孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ナイジェリア  「ボコ・ハラム」による連日の大規模テロ 少女を使った自爆テロも多発

2014-11-29 22:34:31 | アフリカ

(「ボコ・ハラム」戦闘員 “flickr”より By Omo Oodua https://www.flickr.com/photos/126879764@N05/15814571905/in/photolist-q8YbyA-qbPavy-q6tPfR-qemACT-pWwzBD-pQby3H-pUJh2s-q8v1Dj-pUjDtd-peFZVH-p9XVEN-pcp7TM-q5GN7K-pUL9mc-pP39hR-q7UGz7-q7H4AP-pawaK6-pQHyhQ-pWxpU1-p9UFAS-pNb57r-pW1dZX)

従来のゲリラ活動から、町などの領域を支配する形へと戦術を変化
西アフリカの地域大国ナイジェリアの人口は2050年にはアメリカを抜いて世界第3位になると予測されています。また、同国は原油産出国で経済成長も著しく、国内総生産(GDP)はすでに南アフリカを上回りアフリカ最大になったと発表されています。

しかし、何回も取り上げてきたように、イスラム過激派「ボコ・ハラム」の拉致・殺戮などの暴力が一向に止みません。

もともとナイジェリアは、北部のイスラム教徒と南部のキリスト教徒との間で宗教的には不安定な状態にあり、衝突もたびたびありましたが、イスラム過激派「ボコ・ハラム」の拡大の背景には、莫大な石油収入を抱えながらもその恩恵を一般国民に還元できず、経済成長の枠外に取り残された広範な貧困が存在することがあると見られています。

「ボコ・ハラム」は、欧米の教育や価値観を否定し、ナイジェリア全土へのシャリア(イスラム法)導入を要求するイスラム過激派で、その組織名は現地の言葉で「西洋の教育は罪」を意味し、西洋教育の象徴として学校への襲撃を繰り返しています。

今年4月に北東部ボルノ州チボクの学校宿泊施設が襲撃されて200名以上の女子生徒が連れ去られ、事件後、「彼女たちは奴隷だ。奴隷を売る市場で彼女らを売る」とのメッセージが公表された事件は全世界に衝撃を与えました。

9月には、シリア・イラクで勢力を拡大し、「カリフ国家」樹立を宣言したイスラム過激派「イスラム国」の影響を受けて、「イスラム国」と同様に、町などの領域を支配する形へと戦術を転換させたことを発表しています。

****ナイジェリア・イスラム過激派組織「ボコ・ハラム」が戦術転換****
西アフリカ・ナイジェリアのイスラム過激派組織ボコ・ハラムが、政府機関などへのテロを中心とした従来のゲリラ活動から、町などの領域を支配する形へと戦術を変化させている。

イラク・シリアで広い地域を掌握し一方的に「カリフ国家」樹立を宣言したスンニ派過激組織「イスラム国」の影響を受けたものとみられ、過激派組織にこうした活動形態が広まる恐れもある。

「この町は(全イスラム教徒を治める)カリフ国の一部となった」。ナイジェリアからの報道によると、ボコ・ハラム指導者のシェカウ容疑者は8月下旬、ナイジェリア北東部ボルノ州の町グウォザを制圧した際の声明でこう語った。

ボコ・ハラムはこれまで、カメルーン国境沿いにある北東部の山岳や森林地帯を拠点とし、政府機関や教育機関への襲撃や近隣の町などでの金品強奪、自爆テロといった活動を展開してきた。

今年4月には、同州の学校から女子学生ら200人以上を誘拐しているが、その際も襲撃後は現場から立ち去っている。

しかし、7月以降は襲撃地にそのままとどまるケースが目立つようになり、現在までに10カ所以上の町や村を支配下に置いた。

こうした変化は、イスラム国が6月にイラク北部モスルを制圧して「カリフ国家」樹立を宣言し、中東内外のジハード(聖戦)主義者を吸収して勢力を急拡大させた時期に重なる。シェカウ容疑者が、イスラム国の“成功例”を模倣した可能性は高い。

