
(ケベック党ポリーヌ・マロワ党首(中央女性)の勝利演説中に発砲事件があり、混乱する現場 左右の男性は犯人ではなく、ボディーガードもしくは党関係者です。 “flickr”より By Paraíba http://www.flickr.com/photos/joaoesocorro/7936289488/)
【第1党に、ただし過半数には届かず住民投票実施は困難】
スコットランドのイギリスからの独立の動きについて、2012年1月11日ブログ「イギリス スコットランド独立を問う住民投票を巡る議論」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120111)で取り上げたことがあります。
スコットランドの歴史的経緯や、イングランドとの異質性はあるにしても、第三者的には“イギリス”という枠組みの存在感が圧倒的なため、「本気かね・・・?」というのが正直な感想です。
似たような問題がカナダにもあります。フランス系住民が多くフランス語のみを公用語とするケベック州の独立問題です。
4日に行われたケベック州議会選挙で、独立を掲げるケベック党が勝利したそうです。
ケベック党はこれにより州首相を手にしますが、過半数には至らず、分離独立の是非を問う住民投票の実施は難しい状況です。
この選挙結果に加えて、ケベック党首の勝利演説中にイギリス系住民による発砲事件が起きたということで、今後の分離問題の扱いが更に難しくなりそうです。
****加ケベック議会選は独立派勝利、党首演説中の発砲事件で1人死亡****
カナダ・ケベック州で4日、議会選が行われ、独立派の野党ケベック党が、与党・自由党を抑え9年ぶりに第1党になった。
ただ、ケベック党のポリーヌ・マロワ党首の勝利演説中、会場内で男が発砲し1人が死亡する事件が起こり、同党勝利に暗い影を落とした。
カナダは比較的犯罪率が低い上、政治にからむ暴力犯罪はまれなため、今回の事件発生で衝撃が広がっている。
議会選では、ケベック党が全125議席中54議席を獲得し、50議席の自由党に小差で勝利。しかし、過半数に届かなかったことから、カナダからの分離の是非を問う住民投票の実施は難しくなった。
同州初の女性首相となるマロワ氏は演説で、ケベック州はいつの日か独立を勝ち得ると支持者に訴えていたが、事件発生を受けボディーガードに付き添われ壇上から避難した。マロワ氏はその後、壇上に再び戻り演説を締めくくった。
警察によると、50歳くらいの男が会場に侵入し2人に向け発砲。2人は重体となり、うち1人の死亡が後に確認された。男は現場で「英国系住民が目を覚まそうとしている」と叫んでいたいう。また、男は会場の建物に放火した疑いも持たれている。
同州では、ケベック党政権時代の1980年と1995年に分離独立の是非を問う住民投票が行われたが、独立派がいずれも敗れている。【9月5日 ロイター】
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95年の分離独立を問う住民投票では、反対が50.6%とかろうじて半数を超え、賛否拮抗した結果となっています。
【カナダ人の49%が「ケベック州がカナダから分離独立してもあまり気にならない」】
一方、カナダ国民の間では、ケベック分離問題は覚めた目で見られている・・・という調査も報じられています。
ケベック州の経済的、政治的な影響力が、従前に比べて低下してきているという状況も反映した意識変化のようでもあります。
****カナダ人の半数、ケベック州が独立しても「別に…」 世論調査****
カナダ人の半数は、フランス語住民の多いケベック州がカナダから分離独立しようがしまいが「さして気にならない」と考えているとの世論調査が6月29日、今年の州議会選挙を前に発表された。
世論調査会社イプソス・リードによる2回の調査では、ケベック州以外に暮らすカナダ人の49%が「ケベック州がカナダから分離独立してもあまり気にならない」と回答し、独立したとしても「たいした問題ではない」と回答した。
カナダの国土と人口の5分の1を占めるケベック州では、分離独立の是非を問う住民投票が1980年と95年に2度行われ、ともに否決されている。だが95年の投票は僅差だった。
イプソス・リードのダレル・ブリッカー社長は、「(ケベックの独立という)脅し文句は、長年にわたってあまりに多くの回数繰り返された。人びとはすでにこの議論から離れており、この国は別の方向へ歩み始めたのだろう」と語った。
またブリッカー氏は、カナダ西部の資源豊富な州が影響力を強めるにつれて、ケベック州の経済的、政治的な影響力が失われたと指摘した。
2回の調査はそれぞれ6月11~18日、20~25日に実施され、第1回調査はカナダ人1101人を対象に行われ誤差の範囲は3.0パーセント、第2回は同1009人で誤差範囲3.1パーセントだった。【7月1日 AFP】
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“単純に見ると、独立運動は労働組合と地方の住民に根強い人気があり、不況になると勢いづき、景気が回復すると下火になる。”【ウィキペディア】とのことです。
“1982年のカナダ新憲法をケベック州のみが批准していない”“ケベック州議事堂にはカナダの国旗はなく、ケベック州の旗のみが掲げられている”【ウィキペディアより】と、部外者には理解しづらいものがありますが、分離独立運動はアフリカ・アジアの強権支配的な途上国で起きるものといったイメージもあって、やはり「本気かね・・・?」という印象が否めません。
【相当な量が無くなった】
ケベック党も過半数は得られなかったということで、さしあたりケベックの世界に与える影響は、特産品メープルシロップの価格が上がるかも・・・という、こちらの話題です。
****カナダのメープルシロップ倉庫で盗難、24億円相当を保管****
カナダ東部のケベック州の倉庫で、メープルシロップが大量に盗まれていたことが分かった。業界団体が31日明らかにした。
倉庫はモントリオールの北東約160キロにあり、約4500トンのメープルシロップが保管されていた。金額にして3000万カナダドル(約23億8000万円)相当だという。業界団体の代表者は、このうちどの程度が盗まれたかは分からないとした上で、相当な量が無くなったと発表した。
メープルシロップの盗難は、定期的なチェックの最中に発覚した。業界団体は闇市場での販売目的で盗まれたとの見方を示した。
世界に供給されるメープルシロップの約75%はケベック州で生産されている。ただ業界団体は在庫があるとし、「供給不足に陥ることはない」としている。【9月3日 ロイター】
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メープルシロップのようにかさばるものを盗んで一体どうするつもりなのか・・・という気もしますが。