孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  経済低迷のなか、政策方向性を決める「三中全会」開催

2024-07-15 22:45:33 | 中国

(2月27日、深センで世界で初めて海を渡る飛行に成功した峰飛航空科技のeVTOL「盛世龍」 往復で100kmを超える距離、道路を走れば片道2時間半から3時間かかるところを20分で飛行した。【3月27日 マネーポストWEB】電動モーターを使用しており、一回の充電で250kmの飛行が可能。最大積載人数は5人(操縦者1人、乗客4人)、最大積載荷物重量は350kg、走行速度は200km/h以上、同じレベルのヘリコプターよりは遥かに安くなるとのこと)

【低迷する中国経済】
不動産不況、地方財政悪化、若者の失業など中国経済の低迷と言うか、ひと頃の勢いを失っていることは周知のところ。

****「景気が良くないから節約始めました」中国 今年上半期だけで100万店が閉店 若者は“高齢者食堂”に*****
きょう(7月15日)発表された中国の4月から6月までのGDP=国内総生産の成長率は減速傾向でした。閉店した店は今年上半期だけで既に100万店を超え、若者が高齢者用の食堂に集まる事態となっています。

家電量販店の宣伝(中国SNSより)
「皆が楽しみにしていた瞬間がついに来た!6月15日から古い家電を新しいものに交換する際に補助金が出るようになりました」

家電の買い替え促進キャンペーンに、さらには仕事終わりの若者を惹きつけるエンタメ施設やレストランなどがある「ナイトスポット」の活性化。いずれも今、中国政府が力を入れている消費刺激策です。

しかし、その効果は限定的なようで、中国の国家統計局がきょう発表した今年4月から6月までのGDP=国内総生産の実質成長率はプラス4.7%。今年1月から3月までの成長率、5.3%から減速しています。

市民からも…
市民 「(Q.中国の景気はどうですか)あまり良くないです」 「会社から給料を下げられました」 「今まで考えたこともなかったのに、景気が良くないから節約を始めました」

客足が遠のき、8割近い店舗が閉店に追い込まれたショッピングモール。
中国メディアによりますと、閉店した店の数は今年上半期だけで既に100万店を超え、去年1年間と同じ店数に迫る勢いだといいます。

長引く景気低迷に市民の節約志向は変わらず、こんな現象まで…
記者 「こちらの高齢者食堂ですが、中には若い人の姿もあります」

地域の高齢者に安く栄養価の高い食事を提供する「高齢者食堂」。かつては高齢者ばかりが利用していましたが、最近、若者の姿が目立つようになりました。

「値段がちょうどいいし、ランチをすぐ済ませられるし、おいしいよ。将来に期待を持てないので節約しています」(後略)【7月15日 TBS NEWS DIG】
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(中国統計数字の信頼性には疑問もありますが)記事にもあるように、4月から6月までのGDPの実質成長率はプラス4.7%と、年間目標を下回り、減速傾向を示しています。

****中国4月〜6月の成長率4.7%に減速 年間目標を下回る 「不動産開発投資」落ち込む****
中国の4月から6月のGDP=国内総生産の伸び率は4.7%のプラスとなり、年間目標の5%前後を下回りました。

中国・国家統計局の15日の発表によりますと、1月から6月の消費の伸びはプラス3.7%と、1月から3月のプラス4.7%から減速しました。
また、減速が続いている不動産開発投資は、1月から6月のマイナス幅が10.1%となり、1月から3月のマイナス9.5%よりも、落ち込みが激しくなっています。

1月から6月の半年間でのGDPの伸び率は5.0%で、目標の5%前後には届いています。
今回は記者会見をせず、インターネットでの発表となりました。 15日から始まる中国共産党の重要会議の日程と重なったためとみられます。【7月15日 テレ朝news】
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大和総研 経済調査部の齋藤尚登部長はこの数字・経済状況について・・・

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Q. GDPの内容をどう評価する?
A. 市場予想の平均を見ると5%、あるいはもう少し上というところが多かったので、予想よりは悪かったという受け止めだと思う。

