孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イスラエル  シナゴーグ襲撃、犯人自宅破壊命令・・・・緊張は危機的状況に 

2014-11-20 21:57:19 | パレスチナ

(エルサレム 11月18日 シナゴーグ襲撃事件の犠牲者を乗せた車を取り囲み、その死を悼むユダヤ教超正統派の人々 “flickr”より By scrolleditorial https://www.flickr.com/photos/115313787@N08/15639118608/in/photolist-pPYz71-q5uyrh-pQ3oVy-q7CGWV-q7Mh9N-pQfpr7-pQbGcS-paTWgt-q7t42R-pQimuS-paRcoQ-paTVZr-pQfpvA-pQgG4n-pQfptG-q5xw9W-q7LGMs-paT8cZ-q5xwty-q7CGVn-q7LGQy-pQfpyG-paTWuz-pPNxQT-pamh2A-pao9B1-q7zJkn-paU4Nn-pamgXN-q7UHwg-pPxTsD-pPAxdM-q5SQhm-pb8Mz2-pb8N1c-q5Mng7-paDS5v-q7GrVV-paakYf-q5SEKW-pQ25Fi-payKEB-paw5iA-q6CWJr-q7g9sK-pa2iH9-pPtkQS-q6NMSn-pamPtx-pPJFHp)

高まり続ける緊張 繰り返される暴力
イスラエルにおけるパレスチナ住民の新たな“インティファーダ”(抵抗運動)をも懸念させる緊張の高まりについては、11月7日ブログ「イスラエル 東エルサレムでパレスチナ住民と治安部隊の衝突 高まる緊張」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20141107)でも取り上げました。

残念ながら、その後も事態は悪化しています。
10月以降の主な事件・衝突をまとめると、以下のようになります。

*****10月以降の主な事件*****
 10月16日 パレスチナ自治区ラマラ近郊で、投石しようとした13歳の少年をイスラエル軍が射殺
    22日 エルサレムでパレスチナ人の男(20)が車で行列に突っ込み乳児ら2人が死亡。男は射殺
    24日 軍がデモ隊に発砲し、パレスチナ人の少年(14)が死亡
    29日 パレスチナ人の男(32)がユダヤ教活動家を銃撃し重傷を負わせる。男は射殺。
        翌日、イスラエル当局は旧市街のイスラム教聖地「ハラム・シャリーフ」(ユダヤ教では「神殿の丘」)を完全封鎖

 11月5日 エルサレムでパレスチナ人の男(38)が車で歩行者に突っ込み2人が死亡。男は射殺
       イスラム教の聖地アルアクサ・モスクにイスラエル治安部隊が侵入
    7日 パトカーの窓を刃物でたたいたパレスチナ人の男(22)が射殺される
   10日 テルアビブ中心部でパレスチナ人の男(18)がイスラエル兵士を刺殺。男は逮捕
       自治区ヘブロン近郊でパレスチナ人の男(30)が入植者の女性を刺殺。男は射殺
   11日 自治区で軍と衝突したパレスチナ人の男性(22)が射殺される
【11月18日毎日 11月20日朝日 より】
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更に、16日にはエルサレムのバス車内でパレスチナ人運転手が首をつった状態で発見され、自殺とする治安当局に対し、パレスチナ住民はユダヤ人による犯行として反発を強めています。

***エルサレムのバスに運転手の遺体、「自殺」説にパレスチナ人反発****
エルサレム(Jerusalem)で16日、パレスチナ人バス運転手が担当車両の中で首をつった状態で見つかった。イスラエル当局は自殺と断定したが、これに反発した住民らが翌17日に警察と衝突した。死亡した男性の同僚は、他殺に見えたと話している。

死亡したのはイスラエルが実効支配している東エルサレムのオリーブ山にあるアットゥールに住むユザフ・ハサン・アルラムニさん(32)。

警察の発表によると、イスラエル領西エルサレムの産業地区ハーホツビムのバス車庫で16日、上司が遺体を発見した。

警察は、当局が遺族の同意を得て翌17日に検視を行った結果、犯罪があったことを示す証拠は見つからなかったと発表。これに対し家族は、2児の父であるアルラムニさんが自殺したとは考えられないとしている。

アルラムニさんの兄弟はAFPの取材に対し「子どももいて幸せに暮らしていた。自殺するはずがない」と話し、遺体にはあざがあり、亡くなる前に拷問を受けた可能性があるとして、家族は自殺という検視結果を受け入れられないと述べた。

アルラムニさんの同僚のバス運転士もAFPに対し、「遺体に暴力を受けた痕があったのを見た」と当局の発表とは食い違う証言をした。「バス後部の階段の上で首をつった状態だった。自分で首をつるのは不可能な場所だった」という。