ただ、同容疑者が「カリフ国」に言及した声明が、イスラム国への従属を意味するのか、自身をカリフとした別の国家を意味するのかは、はっきりしない。

シェカウ容疑者はこれまで、北アフリカやソマリアの国際テロ組織アルカーイダ系勢力と協力関係を築きつつも、アルカーイダの傘下には入らずに活動してきただけに、専門家の間では「対等の立場でイスラム国と張り合うのが狙いだ」との見方が強い。(後略)【9月15日 産経】
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「イスラム国」と「ボコ・ハラム」の差異等については、以下のようにも指摘されています。

****イスラム国」との共通性と違い****
中東やアフリカの大部分の国境線は、19世紀のヨーロッパ列強による植民地争奪の遺産です。ボコ・ハラムとISは既存の国境線を否定し、イスラムのスンニ派を中心とするカリフ制国家の樹立を宣言した点で共通します。

さらに、スンニ派以外の宗派は基本的に認められず、従わない場合には殺害さえされることや支配地域の女性を戦利品として扱う非人道性、さらにその活動をインターネットなどで外部に宣伝していることも、ほぼ同じです。

その一方で、両者には違いもあります。なかでも最大の違いは、アル・カイダとの関係です。

アブバクル・バグダディ容疑者率いるISは、もともとアル・カイダの一派でしたが、イスラム国家の樹立より「グローバル・ジハード(聖戦)」を優先する指導者アイマン・ザワヒリとの路線の違いから、これと決別した経緯があります。

これに対してボコ・ハラムは、2002年の設立段階では国際テロ組織とほとんど関係ありませんでしたが、ナイジェリア政府との衝突を繰り返すなか、2012年頃からアルジェリアを根拠地とする「イスラム・マグレブのアル・カイダ」などのアル・カイダ系組織から軍事援助を受け始めました。

ボコ・ハラムの資金源は誘拐の身代金、人身売買を含む密輸、ナイジェリアの一部の政治家からの「献金」がほとんどで、イラクやシリアの油田地帯を確保しているISほど、財政的に豊かでないとみられます。
そのため、少なくとも現段階において、アル・カイダ本流との友好関係は、ボコ・ハラムにとって生命線です。

シュカウ容疑者はISへの支持を表明しましたが、ISに従うとは述べていません。むしろ、ボコ・ハラムはISとアル・カイダ本流を天秤にかけているといえるでしょう。【11月15日 六辻彰二氏 THe PAGE】
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幻の停戦合意
10月には、ナイジェリア政府は17日、「ボコ・ハラム」との停戦に合意したと発表しました。
この停戦合意によって、拉致された女子生徒が解放されるのでは・・・との期待もありましたが、当初から情報は錯綜し、結局「ボコ・ハラム」側が停戦合意を否定する形となっています。

****ボコ・ハラム、「女子生徒は全員結婚した」 政府との停戦も否定****
イスラム過激派組織「ボコ・ハラム」は新たなビデオメッセージを公開し、今年4月14日にナイジェリア北東部ボルノ州チボク地区で拉致し、現在も解放していない女子生徒219人全員をイスラム教に改宗させた上で結婚させたと明らかにした。女子生徒たちは現在「嫁ぎ先の家にいる」という。

動画の中でボコ・ハラムの指導者アブバカル・シェカウ容疑者は、ナイジェリア政府がボコ・ハラムとの間で停戦と女子生徒を解放することで合意したと先月17日に発表したことについて、そのような事実はないと完全に否定した。

先月17日以降もボコ・ハラムの攻撃は続いているため、ナイジェリア政府の発表が事実なのか疑問視する見方が出ていたが、その疑念が確認される形になった。(後略)【11月2日 AFP】
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10月段階の政府による停戦合意発表は一体何だったのか・・・、次期大統領選挙を控えたジョナサン大統領側が成果を焦ったのでしょうか。
政府発表後、「ボコ・ハラム」も直ちには否定していませんので(戦闘は続いていましたが)、何らかの交渉はあったのでしょうが・・・・。

ナイジェリア政府には、6月に首都アブジャと最大都市ラゴスで相次いだ爆破テロ事件を、当初当局が「調理用ガスボンベの爆発」と発表するという虚偽発表・隠蔽の前科もあります。

