孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パキスタン  イスラム過激派との和平へ向けた歴史的な交渉の第1回会合実現

2014-02-07 21:59:09 | アフガン・パキスタン

(パキスタンのイスラマバードにあるカイバル・パシュトゥンクワ・ハウスで会合後、握手するパキスタン政府代表団のイルファン・シディキ氏(左)と、イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」代表団のマウラナ・サミウルハク師(右、2014年2月6日撮影)。【2月7日 AFP】http://www.afpbb.com/articles/-/3007939?ctm_campaign=txt_topics

テロを阻止した少年に「勇気の星」賞
パキスタンがイスラム過激派による“テロ地獄”と化していることは、今さら言うまでもない話ですが、先月には学校でテロを企てた男を身を挺して食い止めて死亡した少年が話題となりました。

****14歳少年、自爆犯を学校前で食い止め死亡 パキスタン****
パキスタン北部で14歳の少年が学校に侵入しようとした自爆テロ犯を校門前で食い止め、爆発に巻き込まれて死亡した。朝礼のため集まっていた数百人の生徒たちは、この少年のおかげで無事だった。

死亡したのは北部カイバル・パクトゥンクワ州の学校に通う中学生のエティザズ・ハッサン・バンガシュ君。親類や目撃者の話では、6日の登校途中、学校の制服を着た男に学校の場所を尋ねられ、不審を抱いたという。

ほかの生徒たちがひるむ中、エティザズ君は男を阻止しようと石などを投げ、それでも校門に近付こうとする男につかみかかった。

エティザズ君につかまれた男がとっさに爆弾を爆発させ、2人とも現場で死亡。ほかに2人が負傷したという。事実関係については地元の警察も確認している。

カイバル・パクトゥンクワ州はアフガニスタンと国境を接する部族地域にあり、イスラム教シーア派とスンニ派の衝突が頻発している。

エティザズ君を称賛する声はパキスタン全土に広がり、ソーシャルメディアでもその勇気を表彰すべきだとの声が高まっている。地元住民は「彼は何百人もの生徒の命を救った。(反タリバーン運動を展開している)マララ・ユスフザイさんよりも称賛に値する」と話している。【1月10日 CNN】
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イスラム過激派からの襲撃後も女性教育の重要さを世界に訴えているマララさんよりも“称賛に値する”云々は殆ど意味のない議論ですが、そうした反応が出るのは、女性教育の重要性に対する認識の違い、欧米的価値観に完全に沿っているマララさんへの反発があるのでは・・・とも思えます。

なお、マララさんも“エティザズさんに「国の最高の賞」を贈るよう訴えていた”【1月12日 AFP】そうですが、“パキスタン政府は、自らの命を犠牲にして自爆犯の攻撃から約1000人の生徒の命を守った少年に、その勇気ある行動をたたえて同国で最高の賞(「勇気の星」賞)を贈る方針を決めた”【同上】とのことです。

エティザズ・ハッサン・バンガシュ君の勇敢な行動は称賛すべきものですが、こうしたことが起きる現状は真に憂うべきものです。

連日のテロ
私事ですが、今年4月にパキスタンへの旅行を予定しています。
もちろん単なる観光旅行で、ラワルピンディ(首都イスラマバードの隣接都市)近郊のガンダーラ美術遺跡や、インド国境も近いラホールを訪れるつもりです。

日本人に人気の観光エリアであるパキスタン北部フンザ地方が外務省の海外渡航情報では「渡航延期勧告」エリアであるのに対し、私が予定しているエリアはそれより危険度が低い「渡航の是非検討」エリアです。
なお、アフガニスタン国境も近いペシャワルなどは「退避勧告」エリアになっています。

まあ、そんなこともあって、「パキスタンが“テロ地獄”とは言っても、首都近郊や大都市ラホールあたりなら大丈夫じゃないか・・・」といった思いもありました。(もっとも、昨年11月にはイスラム教シーア派とスンニ派の住民同士が衝突し、ラワルピンディ全域に24時間の外出禁止令を出たこともありますが・・・)