17日に執り行われた葬儀には数千人が参列。一部には「復讐」を叫ぶ人たちもいた。ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスは「この人種差別に基づく残忍な犯罪に対し怒りを表に出す」ようパレスチナ人に呼び掛けた。【11月18日 AFP】
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18日には、エルサレムのシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)がパレスチナ人に襲われ、ユダヤ人4人が死亡しました。

****パレスチナ人、礼拝所襲撃 ユダヤ人4人死亡 エルサレム****
エルサレム西部のシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)で18日午前7時ごろ、銃やおのを持ったパレスチナ人の男2人が礼拝に来ていた人々を襲撃し、ユダヤ人4人が死亡、7人が負傷した。

イスラエルのネタニヤフ首相は報復する考えを示した。イスラエルとパレスチナの間の対立がさらに深まるおそれがある。

警察によると、男2人はイスラエルの占領下にある東エルサレム在住。2人は襲撃後、駆けつけた警察との銃撃戦で射殺された。(後略)【11月19日 朝日】
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ネタニヤフ首相:「ハマスとアッバス氏が扇動した結果」 犯人自宅破壊命令
エルサレムでユダヤ教施設がパレスチナ人に襲われたのは2008年以来で、イスラエルのネタニヤフ首相は18日夜、記者会見し「我々は今、テロ攻撃の波にさらされている」「ハマスとアッバス氏が扇動した結果」と述べ、警戒態勢を強化する方針を明らかにしました。

エルサレム市長は、許可を得て銃などの武器を保有する市民に対し、護身のため日常的に携行するよう呼びかけています。【11月19日 毎日】

パレスチナ側の対応はハマスと自治政府・アッバス議長では差があります。
ハマスの政治部門のアブマルズク幹部は18日、フェイスブックで「新たなインティファーダ(民衆蜂起)の始まりだ」と記し、さらなる攻撃を呼びかけています。

一方、パレスチナ自治政府のアッバス議長は18日午後、「今回の事件と共に(イスラエルによる)聖地やモスク(イスラム礼拝所)への攻撃も非難する」と述べ、「市民に対するいかなる殺害も非難する」と攻撃を非難すると同時に、イスラエルによるイスラム教聖地などへの挑発行為の停止を求めています。

エルサレム旧市街のイスラム教聖地「ハラム・シャリーフ」(ユダヤ教では「神殿の丘」)では最近、ユダヤ教右派が本来禁じられている礼拝行為などを強行し、パレスチナ人らが強く反発しています。

こうしたなかで、イスラエル・ネタニヤフ首相は18日、シナゴーグ襲撃事件の犯人及びこれまでの襲撃事件の犯人の自宅を破壊するように指示し、強硬姿勢を鮮明にしています。

****礼拝所襲撃 犯人宅の破壊指示 イスラエル、強硬姿勢鮮明に****
パレスチナ人2人がエルサレムのシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)で礼拝者らを殺傷した事件で、イスラエルのネタニヤフ首相は18日夜、東エルサレムにある襲撃犯宅を破壊するよう指示した。

同国当局は19日、別の事件でイスラエル人2人を死亡させたパレスチナ人の自宅も破壊。パレスチナ側は反発しており、暴力の連鎖への懸念が強まっている。

イスラエルは長年、パレスチナ武装勢力などの破壊行為に対抗するため、メンバーらの自宅を破壊する措置を取ってきたが、ロイター通信によると2005年以降は「抑止効果が薄い」として停止していた。

しかし、このところ、東エルサレムのイスラム教聖地ハラム・シャリーフ(イスラエル側呼称「神殿の丘」)の扱いをめぐりパレスチナ住民と治安部隊の衝突やイスラエル市民に対する襲撃が相次いでいることから、強硬姿勢を鮮明にしている。

一方でネタニヤフ氏は、市民に「法の尊重」を呼び掛け、市民がパレスチナへの報復などに出ることを戒めた。また同国は18日、シナゴーグ襲撃で負傷した警官1人が死亡し犠牲者が計5人になったと発表した。【11月20日 産経】
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“イスラエル軍はその数時間後、10月22日に起きたひき逃げ事件の容疑者の家族が住む東エルサレムの住宅を破壊。家族は破壊前に自宅を離れ、親類宅に身を寄せていた。”【11月20日 AFP】

