(ラワルピンディのバイクを使った自爆テロ現場 日時・状況の説明からは判然としませんが、1月20日(月)に起きた軍施設を狙ったテロでしょうか? “flickr”より By Abid Zia http://www.flickr.com/photos/26065386@N06/12671855995/in/photolist-kiLziM-jLuXf9-jKJjrB-jGHmvY)
【「タリバンが和平を頓挫させようとしている」】
連日のテロが続くパキスタンで、シャリフ政権とイスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」の間で交渉が始まったことは、2月7日ブログ「パキスタン イスラム過激派との和平へ向けた歴史的な交渉の第1回会合実現」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140207)で取り上げました。
しかし、その後のTTPによるテロ活動と兵士処刑、これに反発する軍による空爆・・・ということでシャリフ政権による和平模索は早くも路線修正を迫られています。
****パキスタン:映画館で爆発10人死亡 イスラム勢力攻撃か****
パキスタン北西部ペシャワルで11日、映画館で少なくとも2回の爆発が相次ぎ、現地からの報道によると、10人が死亡、30人以上が負傷した。映画館に仕掛けられた爆弾が爆発したとみられる。
犯行声明は出ていないが、この劇場は「タリバン撲滅」を主張する地元政治家・実業家の一族が所有しており、「パキスタン・タリバン運動」などのイスラム武装勢力による攻撃の可能性がある。
ペシャワルでは今月2日にも別の映画館で、手投げ弾が投げ込まれ、5人が死亡したばかり。この攻撃ではパキスタン・タリバン運動傘下のグループが犯行声明を出していた。
シャリフ政権は、武装勢力タリバンとの和平を探るため、今月6日に初めて政府、タリバン両代表団の会合を開いていた。2回目の会合が12日に予定されているが、タリバンは、これに先立ち、政府側に揺さぶりをかける狙いで攻撃を続けている可能性がある。【2月12日 毎日】
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今月に入ってからでも、2日と11日の2回の映画館での爆発・・・・アフガニスタン国境に近く、パキスタンでも最も危険な都市ペシャワルとは言え、すさまじいものがあります。
それでも映画館に人々は行くのでしょうか?
南部の最大都市カラチでも警官を狙ったテロが起きています。
****爆弾テロで警官13人死亡 パキスタン****
パキスタン最大の都市・カラチで13日、イスラム過激派による爆弾テロがあり、これまでに13人が死亡した。
パキスタンの警察によると、南部・カラチで13日朝、警察官約60人を乗せたバスに車が衝突し、爆発した。少なくとも警察官13人が死亡、市民を含む55人が重軽傷を負ったという。バスは、警察の訓練学校を出てUターンしようとしたところで攻撃されたという。
イスラム過激派「パキスタン・タリバン運動」は13日午後、今回の事件は警察の弾圧への報復だとする犯行声明を発表、テロを続ける方針を示した。
パキスタン政府は現在、「パキスタン・タリバン運動」に対して和平協議を呼びかけているが、実現は極めて困難な状況。【2月14日 日テレnews】
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更に、TTPは拘束していた国境警備隊兵士23人を処刑し、そのビデオを公開しました。
****パキスタン和平交渉難航 武装勢力のテロ攻撃活発化*****
パキスタンのシャリフ政権とイスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」の和平交渉が、開始から10日余で早くも頓挫の危機にひんしている。タリバン運動は交渉中にもかかわらずテロ攻撃を活発化させ、政権側が猛反発しているためだ。
タリバン運動との和平交渉は、昨年6月に就任したシャリフ首相が公約に掲げていた。政府は先月29日に和平交渉委員会を設立し、今月6日に首都イスラマバードで初協議が行われた。
ところが、地元メディアによると、タリバン運動の一派は16日、拠点とする同国北部の部族地域で2010年6月に拉致、拘束していたパキスタン兵23人を処刑したと発表した。
シャリフ首相は17日、処刑を「非道だ」と強く非難し、「平和を促進するための対話に極めて悪い影響を与えている」として、この日の協議を中止した。18日には、北西部ペシャワル近郊でパキスタン軍幹部1人がタリバン運動による攻撃で殺害された。