福島で放射性物質がダダ漏れ状態でも、東京では何事もなく(ないかのように)生活しています。
テロ標的とされるソチでは、平和の祭典も開かれます。

さすがに普段の東南アジアの旅行とは違いますので、遺跡観光もなるべく地元ガイドを伴って行動するとか、宿泊ホテルもそれなりのところを選ぶといった注意はしています。

それでも、ちょうど航空券やホテルの手配をしていた時期にパキスタンでのテロ報道が集中し、ちょっと不安にもなったのも事実です。

****パキスタン:民放取材車両に銃撃、3人死亡****
パキスタンの最大都市カラチで17日夜、民放大手「エクスプレス・ニュース」の取材車両が武装集団の銃撃を受け、運転手、技師、警備員の3人が死亡した。国内最大の武装勢力「パキスタン・タリバン運動」のエフサン報道官が、エクスプレス・ニュースの放送中のスタジオに電話し、犯行を認めた。(後略)【1月20日 毎日】
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****パキスタン軍の車列に爆弾、兵士20人死亡 イスラム勢力が犯行声明****
パキスタン当局によると、同国北西部バンヌで19日朝、軍の車列がイスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」による爆弾攻撃を受け、兵士20人が死亡、30人が負傷した。軍はその後、報復とみられるミサイル攻撃を実施し、TTP戦闘員3人を殺害した。(後略)【1月20日 AFP】
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1月20日には、私の旅行予定地のラワルピンディでも軍施設を狙ったテロが起きました。
外務省からは軍関連施設に近づかないようにとの注意も出されています。

****パキスタン:首都近郊で軍検問所狙う自爆攻撃 13人死亡****
 ◇武装勢力「パキスタン・タリバン運動」が犯行声明
パキスタンの首都イスラマバードに隣接するラワルピンディで20日、軍の検問所を狙った自爆攻撃があり、兵士6人と近くにいた住民7人の計13人が死亡、約20人が負傷した。国内最大の武装勢力「パキスタン・タリバン運動」が犯行声明を出した。

現場はパキスタン軍の中枢である陸軍司令部の近く。タリバンは19日に北西部バンヌで軍部隊を狙った爆弾攻撃を仕掛け、兵士20人を殺害したばかり。今後も軍を狙った攻撃を激化させる姿勢を示しており、治安の悪化が懸念される。

シャリフ首相は19日の軍部隊への攻撃を深刻に受け止め、スイスのダボスで開かれる「世界経済フォーラム」への出席をキャンセルしていた。その直後の軍の本拠地ラワルピンディへの攻撃は、シャリフ政権の無力ぶりを示す狙いがある。

民放エクスプレス・ニュースによると、タリバンの最高指導者ファズルラ師は19日、部下の兵士に電話し、「軍への攻撃激化」を指示した。パキスタン情報当局が傍受したこの会話の中で、ファズルラ師は「昨年11月に前最高指導者ハキムラ・メスード師が無人機空爆で暗殺されたことと、昨年12月にパキスタン軍が実施した大規模なタリバン掃討作戦への報復だ」と語ったという。

無人機によるメスード容疑者の暗殺は、シャリフ政権がタリバンとの和平協議の準備をしていたときに米国が実施し、タリバン側を激怒させた。

またパキスタン軍は昨年12月末、約1週間にわたって北西部の北ワジリスタン管区で攻撃ヘリなどを投入し、大規模なタリバン掃討作戦を実施した。【1月20日 毎日】
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その後も、軍とタリバン双方の攻撃が報じられています。

****パキスタン:爆弾攻撃相次ぐ 国内最大の武装勢力か****
パキスタン南西部クエッタ近郊で21日、イスラム教シーア派の乗客を乗せたバスが爆弾テロに遭い、乗客28人が死亡、21人が負傷した。

また、南部の国内最大都市カラチで同日、ポリオの予防接種に従事していた医療団のメンバー3人が何者かの銃撃を受け死亡。さらに北西部チャルサダで22日、ポリオ予防接種チームを護衛していた警察の車両が爆弾攻撃に遭い、警察官6人と近くにいた少年1人が死亡した。

