孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

少子化問題  事実婚・婚外子に関する日本の事情

2014-02-15 21:57:17 | 人口問題

(【社会実情データ図録】http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1520.html

【「これでは日本は国家としての体裁をなさなくなる」】
これからの日本にとって「少子化」の問題が決定的に重要であることは言うまでもないことです。

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日本の人口は2010年時点で1億2800万人。国立社会保障・人口問題研究所の昨年の予測(中位推計)では38年に1億900万人、60年に8700万人、今からほぼ100年後の2110年に4300万人へ急減する。

これでは日本は「国家としての体裁をなさなくなって」(中曽根康弘元首相が会長を務めるシンクタンク「世界平和研究所」の提言)しまう。国民の生活も成り立たない。経済協力開発機構(OECD)などの2050年のGDP予測では、「日本は第4位から第9位程度に後退」(同)する。【2013年11月3日 産経】
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人口が減少すれば“国民の生活も成り立たない”かどうか?については異論もあります。
社会全体を転換していけば、人口減少にも対応できるという考えもあります。
今回は、そのあたりの議論はパスします。

少子化・人口減少への対応策として、上記【産経】は非常に産経らしく、憲法改正による家族制度重視を主張しています。

****出生率「2」を目指せ 人口減は国家存亡の危機****
・・・・(シンクタンク「世界平和研究所」の提言は)具体策としては、育児世代への所得再配分、高校までの授業料無償化、非正規雇用の割合の低下、未婚率を下げていくことなどを挙げた。
高齢者には、納税などを通じ次世代を経済的に支える「日本という社会の親」だと自覚するよう、発想の転換を促している。

すべての前提として「子供は国の宝」というコンセンサスを形成し、出生率向上を目指す国民運動が必要だと訴えている。

子孫の世代を増やし、守っていくために大切な指摘だ。
だからこそ、提言は直接指摘していないが、世界平和研案、自民党案、産経新聞「国民の憲法」要綱にあるように、憲法を改正して、家族を保護し、重んじる条文を入れるべきなのだ。【同上】
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少子化問題の解決のためには、結婚以外の選択肢を選べるように現状変更すべき
昨年の上記記事を引っ張り出したのは、下記の藤沢数希氏による婚姻を金融商品選択になぞらえた異色のレポートを目にしたからです。ただ、表現は別として、内容自体はそれほど突飛ではありません。

女性が自分より高収入の男性を婚姻相手として求めるが、女性の収入が増加するなかで、そういう相手を見つけることが難しくなっている。一方で、婚姻によらない「婚外子」出産は日本社会ではまだ大きな制約がある。

そうした日本の結婚制度の欠陥が少子化の原因でるから、極端に言えば、舛添東京都知事のように愛人にたくさん子供を産ませることを含め、婚外子という新たな金融商品を選択できるようにすべきとの提案です。

****少子化の原因は、日本の結婚制度の欠陥にあり****
執筆者:藤沢数希
これまでに結婚というのは所得の高い男性にとって、いかにリスクの大きい契約であるか、ということがわかっただろう。そして、女性にとっては、自分より所得の低い男性と結婚するのは苦行でしかない。

筆者は何も、愛より金、などとつまらないことを言おうとしているのではない。
実際に、女性は自分より貧乏な男性のことを好きになったならば、思う存分恋愛をすればいいし、ときに子供を作ることも大いにけっこうだと思っている。

ただ、その場合は、結婚という金融取引をしないほうが得だと言っているだけだ。なぜなら、結婚してしまえば、自分より貧乏な夫まで扶養する義務が生じてくるからだ。

法律は男女平等である。結婚すると、稼いでいる夫が妻に金銭を支払う義務があるならば、同様に、稼いでいる妻は夫に金銭を支払う義務が生じるのだ。
だとするならば、貧乏な男を好きになったら、結婚しないで付き合い続けるほうが得だという単純な話だ。

その逆もまた真なり、である。自分より所得の高い相手と結婚することは、金融取引の観点から言って、大いに得する。
実際のところ、多くの女性は、結婚制度の法律の詳細を知らなくても、自分より稼いでいる男性と結婚しようと思っている。いわゆる、年収○○万円以上、というやつである。そして、金融取引の観点からそれは正しい。

さて、第20話で述べた通り、日本は諸外国と比べて婚外子が極端に少ない国である。日本の法律がとりわけ婚外子に厳しいわけでもないので、これは多分に文化的なものであると思われる。
とにかく、日本人は結婚しないと子供を産んではいけない、と思い込んでいるのである。

ここにもうひとつ面白いデータがある。(中略)2009年度の「30歳未満の勤労単身世帯の男女別1か月平均実収入及び消費支出の推移」(総務省)を見てみると、実収入のうち、男性の可処分所得が21万5515円なのに対し、女性は21万8156円となっており、調査開始以降初めて男女の可処分所得が逆転したのだ。

