孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

クリミア大橋爆発  プーチン大統領の反応は? 間違いないのは「冬が来る」という事実

2022-10-09 23:17:53 | 欧州情勢
(8日、火の手と黒煙が上がるクリミア大橋【10月9日読売】)

【「世界最終核戦争」(アルマゲドン)の危機】
アメリカ・バイデン大統領の“キューバ危機以来”“プーチン大統領による核の脅しは「冗談ではない」”と「世界最終核戦争」(アルマゲドン)への危機感発言があったのが10月6日。

****冷戦以来初の「世界最終核戦争」の危機に 米大統領****
米国のジョー・バイデン大統領は6日、世界は冷戦が終わって以来初めて「世界最終核戦争」の危機にさらされているとして、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領にとってのウクライナ侵攻の「出口」を模索していると述べた。

バイデン氏はニューヨークで開かれた民主党の資金調達イベントで、人類が世界最終戦争の危機にさらされるのは1962年のキューバ危機以来だと述べた。

専門家はプーチン氏が使うとすれば小型戦術核の可能性が最も高いとしているが、バイデン氏は限定された地域への戦術攻撃であろうと、大惨事の引き金になりかねないと警告した。

バイデン氏は「プーチン氏が戦術核兵器や生物・化学兵器を使う可能性に言及するのは、冗談で言っているわけではない。ロシア軍の戦果は期待を大きく下回っていると言えるからだ」との見解を示した。
 
また、プーチン氏による核の脅しは「冗談ではない」として、「われわれはプーチン氏にとっての出口を見極めようとしている。彼はどこに出口を見いだすだろうか?」と語った。 【10月7日 AFP】
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この発言後、例によってホワイトハウスは、具体的な動きがある訳ではないとバイデン発言の“火消し”に動いています。

****核兵器使用の兆候なし=バイデン氏発言を釈明―米報道官****
ジャンピエール米大統領報道官は7日、核兵器使用を示唆したロシアのプーチン大統領の発言に対し、バイデン大統領が「冗談を言っていない」と警告したことに関し、「ロシアが差し迫って核兵器を使用する準備を進めている兆候はない」と記者団に語った。

ジャンピエール氏は「大統領はプーチンの核兵器使用の威嚇への懸念を語った。国連総会でも話し、過去数週間にわたり、われわれが言ってきたことでもある」と説明。「米国の戦略的な核態勢を変更する理由は見当たらない」と強調した。【10月8日 時事】 
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【クリミア大橋爆破 ロシア政府が原因をどう説明して、どのような対抗措置に出るのか 核兵器使用は?】
しかし、現実の方がバイデン発言の“現実味”を強める方向で動いています。

8日にはクリミア大橋で爆発があり橋が破損。
ロシアのクリミア支配の象徴であり、プーチン大統領の肝いりで建設された橋であり、軍事的にも補給路として重要な橋であるだけに、ウクライナの関与も取り沙汰されるなか、プーチン大統領がどう反応するのか?と世界が注目しています。

****クリミア大橋の爆発、焦点はロシアの報復 9月には核兵器を示唆****
ウクライナ南部クリミアとロシアを結ぶ「クリミア大橋」で8日に起きた爆発は、ウクライナ侵攻で行き詰まるロシアの苦境を浮かび上がらせている。ウクライナが戦略拠点を攻撃したとの見方が広がる一方で、ロシアが強硬手段で報復する可能性も取り沙汰されており、緊張の高まりは必至だ。

ゼレンスキー氏「未来は晴れ晴れ」
ロシア当局によると、8日午前6時過ぎにクリミア大橋の車道を走行中のトラックが爆発し、並行して走る貨物列車の燃料タンクに引火して炎上、車道の一部が崩落した。

2014年からクリミアを実効支配するロシアの当局は復旧作業を急ぎ、午後4時から一部車道の走行規制を解除し、その後に列車の運行も再開したという。

ロシア国家テロ対策委員会は、爆発したトラックの運転手がクリミアの対岸に位置するロシアのクラスノダール地方に住む男性だったと説明しており、トラックに仕掛けられた爆弾が爆発したともみられている。

ウクライナ側からは爆発への関与を示唆したメッセージが相次ぐ。ゼレンスキー大統領は8日夜のビデオ演説で「今日のクリミアは曇りだったが、我々の未来は晴れ晴れとしている。クリミアなどで占領者を追い払った未来だ」と発言。

前日の7日がプーチン露大統領の70歳の誕生日だったことを踏まえ、ウクライナのダニロフ国家安全保障国防会議書記は、橋が爆発する様子とバースデーソングの動画をツイッターに投稿して皮肉った。

