孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イタリア  39歳のレンツィ新首相  期待、危うさ、これからの試練

2014-02-22 22:50:11 | 欧州情勢

(若さと自信に溢れたレンツィ氏 “flickr”より By pdemilia-romagna http://www.flickr.com/photos/45140943@N07/9462886871/in/photolist-fqcLzV-fqcLKx-fqcLxc-fqs2VG-fqcLaa-fqs339-fqs2Ub-fqs2SW-fqs2io-fqs2ud-fqs2xA-fqs2gS-fqs2sW-fqcLeZ-fqcLnt-fqcLNP-fqcLQ8-fqs2Mq-fqs2zq-fqcL9i-fqcLgz-gP7BEj-dno7CT-dnoxXB-k6UjNu-9pxy75-9puwf8-dnoJjg-dno4VL-i5UJVi-gZfwgY-9pxxx3-9pxybW-9pxxW5-9pxxTh-dnobQS-dnoAmQ-dhcQfo-eMmLxJ-gbVH9F-eMagV8-hxmuZx-dycAda-i6uWWr-dno8p5-dnoqUY-9iy4pH-fbpBKE-fboWVN-hvLfcU-c4CeLm)

史上最年少首相 最も若い内閣 閣僚の半数が女性
経済・財政再建が急務となっており、政治的にも混迷の感があるイタリアで、中道左派・民主党のレンツィ書記長が、39歳とイタリア史上最年少の新首相に就任しました。

国会議員でもなく、国政の経験もない「新スター」に、膠着した規制の枠組みを打破する「救世主」との期待もある一方で、経験のなさ、前任者を力づくで引きづり降ろしての首相就任という強引さ、選挙に依らない首相交代などを不安視・批判する見方もあります。

****イタリア:39歳レンツィ氏を首相に指名…史上最年少*****
イタリアのナポリターノ大統領は17日、辞任したレッタ前首相(47)の後任となる新首相に、上下両院第1党の中道左派・民主党を率いる党首のレンツィ書記長(39)を指名し、新政権の組閣を要請した。

レンツィ氏はイタリア史上最年少の首相となる。選挙によらない首相交代に対する「民意不在」批判をはねかえし、経済・政治改革を実行するための安定政権を樹立できるかどうかが焦点だ。

新政権はレッタ連立政権に参加していた中道左派、中道、中道右派が中心となる見通し。レンツィ氏は数日中に組閣作業を終え、20日にも大統領府で新政権閣僚が宣誓式に臨む。国会での内閣信任投票は上院が21日、下院が22日の見通し。

レンツィ氏は指名を受け政権安定のカギを握る新党「新中道右派」のアルファノ党首(43)と会談し、協力を要請するとみられる。アルファノ氏は連立参加の条件として政権が「左寄り」にならないようクギを刺し、経済改革政策を文書で提示するよう求めている。

新首相にとって最大の課題は、独仏に次ぎユーロ圏3位の規模を持つイタリア経済の立て直しだ。昨年第4四半期は2011年半ば以来初めて0・1%のプラス成長を記録したが、経済の足腰は定かではない。

若者の失業率は40%を超え、公的債務の対国内総生産(GDP)比は約130%に上る。成長と雇用の回復で目に見える成果を迫られている。

レッタ前首相を引きずり降ろした民主党内の権力闘争もしこりを残している。バチカン日刊機関紙オッセルバトーレ・ロマーノは「新政権は一種の原罪を背負って誕生する」と形容。約10人の同党議員がレンツィ内閣の信任投票で反対票を投じる可能性がある。【2月17日 毎日】
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21日にナポリターノ大統領に閣僚名簿が提出されましたが、「閣僚の半数(8人)を女性が占めるイタリア初の内閣」で、閣僚の平均年齢は48歳弱で1948年以降、最も「若い」内閣となっています。

期待を集める旧態政治の「壊し屋」】
中部フィレンツェの市長にすぎなかったレンツィ氏が首相への階段を一気に駆け上った過程は、あの“お騒がせ政治家”で政界への影響力を失ったとも見られていた右派ベルルスコーニ元首相との電撃会談で選挙制度改革案をまとめ、自党が担ぐレッタ前首相に退任を迫るという、大胆かつ強引なものでした。

****39歳レンツィ氏、政権へ イタリア、レッタ首相が辞任 党内右派、抜本的改革迫る****
・・・・39歳のマッテオ・レンツィ民主党(PD)書記長。同じ党出身のレッタ首相に退陣を求め、14日の辞任に追い込んだ。従来の政界の構図にとらわれず、今も隠然たる力を持つベルルスコーニ元首相とも手を握る野心家が登場した。
 
「イタリアは、泥沼から抜け出さなければならない。抜本的な改革のため、新しい政権で新しい局面を開くべきだ」
13日、民主党の幹部会。レンツィ氏は笑顔すら浮かべながらレッタ氏に退陣要求を突きつけた。