“ナイジェリア軍の参謀長は10月9日の記者会見で、政府の保身や体面が軍の活動を妨げていると非難したうえで、「ボコ・ハラムはISと同じくらい危険」と述べ、米国などによる軍事行動がイラクとシリアに集中していることにも不満を表明しました。”【11月15日 六辻彰二氏 THe PAGE】

11月に入っても、「ボコ・ハラム」の支配地域拡大の動きが続いています。
11月13日、4月に女子生徒拉致事件が起きたチボクを含む、少なくとも3つの町を「ボコ・ハラム」が武力制圧したことが報じられましたが、ナイジェリア当局は16日、チボクを奪還したと発表しています。

「ボコ・ハラム」支配下の町村では、泥棒の腕を切り落とすなど、イスラム法(シャリーア)が厳格に適用されていると報じられています。

連日の大規模テロ
政府・軍は非常事態宣言を延長して対応にあたっています。
ただ、居場所が特的できないテロ攻撃ではなく、支配地域を明確にした形なのに、どうして「ボコ・ハラム」を制圧できのか?・・・という素朴な疑問は感じます。

資金的に貧しい国ならともかく、ナイジェリア軍は、莫大な石油収入によって装備されているのではないのでしょうか?
中国からステルス型巡視船2隻がナイジェリア海軍に提供されるという話もあるようですが、海軍増強よりは「ボコ・ハラム」対策が先だろう・・・という感があります。

****北東部の非常事態宣言延長へ=過激派のテロ収まらず―ナイジェリア****
ナイジェリアのアドケ法相は17日、イスラム過激派「ボコ・ハラム」によるテロ多発を受けて北東部3州に出した非常事態宣言について、さらに半年間延長する方針を明らかにした。議会に支持を要請する。AFP通信などが報じた。

政府は昨年5月、ボルノ州など北東部3州に非常事態宣言を出し、軍を増派するなど治安強化を図った。しかし、ボルノ州では今年4月、ボコ・ハラムが女生徒200人超を拉致する事件が発生。最近も爆弾テロが相次ぎ、多数の死者が出ている。【11月18日 時事】
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しかし、ここ数日だけでも、大規模テロ事件が連続しています。

****ボコ・ハラムが鮮魚商48人を殺害、ナイジェリア****
チャドとの国境に近いナイジェリア北東部ボルノ州で、イスラム過激派組織「ボコ・ハラム」の戦闘員らが48人の鮮魚商を殺害した。水産物協会が23日、AFPに明らかにした。(後略)【11月23日 AFP】
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****市場で爆発、45人死亡=過激派の自爆テロか―ナイジェリア****
ナイジェリア北東部ボルノ州の州都マイドゥグリにある市場で25日、2件の爆発が起き、保健当局者らによると45人以上が死亡した。自爆テロとみられる。AFP通信が報じた。(後略)【11月26日 時事】
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****ナイジェリアのモスク襲撃、死者120人に ボコ・ハラムか****
ナイジェリア・カノ(CNN) アフリカ西部、ナイジェリア北部の最大都市カノにあるモスク(イスラム教礼拝所)で28日発生した自爆テロ2件と銃乱射事件で救急当局者は同日、死者は少なくとも120人、負傷者は270人に増えたと報告した。

一部の負傷者は重体に陥っており、犠牲者がさらに増える可能性がある。また、金曜礼拝のため多くの信者が集まっていたモスク外で3個目の爆弾が爆発したことも判明した。

犯行声明は出ていないが、ナイジェリア北部などを拠点にするイスラム過激派「ボコ・ハラム」の仕業との見方が強まっている。

ナイジェリアで多大な影響力を持つ指導者の1人であるカノ首長のサヌシ師は2週間前、今回の事件が起きたモスクでボコ・ハラムに対する自衛戦を宣言、住民らに武器調達などを促していた。28日の事件はこの呼び掛けに対するボコ・ハラムの報復の可能性がある。サヌシ師はモスク内にいなかったという。

ナイジェリア国家警察の報道担当者などによると、2人の自爆犯が短い間隔で爆弾を相次いでさく裂させ、別の少なくとも3人の男が車で乗り込んできて、逃げようとする信者に銃を乱射した。この犯行に怒った群衆が3人を追い掛けて捕まえ、殺害したという。