米紙ワシントン・ポスト紙(電子版)は詳細に触れていないが、ウクライナの情報機関が橋を爆破したという同国の政府関係者の話を報道。ソーシャルメディアでは、遠隔操作された船が橋の下まで移動し、積載していた爆発物が爆発した可能性なども取り上げられている。

ロシア「核兵器の使用も辞さない」
クリミアの実効支配を進めてきたロシアは18年から19年にかけて、クリミア大橋の車道と鉄橋を相次いで完成させた。今年2月のウクライナへの軍事侵攻に前後して、軍部隊を大橋経由で移動させて、クリミアをウクライナ南部攻撃の拠点や補給基地としてきた。

一方で8月に入ると、クリミアのロシア軍施設で爆発が相次いで起きたことから、ウクライナが同地の奪還作戦に着手したとの見方が浮上。今回の爆発がウクライナ側の攻撃に起因するならば、ロシア軍の補給路を遮断するだけではなく、クリミア奪還に向けた動きの一環とも言えそうだ。

重要インフラが損壊しながらも、タス通信によると、ロシア国防省は陸路にとどまらず、海路による輸送を続け、ウクライナ南部での軍事作戦の継続に支障を来していないと説明している。

8日夜になると、プーチン氏がクリミア大橋やクラスノダール地方のエネルギーインフラなどの警備の強化を命じた大統領令を発令。原因究明と再発防止に取り組む姿勢を前面に出している。

クリミアに続いて、9月末にはウクライナ東・南部4州の「併合」も一方的に宣言したロシアは、自国領とみなす地域が攻撃されれば、核兵器の使用も辞さないとの立場を明示する。特にクリミアが攻撃された場合には、メドベージェフ安全保障会議副議長(前大統領)が7月の時点で、ウクライナが「終末の日を迎える」と直接的な表現で警告していた。

クリミア大橋の爆発後には、ロシア下院のスルツキー国際問題委員長が「ウクライナの関与が確認された場合、我々の対応は厳しいものになる」と表明。今後、ロシア政府が爆発の原因をどう説明して、どのような対抗措置に出るのかが焦点になりそうだ。

ウクライナでの苦戦が続く中、ロシアの省庁間の対立がクリミア大橋の爆発に絡んでいるとも指摘されている。ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は8日のツイッターへの投稿で、ロシア軍と対立を深めてきた情報機関の連邦保安庁(FSB)が爆発に関与した疑いが強いとの見解を表明。爆発したトラックがロシアからクリミアに向かっていた点に触れ、「誰が爆発を起こしたのかは明白ではないか?」と書き込んでいる。【10月9日 毎日】
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上記記事最後のロシア情報機関の連邦保安庁(FSB)に関しては、これまでも“偽装工作”が噂されてはいます。
例えば、1999年、プーチン氏をカリスマ的権力者に押し上げることになったチェチェン侵攻のきっかけとなった「ロシア高層アパート連続爆破事件」もFSBの自作自演だとも言われています。真相はわかりませんが。

ただ、今回はどうでしょうか? 前述のように極めて重要なクリミア大橋爆破となると、ほとんどクーデター級の大ごとですから、プーチン大統領の指示でも無い限りは・・・。ロシアの核兵器使用を正当化するためのプーチン大統領の自作自演・・・というのは今のところは“小説・映画の中の話”です。

単純でわかりやすいのはウクライナの関与を疑う考え。ただ、ロシアの報復を考えると“単純でわかりやすい”話でもありません。ゼレンスキー大統領も「我々の未来は晴れ晴れとしている」と浮かれている場合ではないかも。

いすれにしても、ウクライナが東部ハリコフ州で電撃的な反転攻勢をしかけ、ドネツク州では要衝リマンを奪還する、更に南部では重要拠点のヘルソン周辺でロシア軍の前線を突破するなど、ロシア軍の苦境が続く中で、もし事件がウクライナ側によるものとロシアが判断した場合、プーチン大統領がどう反応するのか?