特に消費に注目していたが、小売業の売上高は、ことし1月から3月が前年同期比で4.7%のプラスで、4月から6月は2.6%のプラスと、2ポイントほど落ちていて、非常に低い数字だった。ここが一番の押し下げ要因になったのではないかと見ている。

Q. 不動産不況についてはどう見ている?
A. ことし5月17日に中国メディアが「前例のない総合的なパッケージ」と呼ぶ対策が出て、住宅市場のてこ入れということだったが、少なくとも6月の数字を見るかぎり、その効果はほぼ感じられない。非常に悪い状態が続いていると見ている。

特に中古の住宅価格は全国平均で7.9%のマイナスで、住宅価格の下落に歯止めがかかっていない。こういう状況だと、住みたいという人も様子見をしてしまう。

「もっと下がるかもしれない」「下がってから買いたい」ということで、今のところ住宅市場が回復する兆しは見いだせていないという状況だ。

Q. 景気の先行きをどう見る?
A. いま、中国は製造業の設備投資を増やせという政策をとっていて、ここは若干の効果が出てきている。
ただ、いま中国経済は供給過剰、需要が足りないということで、さらに生産能力を拡張してしまうと、いずれまた過剰生産能力の問題がクローズアップされることになる。

ことしの成長率目標が5%ということなので、根本的、あるいは構造的な問題を解決するというよりは、対症療法的な政策を導入して何とか5%成長にもっていくと思う。【7月15日 NHK】
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【節約志向 低迷する消費】
消費の低迷については、下記のような記事も。

****中国の大型ネット通販セール「618」が期待外れに、売上高が初めて減少―海外メディア****
中国の大型ネット通販セール「618」が期待外れに終わったことを受け、小売業者の目先の見通しや景気の先行きに暗雲が生じている、とロイター通信が報じた。

今年の618セールは売上高が初めて減少。既に厳しい価格競争を強いられている小売業者への圧力が強まっていることが浮き彫りになった。

618は電子商取引(EC)大手JDドット・コム(京東商城)の創設日である6月18日にちなんで名付けられた。11月の「独身の日」に次ぐ大型セールで、家計の消費を示す重要な指標とみられている。

両イベントはかつて中国の消費主義を象徴し、通販サイトやブランド各社に確実な売り上げ増加をもたらした。EC大手アリババが最後に独身の日の売上高を公表した2021年には期間中の売り上げが845億4000万ドル(現レートで約13兆5000億円)に達した。

ロイター通信によると、今年の618では消費者に支出してもらうのがいかに難しいかが示された。コロナ禍以降、節約傾向にある消費者の支出を促すため小売業者が年間を通じて値引きを実施していることも、大型セール期間中の販売伸び悩みの一因となっている。昨年の独身の日セールの売上高は2%増だった。

こうした値引きはJDドット・コム、アリババ系の「天猫(Tモール)」と「淘宝網(タオバオ)」から、低価格プレーヤーの「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」などに消費者が流れるのを遅らせているものの、個人消費喚起にはつながっていない。最近の四半期決算でアリババの国内EC部門は4%増収にとどまった。

さらに大きな懸念材料は22年から低迷が続く消費者心理だ。バンク・オブ・アメリカの最新の中国消費者調査によると、6月の消費者信頼感は一段と悪化した。

今後6カ月間に支出を増やすと回答した人の割合は45%と、4月の55%から低下した。また、今後6カ月に収入増加を見込んでいる人は31%で4月から10ポイント低下した。(中略)

市場調査会社カンター・ワールドパネルの大中華圏担当マネジングディレクター、ジェーソン・ユー氏は「消費者が618セールで必要な物を購入したため、今後数カ月は小売業者にとって困難な時期になる」と警告。「こうした買いだめ行動は今後の消費ポテンシャルの過度の前倒しだ。7月は非常に厳しくなるだろう」と語った。【6月29日 レコードチャイナ】
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【インフラ投資にも限界】
これまで中国経済成長を支えてきたインフラ投資にも限界が見えています。