現在、日本の産業はサービス業が主流になって来ており、販売店員などは、コミュニケーションが得意な女性のほうが好まれる。こうした中で、ついに20代の可処分所得は男女逆転してしまっているのだ。

女性は自分よりも所得が高い男性と結婚したいのだし、本連載で解説してきた通りに、それは極めて正しい考えである。

一方で、結婚適齢期の男女の可処分所得の水準は、ついに逆転してしまうところまで来たのだ。
つまり、当たり前だが、女性は自分より所得が高い男性を見つけるのがどんどん困難になっている。

少し古いデータになるが、平成17年の独立行政法人「労働政策研究・研修機構」が分析した「若者就業支援の現状と課題」と題する研究論文によれば、やはり所得が高くなるほど男性の婚姻率は急激に高まっている。

年収が1500万円以上の場合、25歳‐29歳の男性の74%がすでに結婚しており、30歳‐34歳の場合はなんと90%がすでに結婚している。しかし、年収が500万円より下になっていくと、男性の婚姻率は一気に下がっていく。

つまり、金持ちの男性はすぐに売れていき、そうした金持ちの男性と結婚できなかった女性は、未婚を選んでいるのだ。そして、日本では、前述のように、主に文化的な制約から、結婚してからでないと子供を産んではいけないのだから、結果的に少子化になるのは当たり前なのである。

筆者は長年にわたり、金融機関で多くの複雑な金融商品の開発に取り組んできた。そうした金融工学の観点から言うと、現在の日本の少子化問題は、結婚という金融商品の欠陥が大きく関係していると考えている。(中略)

現代の日本の結婚制度というのは、金持ちの男性と結婚できたほんの一握りの女性だけが限りある利益を独り占めする構造になっている。いったん結婚したら、その既得権益は法律で守られるからだ。

そして、そうした男性と結婚できなかった女性は、未婚を貫き、生涯子供を産まない、という選択に追い込まれる。これこそが少子化問題の本質だと筆者は考えている。

つまり金融商品に例えるならば、女性には、金持ち男性と結婚して子供を作る、という非常にめぐまれた選択と、誰とも結婚せずに生涯子供を産まない、という選択のふたつしかなく、その中間の選択肢がほとんどないのが現状なのである。
ここは金融商品の開発のように、その中間のバラエティを増やすべきではないだろうか。

そのひとつは言うまでなく、先の東京都都知事選で勝利した舛添要一氏のように、愛人として子供を産む、という選択肢であろう。
日本も昭和初期まで妾というのはふつうであった。これは当然、正妻の既得権益を毀損することになるが、結果として、多くの女性が恩恵を受けるのではないか。

また、中所得者同士の結婚では、籍を入れずに子供を作り、同棲するというような、欧米先進国できわめて一般的に見られる家族の形がもっと増えてもいいだろう。
シングルマザー、シングルファーザーでも仕事を続けられるように、保育所の整備をしたり、国からの補助金を増やしてもいいかもしれない。

日本の少子化問題の解決には、あまりにも強固な結婚という契約以外に、家族を作る選択肢がない、というような現状を、まずは打破する必要があると筆者は考えている。【2月15日 フォーサイト】
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可処分所得が男女で逆転しているということは初めて知りました。

社会の在り方は、どうしたら食べていけるかという経済的条件に基づいていると考えます。
生産手段の向上、所得水準の向上に伴って、「村落共同体→大家族→核家族」と生活単位が次第に小規模化しているのが長い人類の歴史であり、この流れはやがて「核家族→個人」ということになるのだろう・・・と、私は昔から考えています。男女の可処分所得逆転はこの流れを加速させるものと思われます。

個人的には、“憲法を改正して、家族を保護し、重んじる条文を入れるべき”といった窒息しそうな議論より、“シングルマザー、シングルファーザーでも仕事を続けられるように、保育所の整備をしたり、国からの補助金を増やしてもいい”という形で婚外子を社会的に認知していく方が馴染みます。

日本の婚外子が非常に少ないこと、合計特殊出生率が2を超えるという輝かしい成果を達成しているフランスでは婚外子が約半数を占めるということは、事実です。

婚外子に関しては、欧米諸国と日本では決定的な差異があり、この点を素通りした議論は無意味でしょう。


(【社会実情データ図録】http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1520.html

日本は遅れているのではなく、進みすぎていて、未婚のカップルと婚外子が少なくなっている
さきほど“この流れはやがて「核家族→個人」ということになるのだろう”という個人的な思いを書きましたが、欧米諸国がそういう流れにあるのに対し、産経が心配するまでもなく、日本では結婚制度が厳然として維持されています。