自宅破壊措置は、これまでの経験で「抑止効果が薄い」だけでなく、暴力の連鎖を助長することが懸念されます。

ユダヤ教右派勢力による挑発的行為を問題視する見方も
一連の事件・緊張の高まりの背景には、ユダヤ教右派勢力の活動が活発化していることも指摘されています。

****エルサレム、高まる緊張 礼拝所襲撃 宗教対立も加わる****
・・・・6月から続くイスラエルとパレスチナの暴力の連鎖は、7~8月のイスラエル軍によるガザ攻撃後も止まらない。

エルサレムを中心に起きた一連の事件を「エルサレム・インティファーダ」とたたえるパレスチナのメディアもある。

背景には、イスラエルとパレスチナの和平交渉が4月に頓挫して以降、和平に反対するユダヤ教右派が勢いづいたことが挙げられる。

連立政権内に極右政党を抱えるネタニヤフ首相は、右派からの圧力を受けてガザ攻撃に踏み切った経緯がある。

さらに、エルサレム旧市街にあるイスラム教の聖地「ハラム・シャリーフ」(ユダヤ教では「神殿の丘」)でも、ここをユダヤ教の聖地とみなす右派の動きが活発化。パレスチナ人と治安部隊の衝突がたびたび起きている。(後略)【11月20日 朝日】
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このような認識を背景に、イスラエルの国内治安機関シャバクのヨラム・コヘン長官は、ユダヤ人側の挑発的な行動を戒めています。

****<イスラエル>治安機関トップ、宗教対立激化を懸念***
パレスチナ人によるエルサレムのシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)襲撃事件で、イスラエルのネタニヤフ首相は18日夜に会見し、パレスチナ自治政府のアッバス議長らが「テロ行為」を扇動していると非難した。

だがイスラエルの国内治安機関トップは同日、宗教的対立をあおるイスラエル側の行為が混乱を拡大させている側面があるとの異なる認識を示した。治安当局の懸念は、宗教対立の激化がイスラエル内外の情勢をより不安定化させることだ。

ネタニヤフ首相は会見で、パレスチナ自治政府などが「イスラエルに対する虚言を流布している」と指摘。衝突拡大の原因は、自治政府を率いるアッバス議長らにあると批判した。

だがイスラエルのハーレツ紙によると、国内治安機関シャバクのヨラム・コヘン長官は18日午後、国会議員に対する治安状況の説明で、アッバス議長について「テロに関心はなく、隠れて指揮したりもしていない」と強調。

むしろユダヤ教右派の国会議員が、エルサレム旧市街のイスラム教聖地「ハラム・アッシャリーフ(高貴なる聖域)」(ユダヤ教の呼称は「神殿の丘」)で、本来禁じられているユダヤ教の礼拝行為を強行したり、礼拝の権利拡大などを認める新法を提案したりしてパレスチナ市民を「憤激させている」との認識を示した。

国会議員に対し「今の状況で聖地に行くべきではない」とも語り、抑制を求めた。

ユダヤ教は、「神殿の丘」の下にある西側城壁の一部(通称「嘆きの壁」)を最高の聖地とするが、モスク(イスラム礼拝所)の建つ丘での礼拝は禁じている。しかしユダヤ教右派が礼拝を強行したため、10月29日にはパレスチナ人が右派活動家を銃撃し重傷を負わせた。

長官は「宗教的な要素は非常に危険で、一触即発の危険性を持つ。パレスチナ人だけでなく世界中のイスラム教徒に影響をおよぼす可能性があるからだ」と指摘。宗教対立の激化が周辺のアラブ諸国との関係悪化につながる危険性を懸念した。

パレスチナ人による一連の攻撃はイスラエルの占領政策に対する不満が最大の要因と見られるが、イスラエル側の宗教的な「挑発行為」(パレスチナ・メディア)が衝突を拡大させている側面も大きい。

最近、イスラエルに住むパレスチナ人の若者がシリアに渡り、過激派組織「イスラム国」の戦闘員となる事例もあり、治安当局はヨルダンなど穏健派アラブ諸国と共闘し、若者らが過激化することを阻止したい思惑がある。

18日起きたシナゴーグ襲撃では、重傷を負ったイスラエル人の警官が死亡し、犠牲者は5人になった。【11月19日 毎日】
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イスラエルの情報機関としてはモサドが有名ですが、シャバクは主にイスラエル国内と撤退後のガザを含めたイスラエル軍占領地区で治安維持活動や防諜活動に従事している機関のようです。

そのトップの冷静な判断は評価できますが、すでに沸点に達し始めた緊張を抑えることができるか・・・イスラエルとの対決姿勢を組織の存在理由とするハマスのように危機を煽る勢力もありますので、難しい事態です。

双方の自制を求める声
オバマ米大統領は18日、エルサレムのシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)で起きたパレスチナ人の男2人による襲撃事件を「最大限の言葉で非難する」と表明した上で「緊張を緩和し暴力を拒否するため、パレスチナとイスラエルの双方が協力に努めることが重要だ」と自制を訴えています。

フランシスコ・ローマ法王も19日、のシナゴーグ襲撃事件について「受け入れられない」と非難したうえで、イスラエルとパレスチナの双方に「憎悪と暴力の連鎖」をやめ、「和解と平和のための勇気ある決断」をするよう促しています。「平和構築は困難だが、平和なしに生きるのは苦痛だ」とも。

自制を呼びかける国内外のこうした声が届けばいいのですが・・・。
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