****インフラ投資にも課題が浮かび上がる****
不動産不況の長期化で、中国の経済成長を支えてきたインフラ投資にも課題が浮かび上がっています。

中国政府は国有企業や地方政府と連携して、広大な国土に高速鉄道網を張り巡らせ、沿線の開発などで各地の経済成長を促してきました。高速鉄道は去年だけで2700キロ余りの区間が開通し、総延長は去年末の時点で4万5000キロに達しています。

その一方で、採算の合わない投資も目立っています。
中国メディアによりますと、全国の高速鉄道の駅のうち、利用者数の低迷などで閉鎖されるなどした駅が少なくとも26か所にのぼっています。(中略)

地方財政の悪化が深刻になる中、採算度外視のインフラ投資で不動産開発を推し進め、経済の成長を押し上げる手法やモデルは限界を迎えています。

中国政府は2035年までに高速鉄道の総延長を7万キロまでのばすという目標を掲げています。
ただ、主要都市を結ぶ路線はほぼ開通し、今後は比較的規模の小さい都市間の路線となることから、これまで以上に投資の妥当性が問われることになります。【7月15日 NHK】
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【政策方向性を決める「三中全会」開催】
こうした低迷する経済状況のなか、中国共産党の長期的な経済政策などの方針を決める重要会議「三中全会」が15日から始まりました。

****「三中全会」とは*****
「三中全会」は、5年に1度の党大会で選出されたメンバーによる中国共産党の最高指導機関「中央委員会」が、3回目に開く全体会議です。

慣例では、秋に開かれる党大会の直後に1回目の全体会議「一中全会」を開いて総書記など最高指導部を選出し、翌年の春に開く「二中全会」で新指導部のもとでの政府の主要人事を話し合います。

そして「三中全会」は党大会のおよそ1年後に開かれるのが慣例となっていて、新指導部の中長期的な経済政策運営の方針を決定します。

今回の「三中全会」は慣例に従って去年秋に開催されるとみられていましたが、開催の遅れが指摘されていました。
不動産不況の対策などの策定に時間がかかったのではないかという見方が出ています。

過去の「三中全会」では、1978年に改革・開放政策へと大きくかじが切られたほか、1993年には社会主義市場経済体制の確立を打ち出すなど、重大な決定が行われています。

不動産不況や厳しい雇用情勢、それに内需の停滞など、中国経済の課題が山積する中、今回の会議でどういった内容が打ち出されるのか注目されます。【7月15日 NHK】
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「三中全会」開催が遅れたのは“不動産不況の対策などの策定に時間がかかった”というか、“経済政策を巡り政権内での方針が定まらず開催が遅れた”【7月15日 読売】とみられています。

「三中全会」において、習近平指導部が経済状況改善に向けて、政策の方向性をどのように示すのかが注目されています。

****中国「三中全会」始まる 習近平指導部 政策方向性どう示せるか****
中国共産党の長期的な経済政策などの方針を決める重要会議「三中全会」が15日から始まりました。不動産不況などを背景に景気の先行きに不透明感が広がる中、習近平指導部として今後の政策の方向性をどのように示すのかが焦点です。

景気の先行き 不透明感が広がる中で開催
(中略)今回の会議は、「改革の全面的な深化」と、独自の発展モデルを意味する「中国式現代化の推進」を主なテーマとしています。(中略)

中国では、不動産不況の長期化や内需の停滞などで景気の先行きに不透明感が広がっています。

こうした中、不動産不況に伴う金融面でのリスクや地方財政の悪化、不動産に代わる新たな産業の育成などについて、習近平指導部として、政策の方向性をどのように示すのかが焦点です。(中略)

今回の議題と経済の注目点
今回の「三中全会」では、「改革の全面的な深化」と、独自の発展モデルを意味する「中国式現代化の推進」が議題となっています。(中略)

このうち、不動産不況やそれに伴う地方財政の悪化をめぐっては、ことし3月の全人代=全国人民代表大会の「政府活動報告」でリスクとして明示した上で、その解消に全力を挙げる姿勢を示していて、市場の健全化に向けてどこまで踏み込んだ姿勢を示すかが注目されています。