事件がどのように発展するのか・・・世界の誰もわかりません。(自作自演でない限り)プーチン大統領も対応を決めかねる問題でしょう。「世界最終核戦争」の危険をおかすのか・・・。

【冬の到来  軍事作戦は困難に ウクライナ側は南部の奪還作戦にとって今後数週間が極めて重要】
一方で、誰もはっきりとわかる問題は「もうじき冬がやってくる」という事実。
ウクライナにとっても、ロシアにとっても、また、軍事的にも、市民生活の上でも、更に欧州のウクライナ支援という国際関係においても、「冬が来る」という事実は重要な影響をもたらします。

まず軍事面については、ウクライナ・ロシア双方にとって軍事作戦が困難になります。それだけに、動けなくなる前にできるだけ・・・という話にもなります。

****ウクライナ、冬前の南部奪還が焦点 米当局者が注視****
(2022年10月5日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版)

米政府当局や議員らは、ウクライナは極めて重要な戦いに直面していると警告を発している。ロシアに南部の実効支配を固める機会を与えないよう、冬場に戦闘条件が厳しくなる前に領土を奪還する必要があるという。

ウクライナ軍はここ最近、東部で領土を相次ぎ奪還し、南部では重要拠点のヘルソン周辺でロシア軍の前線を突破するなど、2つの戦線で迅速な前進を遂げている。ロシアのプーチン大統領は、両地域を自国の一部であると主張し、併合に乗り出している。

米国防総省は、ウクライナは東部での勢いを生かし、黒海への玄関口である南部の戦略的地域を占領するロシア軍を撃退すべきだと指摘している。

米上院外交委員会のクリス・マーフィー議員(民主)は「戦闘の季節は短くなりつつある。ウクライナ側は優位に立っており、引き続き優勢に進める必要がある」との見方を示す。

「ウクライナにとって長期的に本当の痛手となるのは、ロシアが南東部マリウポリから南部オデッサまでの給水を断つことだ。ウクライナの生命線はオデッサへのアクセスであるため、南部では防衛態勢だけでなく、攻撃態勢をとることが重要だ」という。

ウクライナは、東部ハリコフ州で電撃的な反転攻勢をしかけ、ドネツク州では要衝リマンを奇襲作戦で奪還するなどの成功を収めている。だが、西側同盟国はヘルソン州の解放が重要な試金石になるとみている。

奪還に重要な数週間
ある米軍当局者は「ヘルソンを支配できれば、ロシアの本当の望みと思われるオデッサの掌握は確実に阻止できる」と語った。ウクライナ側も、南部の奪還作戦にとって今後数週間が極めて重要になるとの立場を示している。(中略)

軍当局やアナリストらは、ウクライナは11月中旬以降にもヘルソンを解放できるとみているが、あくまでも事がうまく運べばの話だ。(中略)

冬に地面の凍結なければぬかるみに
西側のある外交官は「ヘルソンに関しては、近いうちに何らかの手を打つ必要がある」と話す。「国民や軍の士気向上につながるだけでなく、提供された訓練や設備が最大限に活用されている証拠にもなる」

ウクライナ軍は冬を迎える前に南部を奪還することが急務だと当局者は指摘する。この地域の地面は過去3年間凍結しておらず、まもなくひどくぬかるんだ状態になる恐れがあるという。

このような環境では両軍とも作戦を展開することが難しくなり、幹線道路に無防備な状態でとどまることを余儀なくされるだろう。また、ぬかるみは領土を守る側に有利に働くと軍当局やアナリストはみている。防衛側は土地を横断する必要がないためだという。

ロシア軍の士気は低いが、関係者によると、同国は南部の拠点を強化しており、ウクライナ側の攻撃は一層困難になっているという。(中略)

インフラや兵たんでウクライナ側に強み
だが、ある米国防当局者によると、ロシア軍は冬を前に、物資を運ぶために必要なインフラや兵たんの確保に苦戦しており、ウクライナはここで強みを生かす可能性があるとみている。(中略)

ロシアが2月に侵攻を開始して以来、米国はウクライナへの安全保障支援として168億ドル(約2兆4000億円)超の拠出を約束している。バイデン米大統領は先週、70億ドルの軍事支援と武器供与を含めたウクライナ向けの追加緊急支援案に署名して法制化させた。

バイデン政権は今週、ウクライナ向けに6億2500万ドル相当の武器を追加供与することも明らかにした。これには、北部と南部におけるウクライナ軍の反撃で威力を発揮した高機動ロケット砲システム「ハイマース」4基が含まれ、迅速に供与するという。

西側同盟国は、ウクライナ軍が都市部に居座るロシア軍を相手に、受け取った武器を複雑かつ多面的な攻撃に配備できるという証拠を求めて、ヘルソンでの攻撃を注意深く見守っている。(中略)

停戦前の領土奪還が重要に
(中略)米当局や議員らは、ウクライナが今後ロシアとの停戦交渉を有利に進めるためには、南部のさらなる奪還が不可欠だと主張している。

米下院外交委員会のブラッド・シャーマン議員(民主、カリフォルニア州)は「ウクライナには間違いなく、クリミア半島の東側に位置するアゾフ海や黒海の港が必要になる。ヘルソンは明らかに大都市であり、取り戻したい」と主張する。