前日まで政権運営に意欲を見せていたレッタ氏はその夜、辞意を表明。14日にナポリターノ大統領に辞表を提出した。党内右派の若きホープが、新首相の座に手をかけた。

レンツィ氏とは何者か。出身地である伊中部フィレンツェの市長。29歳で地元の県知事に当選し、後にくら替えした。国政の経験はないが、役所のぬるま湯体質にメスを入れ、はきはきした弁舌で改革を語る姿が、広く期待を集める。

党内では「世代交代」を唱える。長く党を支配してきた旧共産党系の重鎮に引退を迫る姿は「壊し屋」と評された。昨年12月の書記長選で対立2候補を大差で破り、「次期首相候補」に駆け上がった。

一方のレッタ氏は、昨年4月、2カ月にわたる政治不在の後、ナポリターノ大統領の懸命の調整を受けて首相になった。
しかし連立相手に妥協を重ねる姿に、党内の不満は募った。首相候補として党内で選ばれたわけでも、総選挙を戦ったわけでもない。「レッタ氏を担ぐ大義名分はない」と、求心力は急速に失われつつあった。

書記長選の結果、国政を47歳のレッタ氏、党務を39歳のレンツィ氏が担う若手2人の「タンデム体制」が整ったかにも見えた。

だがレンツィ氏がとった行動は世間を驚かせた。1月18日、ベルルスコーニ元首相と電撃会談。難題だった選挙制度改革案を、国会議員ではない2人の与野党トップ会談でまとめた。

有罪判決で議員資格を失いながら、今も巨大野党「フォルツァ・イタリア」を率いる元首相を、レンツィ氏は政界のリーダーとして遇した。

元首相から離反したアルファーノ氏率いる「新中道右派」は低支持率にとどまり、連立政権から離脱する力がないことも見切っていた。

一方のベルルスコーニ氏の側には、レンツィ氏と組むことで、自らの影響力を維持するとともに、左派を分裂に導きたいというもくろみが透けてみえる。

この会談の後、レンツィ氏のレッタ氏への姿勢はにわかに厳しくなった。
レンツィ氏は、現在の連立の枠組みを保つとしている。ただ、政界の常識にとらわれない同氏だけに、司法改革などでベルルスコーニ氏の地位を脅かさないなど、何らかの密約があるのではないか、との観測も地元メディアには渦巻く。【2月15日 朝日】
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日本にも「・・・・をぶっ壊す」と人気を集めた政治家がいました。

余談ですが、ヒンズー教の三大神は「ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァ」ですが、人々に最も人気があるのは「破壊の神」シヴァです。
どうして「破壊の神」が人々の信仰を集めるのか・・・不思議でもあったのですが、破壊・死によって新たな再生・創造が生まれる・・・といった話以前に、現実世界の閉塞感に苦しむ人々にとっては、自分たちを苦しめるすべてを破壊しつくす荒ぶる神は単純に魅力的なのかも・・・。

閑話休題。「壊し屋」レンツィ新首相の人物像については下記のとおりです。

****イタリア:新首相に39歳レンツィ氏 あだ名は「壊し屋****
 ◇剛腕、旧態の政治体制の解体できるか
イタリアのレッタ首相(47)が14日、辞任したのを受けて、イタリアの新首相に就任するのは中道左派・民主党のマッテオ・レンツィ書記長(39)。

旧態依然としたイタリア政治体制の解体を叫び、あだ名は「壊し屋」。敬愛する政治家は英労働党を「ニューレーバー」に立て直したブレア元英首相と、「変革」を訴えてホワイトハウスの主となったオバマ米大統領だ。

イタリア北部の古都フィレンツェの生まれ。子どもの頃から「リーダーになって勝つこと」に執着、幼なじみは「広場のサッカーでも仕切りたがった」と語る。

国政経験はないが、たぐいまれなカリスマ性と巧みな弁舌で昨年12月、民主党書記長(党首)に就任した。タブーはない。中道右派のベルルスコーニ元首相の懐に飛び込んで選挙制度改革案をまとめ、「民主党で話ができる男が見つかった」と度量を買われた。

目指すのは、国家・行政機構のぜい肉をそぎ落とす政治。日常生活も“普段着”だ。ジーンズに白シャツ姿で自転車にまたがる。レッタ首相に退陣を迫った会談には青色の超小型車で乗り付けた。

欧州債務危機後の景気後退が長引き、若者の就職難が深刻化するイタリアに「希望を与える」と約束する。経済成長や競争力の足を引っ張っている旧弊を「壊す」ことができるか、腕力が問われる。

高校教諭のアニェーゼ夫人との間に2男1女。【2月14日 毎日】
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国政経験はないが、たぐいまれなカリスマ性と巧みな弁舌で一気に支持を拡大、旧態の政治体制の解体を迫る剛腕・・・日本にもそんな政治家がいたような気もします。