カノ市は、イスラム法に基づく国家樹立を目指すボコ・ハラムが武装闘争を活発化させる地域の1つ。2012年1月20日には集まっていた治安要員を爆弾や銃で攻撃、少なくとも185人を殺害し、多数を負傷させていた。【11月29日 CNN】
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少女による自爆テロ
まさに、“連日”の大規模テロです。
しかも、11月25日に起きたマイドゥグリでの自爆テロには若い女性が使われており、拉致された女性を戦闘員・自爆テロ実行犯に使っているのでは・・・とも指摘されています。

****<ナイジェリア>ボコ・ハラムか 相次ぐ女の自爆テロ****  
 ◇25日にマイドゥグリで10代女2人が実行犯
西アフリカ・ナイジェリアで女の自爆テロが相次いでいる。10代の少女が実行犯になるケースも多く、北部でテロを続けるイスラム過激派ボコ・ハラムの犯行とみられている。

警戒されにくい女性を「武器」にテロを活発化させ、社会に衝撃を与えるのが狙いのようだ。政府側に治安改善の決め手がない中、女の自爆テロの多発は国内の混乱に追い打ちをかけそうだ。

ナイジェリア北東部の中心都市マイドゥグリの市場で25日、2人の女が実行犯とみられる自爆テロが発生した。AP通信によると、少なくとも30人が死亡。2人は保守的な女性イスラム教徒に特有の頭から体全体を覆う服装の10代の少女だった。

ロイター通信などによると1人目の女が自爆した後、けが人救出などのために現場に人が集まったところ、2人目が自爆し被害が拡大したらしい。

ボコ・ハラムは2009年に政府機関やキリスト教会、教育機関などを標的にテロ攻撃を開始。当初は銃や爆弾を多用してきたが、今年6月に北部ゴンベ州の政府軍兵舎前で爆発物を身に着けた女を自爆させた。

7月下旬には北部の中心都市カノで4回の自爆テロが相次いだが、実行犯はいずれも10代の少女だったと報じられた。

国際テロ組織に詳しいシンクタンク「安全保障研究所」(南アフリカ)のマーティン・エウィ上級研究員は毎日新聞の取材に対し、ボコ・ハラムが少女を意図的に自爆テロの実行犯に選んでいるとみる。「テロ犯として少女が最も疑われにくく、注意をひかない。政治家などの標的に近づくのも簡単だ」と指摘する。

ボコ・ハラムは今年4月、北東部チボクの女子高から少女約270人を拉致した。エウィ氏は「少女による自爆テロは、拉致した少女を自爆テロに使うかもしれないというボコ・ハラムのメッセージでもある。ボコ・ハラムは少女を使ってナイジェリア社会、市民に大きな衝撃を与えようとしている」と分析している。【11月26日 毎日】
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自爆犯が拉致されて強制的に攻撃に参加させられた女性たちなのか、それとも志願した女性なのか・・・は分かりません。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)が、「ボコ・ハラム」の拘束を脱出した元人質の女性と少女30人に2013年4月~今年4月に聞き取りを行い、身体的・心理的虐待に関する証言をまとめています。

“この女性は、別の襲撃の際にボコ・ハラムが捉えた自警団メンバーの一般市民5人をナイフで処刑するよう命じられたとも語った。恐ろしくて震えていると、代わりに宿営地のリーダーの妻が殺したという。”

“一部の女性や少女は「美しいとの理由で特別な扱い」を受けており、チボクの学校から拉致された女子生徒の一部は、そうした選ばれた女性たちの身の回りの世話をさせられていたという。”

“聞き取りに応じた女性たちからは、レイプや身体的暴力の証言もあがった。首の回りに絞首刑に使う縄をはめられ、イスラム教に改宗しなければ殺すと脅された女性もいた。”

“15歳の少女はボコ・ハラムの戦闘員との「結婚」を強いられ、自分はまだ結婚には早すぎると拒もうとしたところ、ボコ・ハラムの司令官の1人から「自分の娘は5歳だが去年結婚した」と言われ一蹴されたと証言した。”【10月27日 AFP】

なんともやりきれない話です。
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