フランスでは、先ごろオランド大統領の恋愛問題からファーストレディ騒動が巻き起こりましたが、大統領が「事実婚」であるという点は全く問題になっていません。
(1月17日ブログ“フランス オランド大統領の「ファーストレディ」騒動 「結局、サルコジ前右派政権とどう違うのか」”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140117

事実婚、婚外子に関してはアジアの中でも日本は低く、韓国と似たような状況にありますので、おそらく“儒教”的な社会習慣の影響があるのではないでしょうか。

“韓国では若年層の未婚率が日本以上に高くなっているのが目立っている。NHK海外ネットワークでは、「特集:韓国で急増「シングル族」」と題してこの点を報じている(2011年10月1日放映)。結婚して家族の中で果たさなければならない役割の大きさから、結婚せずに仕事に生き甲斐を見出す若い女性が増えているというのだ。”【社会実情データ図録】http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1538.html

事実婚・婚外子が欧米と比べて際立って少ない日本ですが、“日本は遅れているのではなく、進みすぎていて、未婚のカップルと婚外子が少なくなっているとも言える”との指摘があります。

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・・・・また、2013年9月4日の最高裁大法廷は裁判官の全員一致で、婚内子(嫡出子)と婚外子(非嫡出子)との相続分差別(後者は前者の2分の1)を規定する民法条項が違憲であるとする判断をはじめて示した。

「欧米諸国では1960年代以降、相続の平等化が相次ぎ、2001年にフランスが法改正すると、日本は先進国で唯一格差が残る国となった。」(東京新聞2013年9月5日)こうした判決を見ると、日本でも段々と婚外子を社会的に認知していく方向を辿っていると考えられる。

ただし、日本においては皆婚慣習がなお根強く、婚外子への風当たりも厳しい。このため、非正規労働者など若い貧困層が増えていても、米国とは異なり、結婚する余裕のない者は、男女のカップル形成に至らない、あるいはカップルを形成しても出産しないため、婚外子は少ないままなのだといえる。

もっとも、日本で、皆婚慣習が根強く、婚外子が少ない理由としては、他のアジア諸国と同様に古い家族形態が存続しているためというより、戦後、新しい自由な結婚制度が世界に先駆けて成立したからという見方も成り立つ。

日本国憲法は第24条1項で「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」としている。

「合意のみ」とは、年齢や健康上の理由、親や親族の意見・強制、あるいは宗教、教会や地域の慣習による制約などは法律上は認めないという意味であり、そうした制約を前提とした一切の法令上の規定は憲法違反となる。

この結果、役所への届出だけで婚姻が成立し、離婚も協議離婚が容易に認められるという世界でも最も簡便で自由な結婚制度が生まれた。

こうして、事実婚を選択する大きな理由が日本では欠落することになったことが、極端に低い婚外子比率にむすびついている側面もあろう。

そうした意味では、戦前の家制度等による伝統的結婚制度への反動が強かったため成立した世界で最も自由な結婚制度が、現代では、世界で最も遅れているかに見える極端に低い婚外子比率を生んでいることになろう。

すなわち、日本は遅れているのではなく、進みすぎていて、未婚のカップルと婚外子が少なくなっているとも言えるのである。

憲法改正の自民党案では、第24条について、「合意のみ」を「合意」に変更している。
家族・親族の絆、地域の絆を強める方向での婚姻、離婚の制度、つまり現行の欧米の制度に戻そうとする保守政党としてはもっともな改正案だと思われるが、改正の結果、見込まれるのは、おそらく意図とは反対の欧米レベルへの事実婚や婚外子の増加であろう。【社会実情データ図録】http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1520.html******************

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フランスやスウェーデンで同棲が多いのは、、フランスのPACS(パクス、連帯市民協約)やスウェーデンのサムボのように同棲を法的に保護する制度があり、これを利用して同棲している者も多いためである。フランスで正式に結婚するためには教会で挙式する必要があり、また離婚するには双方が合意していても裁判を行う必要がある。

これに対して、PACSのカップルになるのは裁判所に書類を提出すればよく、PACS を解消するにも書類を提出するのみでよいなど手続きが簡略化されている。

PACS を結んだカップルは、課税など一部は異なるものの、概ね結婚に準じる法的保護を受けることができる。スウェーデンのサムボも同様である。

日本の結婚・離婚は、双方の合意がありさえすれば、市町村への結婚届と離婚届の提出だけでよく、実は、フランスのPACSに近いものと言える。【社会実情データ図録】http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1538.html
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なるほどね・・・・目鱗の指摘です。

なお、フランスのPACS(パクス、連帯市民協約)やスウェーデンのサムボのように同棲を法的に保護する制度がないままに、自民党の憲法改正案のような家族・親族の絆、地域の絆を強める方向での婚姻、離婚の制度の変更がなされた場合は、事実婚は増えても婚外子はさほど増えず、結果として出生率が更に低下するということもあるのではないでしょうか。
コメント (1)
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