旧態の枠組みを打破するのは相当の強引さが必要・・・とも思われますが、そこには危うさもあります。
改革への“痛み”が増す中で、行き詰まり出口が見えない政治・経済情勢への“解決策”を見せてくれる“救世主”に人々が期待を託したというところでしょう。

昨年2月の総選挙では、人々の不満を背景に、人気コメディアンのベッペ・グリッロ氏が率いる、既成政治を否定する「五つ星運動」が既成の中道右派・中道左派の二大政党連合を押しのける格好で大躍進を果たしました。
これもレンツィ氏への期待と同じような流れでしょう。

レンツィ氏には三つの敵対勢力がある
そうした人々の期待を追い風にすれば、政権に上り詰めることはある意味容易ですが、当然ながら実際にどのような政治を行うのか・・・大きな試練に直面します。

****イタリア:39歳レンツィ政権 誕生は試練の始まり****
イタリアで史上最年少のレンツィ首相(39)率いる新政権が22日、誕生する。レンツィ氏は選挙制度改革を手始めに、イタリアの政治と社会の閉塞(へいそく)状況に変革の風穴を開けたい考えだ。

だが、新政権は連立与党の思惑が交錯する不安定な「寄り合い所帯」の上、レッタ前首相(47)を力ずくで引きずり降ろした強引な政治手法に反発もある。政権基盤を安定させて、「痛みを伴う改革」に国民の理解を取り付けることができるかどうかが焦点だ。

レンツィ氏とデルリオ官房長官(53)、新政権の16閣僚は22日、ローマの大統領府で就任宣誓式に臨む。レンツィ氏は新政権の「若さ」を武器に、政治改革(2月)、労働市場改革(3月)、行政改革(4月)、税制改革(5月)と矢継ぎ早に構造改革案を提示すると約束している。

政治改革の土台となるのは、レンツィ氏が中道右派野党「フォルツァ・イタリア」のベルルスコーニ元首相(77)と取りまとめた草案だ。

(1)大選挙区制から中選挙区制への変更(2)2回投票制の導入(3)上院の地方代表議院への改組−−が柱だが、大政党に有利な選挙制度になるため、小政党が反対している。

労働市場・税制改革は若者向けの新規雇用の創出と、企業の活性化が狙い。若年者を採用する企業の社会保障負担を減らし、「地方法人税」に相当する州生産活動税の徴収を10%カットする。また、解雇のハードルを下げる一方、失業手当や職業訓練を手厚くし、労働市場の流動化を促進する。

レンツィ新首相のアキレスけんは脆弱(ぜいじゃく)な政権基盤だ。連立与党は下院(630議席)では安定多数だが、上院(321議席)では過半数ぎりぎりだ。

選挙を経ない首相交代に反対する民主党のチバティ下院議員らは離党も辞さない構えだ。ベルルスコーニ元首相は「レンツィ氏は国会では多数派を形成できないはずだ」とレンツィ氏の弱みを突いている。

レンツィ氏はモンティ元首相、レッタ前首相に続き、選挙を経ていない3人目の首相となる。このため、首相としての政治的な地位は脆弱になるが、すべてはレンツィ氏が何を成し遂げようとするかにかかっている。

レンツィ氏には三つの敵対勢力がある。まず足元の民主党。同党国会議員はベルサーニ前書記長に選ばれており、レンツィ氏は好かれていない。次に、目立ちたがりで、御しにくい連立パートナーの小党。第三は改革に抵抗する高級官僚だ。

人気と若さがあり、弁舌さわやかなレンツィ氏。はたして、イタリア政治を変革することができるか−−。誰も答えられないが、分は悪いだろう。【2月22日 毎日】
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“政治改革(2月)、労働市場改革(3月)、行政改革(4月)、税制改革(5月)と矢継ぎ早に構造改革案を提示すると約束している”・・・・言うのは簡単ですが、そんなにことは容易に運ぶでしょうか?
もし、実際にやるとなれば、反対者を力でねじ伏せて・・・といった、強権的な政治しかないでしょうが、政治基盤が脆弱なレンツィ氏には、そうした選択も無理なように思えます。

しかし、早い段階で結果を示さないと、浮気な国民の期待は、一気に失望へと変わります。
“敵対勢力”以上に怖いのは、移り気な国民かも。
どうしても、“イタリア政治を変革することができるか−−。誰も答えられないが、分は悪いだろう”という感想になってしまいます。

閉塞感・苛立ちから早急な“解決策”を求める人々
イタリアに限らず、欧米でも人々は現状に苛立ち早急な“解決策”を求めています。
欧州各国における反EU・極右勢力の台頭、スコットランドやカタルーニャの分離運動、アメリカのティー・パーティーなど。

日本の若者層の右傾化もそうした流れでしょう。反原発も同様かも。

脱EU、移民排斥、分離独立、小さな政府、中国・韓国への反発・・・そうした単純明快な方策ですべてうまくいくような“解決策”は一部の人々には魅力的ではありますが、あまりに物事を単純化し過ぎている危うさがあります。
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