産業面では、これまで中国経済を支えてきた不動産に代わる新たな産業を技術革新などを通じてどのように育成していくかや、国有企業が優遇されているという指摘も出る中、民間企業の重視や外国企業への開放の姿勢をどこまで打ち出すかが焦点となります。

また、地方政府の間で広がる保護主義的な動きが、過剰生産の問題につながっているという指摘も出る中、全国統一市場の構築についてどう言及するかも注目点となっています。

さらに、経済政策の進め方をめぐって党の指導の強化や統制の強化をどこまで打ち出すかも焦点となります。(後略)【7月15日 NHK】
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【期待される「低空経済」】
不動産に代わって経済成長をけん引する新たな産業として期待されているのが「低空経済」だとか。そこまでのパワーがあるのか・・・・

****新たな産業育成へ 期待は「低空経済」****
中国では不動産に代わって経済成長をけん引する新たな産業の育成が急務になっています。こうした中、今注目されているのが、「低空経済」と呼ばれる高度1000メートル以下の空域でドローンやいわゆる「空飛ぶ車」などを活用する、新たな産業です。

中国民用航空局によりますと、市場規模は2025年までに1兆5000億人民元、日本円でおよそ33兆円、2035年にはおよそ77兆円に達する見込みで、ことし3月の全人代=全国人民代表大会の「政府活動報告」の中で、新たな成長エンジンの1つとして盛り込まれました。

このうち、ハイテク産業が集積する広東省の深※セン(※「セン」は、「土」へんに「川」)では、ドローンを使ったフードデリバリーが行われています。市内に10か所以上ある配送拠点で、利用者がスマートフォンを使って注文すると、食べ物や飲み物をドローンが配達してくれる仕組みです。

注文から15分から20分程度で配達が完了し、注文した電話番号の下4桁を入力すると、配達ボックスから商品を受け取ることができます。

深※センではことし5月下旬、国際ドローン展が開かれました。
4000機を超えるドローンが展示され、出展した企業が宅配便の配送や測量、災害時の活用や空飛ぶタクシーなど、「低空経済」に関連する新たなビジネスをアピールしていました。

出展したドローン専門の保険を扱う企業は「産業がまだ十分に成熟していない今の段階で企業の問題やリスクを解決するため、支援したい。これから業界が進歩し、成熟していくのに伴って、私たちも成長することを期待している」と話していました。

「低空経済」 農業分野で市場が急拡大
「低空経済」のうち、市場が急拡大しているのが農業分野です。

中国内陸部の雲南省の玉渓にあるみかん農家の畑では、農薬の散布などにドローンを活用しています。かつては人力で作業していましたが、急しゅんな地形で足場が悪く、雨の日は作業ができないため、効率が悪かったといいます。

しかし、ドローンの活用によって人手もかからず、短時間で効率的に農薬を散布できるようになったということです。

みかん農家の顧天保さんは「以前は十数人で4、5日かかったが、ドローンなら半日で終わる。農薬と時間、労力を節約でき、とてもありがたい」と、話していました。

人手不足解消や農村の活性化にもつながることが期待されていて、ドローンメーカーのエンジニアの李偉さんは「農業用ドローンが農家に受け入れられ、利用されれば、農業にテクノロジーの翼を授けることができる」と、話していました。(中略)

中国のドローンメーカー最大手のDJIによりますと、中国で農業用ドローンを導入している農家は、全体のおよそ3分の1にのぼるということです。

メーカーの企業戦略責任者の張暁楠さんは「政府の政策によって、さまざまな産業が、生産工程でドローンを使うかどうか、どのような問題を解決できるかを検討するようになる。業界発展のための新しい政策がチャンスをもたらすと考えている」と話していました。【7月15日 NHK】
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なお、かつては政権内に李克強首相のような経済通がいましたが、現在の指導部にはそうした経済に明るい者がいないことも問題点とされたいます。
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