いずれの攻撃も犯行声明は出ていないが、国内最大の武装勢力「パキスタン・タリバン運動」などイスラム教スンニ派の武装勢力による攻撃とみられる。

一方、北西部の北ワジリスタン管区からの報道によると、パキスタン軍は20、21の両日、武装勢力掃討のため空爆を実施し、パキスタン・タリバン運動の司令官を含む約40人を殺害。別の地域でも作戦を展開している。

軍の作戦は、タリバンが最近仕掛けた攻撃への報復とみられる。今後、軍とタリバン双方の報復攻撃がエスカレートする恐れがある。【1月22日 毎日】
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【「双方とも、和平努力を損なう恐れのある活動は差し控える」】
文字通りの連日のテロで、“軍とタリバン双方の報復攻撃がエスカレート”なんて事態になったら旅行も再検討しないといけないかも・・・とも不安になったのですが、このところは少し落ち着いたようで、パキスタン政府とTTPの“和平へ向けた歴史的な交渉”が始まっています。

****パキスタン政府とタリバン、和平へ向け歴史的会合****
パキスタン各地で2007年から爆弾攻撃や銃による襲撃を繰り返しているイスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」とパキスタン政府の両代表団が6日、首都イスラマバードで、和平へ向けた歴史的な交渉の第1回会合に臨んだ。会合後、両者はともに停戦を呼び掛けた。

3時間以上に及んだ今回の会合は、和平協議のロードマップ(行程表)を作成するための事前協議。パキスタン政府とTTPが公式に対話の席につくのは、これが初となる。ただ、対話が持続的な和平合意に結び付くかどうかには強い疑念も残る。

会合後、共同声明を読み上げたTTP側交渉責任者のマウラナ・サミウルハク師は「双方とも、和平努力を損なう恐れのある活動は差し控える」との政府の要求にタリバン側が合意したことを明らかにした。

一方、政府側の交渉責任者イルファン・シディキ氏は、TTP側が「われわれの期待を上回る対応を示してくれた」と会合の成果を強調した。

パキスタン政府とTTPとの会合は当初4日に予定されていたが、政府がTTP代表団に疑念を示したことから延期されていた。

サミウルハク師らは今後TTP指導部と協議を行い、その回答を待って第2回会合を開く方針だという。 【2月7日 AFP】
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4日の予定が延期されたのは、会談場所をめぐる意見の対立のためとも報じられていました。

昨年6月の政権発足時から「タリバンとの和平」を訴えていたシャリフ首相ですが、和平へ向けて具体的に動き出したのは今回が初めてです。

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・・・タリバンが和平の呼びかけに応じたのは、「シャリア」(厳格なイスラム法)による統治や、拘束された仲間の釈放などの要求を政府にのませる好機と捉えたためとみられる。

タリバンなど武装勢力は2日深夜、ペシャワルの映画館で5人が死亡、30人が負傷する爆破事件を起こしたほか、3日には南部カラチで警察官4人を射殺するなど攻撃を続けており、今後の協議は難航しそうだ。

タリバンは過去にも政府側との停戦に合意しては、勢力を蓄えて攻撃に転じるなど合意破りを繰り返してきた。【2月4日 毎日】
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昨年11月にTTPの新指導者に選ばれたマウラナ・ファズルラ師は、パキスタン北西部のスワト渓谷でTTPによる2年間の暴力支配を指揮した人物とされ、マララさん襲撃にも関与した強硬派であることも、今後の交渉が難しい理由のひとつです。

“パキスタンの武装勢力に関する専門家で著書もあるイミティアズ・グル氏は、ファズルラ師のような容赦のない指導者が選ばれたことは、TTPが暴力的な活動を強化させていく恐れを意味すると警告。同氏はAFPに対し、「ファズルラ師の選出により、TTP結成以降のパキスタン国内で行われてきたテロ行動が継続されることになる。TTPは政府との交渉に本気で取り組むつもりがないことがうかがえる」として、「TTPは今後さらに残虐さを増すだろう」と語った。”【2013年11月8日 AFP】

TTP側が求めるような“シャリアによる統治”にシャリフ首相が譲歩するのであれば、それはまた別の問題をパキスタンにもたらします。
従来のムシャラフ大統領やザルダリ大統領などに比べるとイスラム主義に宥和的なシャリフ首相ですが、どこまで譲歩するつもりなのでしょうか。
コメント
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