立3党の作業は、7日の段階でも続いている公算が大きい。

バンク・オブ・アメリカ(BOA)の欧州通貨戦略責任者、アタナシオス・バンバキディス氏(ロンドン在勤)は「ギリシャについては実行こそが鍵だ。言い換えれば、政府が存続し、プログラムを実行できるかどうかが鍵になる」と指摘。「ギリシャは新たな支援パッケージと大幅な債務減免を獲得し、新政権が発足したばかりであるにもかかわらず追加資金を必要としている。ギリシャが現段階でプログラムを実行できなければ、同国に資金を提供しても無駄だとトロイカが結論付ける可能性が高い」と話す。

ギリシャのストゥルナラス財務相は9日にトロイカと会合を持つ。サマラス首相は、キプロスの首都ニコシアで14日に開かれるユーロ圏財務相会合よりも前に歳出削減策を確定させたい考えで、連立パートナーの全ギリシャ社会主義運動(PASOK)および民主左派党首との合意を取りまとめる必要がある。【9月6日 Sankei Biz】
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サマラス首相は7日、首都アテネでEUのファンロンパイ大統領と会談しており、「ギリシャ経済の再建には、EUなどからの融資が欠かせない」と述べ、EUがすでに合意した財政支援の一部、31億ユーロ余り(日本円でおよそ3100億円)の融資を速やかに実施するよう要請しました。(9月8日 NHKより)

また、8日には、「ユーロ圏の離脱に直面しているギリシャにとって、追加削減策を実施し、再び信頼できる国のイメージを確立することは、債務危機から抜け出すための唯一の道だ」「115億ユーロの追加削減策を実施する以外、方法はない」との決意を語っています。【9月9日 CRI onlineより】
なお、この日、この発言がなされたテッサロニキでは、後述するように、サマラス政権発足後初の緊縮策抗議大規模デモが行われています。

【「ユーロ圏がギリシャに週6日働くよう求める」】
しかし、ギリシャに対する海外の視線は厳しさを増しています。

****ギリシャ守るため週6日働け」EUが労働改革要求****
国家破産を逃れたかったら週6日働け――。財政危機に陥ったギリシャの現状を検証する欧州連合(EU)などの調査団が5日、アテネを再訪。その直前、EUなどがギリシャに求めたとされる労働市場改革の内容が報じられ、波紋が広がっている。

調査団はギリシャの現状について約1週間かけて調べ、10月初めまでにユーロ圏各国に報告する予定だ。これを受けて、各国は融資を続けるか判断する。もし融資が止まれば、「ユーロ圏離脱」につながる。
ギリシャの政権は、調査団が来るまでに、2013年からの2年で計115億ユーロ(約1兆1千億円)の財政赤字の削減策を定める予定だったが、細部が詰められず、詳細を発表できていない。

財政再建が遅れる中、英紙ガーディアンなどは、EUなどが8月末にギリシャに送ったとされるメールについて「ユーロ圏がギリシャに週6日働くよう求める」との見出しで報じた。
財務相と労働相に宛てられたといい、労働環境の柔軟性を増すためとして、週6日働くことを認めたり、残業時間の制限を緩めたりするよう要求。約23%の高い失業率を下げるため、企業が人を雇いやすいように最低賃金の引き下げも求めたという。

ギリシャの政権は、財政赤字削減の達成期限を2年先延ばしすることを求めている。フランスのオランド大統領は4日、「調査団の報告が、ギリシャが努力し、信頼に足ると知らせてくれたら、現在の救済策は見直されるべきだ」と述べ、柔軟な姿勢を見せた。【9月6日 朝日】
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****ギリシャは「結果出せ」=EU大統領が改革訴え****
欧州連合(EU)のファンロンパイ大統領は7日、財政危機に陥ったギリシャのサマラス首相とアテネで会談し、財政再建や構造改革を着実に推進するよう求めた。同大統領は会談後、「ギリシャが結果を出せば、EUやEU加盟国も引き続き支援する」と強調した。

ギリシャはユーロ圏と国際通貨基金(IMF)からの最大1300億ユーロの第2次支援と引き換えに、2014年までに計約115億ユーロの緊縮策実行を約束したが、厳しい景気の冷え込みを背景に、具体策の取りまとめが遅れている。【9月8日 時事】 
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移民の「悪臭」を含め、ギリシャからすべての外国人を追放
一人が週6日働くより、二人で3日ずつ働いたほうが失業率も下がっていいのでは・・・とは思いますが、それはともかく、自業自得の側面が強いとは言うものの、生活を更に苦しくする緊縮策を迫られているなかで「週6日働くよう求める」とか「結果を出せ」とか外部から言われては、ギリシャ国民も面白くないのではないでしょうか。

****ギリシャで初の大規模デモ=給与、年金カットに抗議****
ギリシャからの報道によると、同国北部にある第2の都市テッサロニキで8日、欧州連合(EU)などによる支援条件として政府が策定を急ぐ公務員給与や年金削減に抗議し、1万人を超える労働組合員らがデモを行った。サマラス政権が6月に発足して以来、緊縮策に反対する大規模デモは初めて。

ロイター通信によると、デモに加わったのは労組や左派組織のメンバーら1万5000人規模。一部の参加者がEUの旗を燃やすなどしたが、大きな混乱はなかった。【9月9日 時事】
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“サマラス政権が6月に発足して以来、緊縮策に反対する大規模デモは初めて”というのはむしろ意外ですし、規模も1万人超と、さほど大規模でもありません。事態打開のため相当に我慢を強いられ、委縮しているようにも思えます。
しかし、国民の不満は着実に募っているようです。

****ギリシャ世論調査、極右政党「黄金の夜明け」の支持率が拡大****
ギリシャのTo Pontiki紙の委託によりパルスが行った世論調査によると、緊縮財政に苦しむ国民の間で、極右政党「黄金の夜明け」が支持率を伸ばしている。調査では、いま選挙が行われた場合、同党は3位になるとの結果が出た。

「黄金の夜明け」は、移民の「悪臭」を含め、ギリシャからすべての外国人を追放することを目指しており、ここ数カ月の移民攻撃に関係しているとの見方もある。
調査によると、「黄金の夜明け」の支持率は10.5%で、同党が議席を獲得した6月の選挙時から約4%ポイント上昇した。

一方、海外からの支援を支持する連立与党の新民主主義党(ND)の支持率は6月時点の29.7%から25%に低下した。選挙で敗北した急進左派連合(SYRIZA)の支持率は24%で、約3%ポイントの低下となった。
連立与党に参加している全ギリシャ社会主義運動(PASOK)の支持率は、「黄金の夜明け」に抜かれて第4位の8%。民主左派党は約2%ポイント低下して4.5%となった。【9月7日 ロイター】
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ギリシャ支援が実現するか否かは、最大の支援国となるドイツの意向が強く反映されます。
ドイツ国内には“働かない放漫財政のギリシャ”をこれ以上支援することへの強い抵抗があるのは周知のところですが、ドイツ経済がこれまでそうしたギリシャなどを大きな輸出先とし、今も欧州経済危機によるユーロ安で輸出拡大・失業率低下という多大なメリットを享受しているという側面もあります。

あまり追い詰め過ぎて、ギリシャのユーロ離脱、ギリシャ国内での極右台頭といった事態になるのは得策でないように思えます。
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