「最終的に決着がつくのは、今から6~8カ月後だろう。プーチン氏の支配地域は2月時点よりいくぶん広く、そのまま停戦にこぎ着けることになる。そうなる前にウクライナは領土をさらに取り戻す必要があると思う」【10月6日 日経】
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【冬の寒さ ロシア軍は戦闘以前の問題も】
「冬の寒さ」という点で言えば、ロシア軍の装備には不安も。

****ロシア動員兵は迷彩服まで自腹 支給の装備品は80年代もの…各地で資金難****
ロシアで部分的動員令による混乱が続いています。非常に古い迷彩服が支給されているとみられ、動員兵らは自腹で買わざるを得ない事態となっています。  

モスクワの情報ニュースチャンネルは、軍服から寝袋まで約25万円をかけて自前で用意した家族の話を報じています。モスクワ市内の軍事用品を扱う店では冬用の迷彩服や手袋などがよく買われ、保温性の下着もほぼ売り切れていて、空のハンガーが目立ちます。  

7日に出兵するという男性は、すでに戦地に派遣された友人から支給の装備が80年代のものだと知らされ、複数の店で防寒具などを探し回っていました。 
 
独立系メディアによりますと、急きょ動員された兵士のなかには体調不良者や新型コロナウイルスの感染者も多いとみられ、長距離移動の列車やバスで感染症が蔓延(まんえん)している可能性があります。  

また、動員によって地方は資金難に陥っていて、クルガン州やカルーガ市は年末年始の花火やコンサートなどのイベントの中止を発表しました。  

予算は動員兵のためのより良い装備品の購入に充てるということです。 また、地方は動員への反発を抑えるのに必死で、動員兵の家族に羊や魚などを配る自治体も出てきています。【10月7日 テレ朝news】
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動員兵らは自腹で冬用の迷彩服や手袋などを買わざるを得ない事態・・・というのが広くあてはまる事実なら、ロシア軍は戦闘以前の問題に直面しているようにも。

なお、ウクライナ国防相の話として、ロシアが第三国を通じて防弾チョッキ20万着と冬服50万着を調達しようとしたが、トルコに注文を断られた・・・という話も。

【インフラが破壊されたウクライナの市民生活を待ち受ける“寒くて暗い冬”】
ウクライナ側の市民生活も深刻な事態を迎えます。

****ウクライナに迫る厳しい冬、ライフラインの被害甚大****
ウクライナ東部ハリコフに1人で暮らすオルガ・コブザールさん(70)は、ロシア軍の砲撃を受けて廃墟と化した団地の1室で、間もなく訪れる厳しい冬を乗り越えようとしている。自宅は電気も水道もセントラルヒーティングも使えず、台所のガスコンロで暖をとる。

コブザールさんが住むのはロシア国境から30キロほどのサルティウカ地区。冬の気温は氷点下20度まで下がり、当局はここ数十年で最も厳しい冬になると警告している。

この団地に残っているのはコブザールさんたった1人。近隣の住戸は砲撃を受け、炎に包まれた。彼女は自宅の損傷こそ免れたが、基本的なライフラインは失われた。(中略)

ウクライナは7カ月にわたる戦火がエネルギー供給網と住宅地域に大きな被害をもたらした。当局は冬の訪れを前に、ロシアが重要なインフラを狙い撃ちするのではないかと危惧。市民に薪から発電機まであらゆるものを備蓄するよう呼びかけている。

ハリコフのテレホフ市長は「なす術がない。ミサイルがどこに落ちるか、何が破壊されるか次第だ。侵略者はわれわれに寒くて暗い冬を過ごさせようとしている」と話した。

<広がる懸念>
都市部の住宅地は、天然ガスを燃料とする発電所によるセントラルヒーティング設備を備えている。しかし窓や壁が破壊された団地ではパイプが凍結し、その地域のセントラルヒーティング設備が破損する恐れがある。(中略)

セントラルヒーティングに障害が発生した場合には電力が頼りになるため、多くの市民が電気式の暖房器具を購入した。しかし専門家によると、市民が一斉に電気の暖房器具を使用すれば、電力供給がひっ迫する可能性がある。(中略)

アナリストによると、西側諸国との対立を激化させているロシアがウクライナ経由の天然ガス輸送を停止した場合、ウクライナは天然ガスパイプラインの圧力を維持し、全地域にガスを供給するのが困難になる恐れがある。(後略)【10月9日 ロイター】
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ウクライナほどではないにせよ、欧州各国も対ロシア制裁及びその影響でガス・電力確保に大きな不安を抱えた「冬」となります。市民生活が厳しくなった場合、どこまでウクライナ支援で結束できるか・・・という問題もあります。

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