タリバン運動の思惑について、政治評論家ユスフザイ氏は「交渉を有利に進めるため政府に圧力をかける狙いがある」と解説した。【2月19日 産経】
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映画館爆破ならともかく、“拘束していたパキスタン兵23人を処刑”(しかも、そのビデオを公開)というのは、あきらかに“交渉を有利に進めるため政府に圧力をかける狙い”というラインを越えています。
交渉のとん挫・妨害を狙ったものとしか思えません。
“兵士処刑について、タリバン側は、「パキスタン当局に逮捕されたタリバンのメンバー計23人が拘束中に殺害されたことへの報復」と主張した。だが、一度に23人の兵士が殺害されたことへの衝撃は大きく、シャリフ首相は「タリバンが和平を頓挫させようとしている」と強く非難していた”【2月20日 毎日】
TTPの内部で、和平交渉に関する路線・意見の対立があるのか、それとも最初から交渉などする気はなかったのか。
なお、「パキスタンのタリバン運動(TTP)」とアフガニスタンのタリバンは組織的関係はありませんが、同じような立場での活動ということで、当然ながら繋がりはあります。
そのアフガニスタンのタリバンは、TTPとパキスタン政府の交渉に積極的で、TTPに交渉に応じるように働きかけているそうです。
TTPとパキスタン政府・軍の関係が安定することが、パキスタン北西部を物資・人員の補給基地としているアフガニスタンのタリバンにとっては都合がいいのでしょう。
【「和平協議という芝居のために多くの時間を無駄にした」】
TTP側の和平交渉を無視するかのような攻勢に対し、パキスタン軍は空爆でこれに応戦しています。
****パキスタン軍、武装勢力空爆 35人死亡 強攻策に転換か****
パキスタン軍は19日夜、同国北西部の部族地域で戦闘機による空爆を行った。
地元テレビは軍当局者の話として、武装勢力の戦闘員少なくとも35人を殺害したと伝えた。
シャリフ政権は武装勢力との和平を模索してきたが、テロや攻撃の続発で路線の修正を迫られた。
空爆は反政府勢力パキスタン・タリバーン運動(TTP)が事実上、支配下に置く部族地域内の北ワジリスタン地区を中心に6回行われた。死亡した戦闘員の中には外国人も含まれているという。
パキスタンでは過去10年余りの間、武装勢力の攻撃で4万人以上が死亡している。シャリフ政権は1月末、TTPとの和平交渉入りを宣言。政府とTTPの双方の交渉担当者が数回の会合を持った。
しかし、TTPはその間も全土で攻撃を継続し、南部カラチで13日、警察のバスを狙った自爆攻撃で警察官13人を殺害。16日には、2010年から拘束していた国境警備隊員23人を処刑し、政府側から、交渉の継続を疑問視する声が上がっていた。
シャリフ首相は18日、軍トップのラヒル・シャリフ陸軍参謀長と会談。和平路線から強攻策への方針転換について、何らかの合意があったとみられている。【2月21日 朝日】
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パキスタン軍は、TTPとの和平の取り組みが始まってからの犠牲者数を発表するという異例の対応で、和平交渉への不満を明らかにしています。
****パキスタン、和平交渉5カ月 軍人ら460人犠牲****
20日付のパキスタン紙ドーンやロイター通信がパキスタン軍筋の話として伝えたところによると、シャリフ政権がイスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」との和平交渉に本腰を入れた昨年9月以降の約5カ月間で、市民や兵士、警官計460人がタリバン運動のテロで死亡した。
軍が死傷者数を明らかにするのは異例で、対話路線に対する軍内の不満を示したものとみられる。
タリバン運動との対話開始は、昨年9月9日の主要政党による会議で了承された。軍筋によれば、翌10日以降、タリバン運動に殺害された人の数は、市民308人、兵士114人、警官38人に上る。
軍は公式には政府の対話政策を支持しているものの、軍幹部はロイター通信に「すべての関係者の間には、タリバン運動が武力を放棄することはないとの強い認識があり、武力で対抗しなければならない。すでに、和平協議という芝居のために多くの時間を無駄にした」と述べた。
軍は20日未明、アフガニスタン国境に近い部族地域を戦闘機で空爆し、外国人を含む武装勢力の40人を殺害した。パキスタン政府は、米無人機による空爆を和平の障害として強く非難し、米国に中止を求めているが、今後、パキスタン軍がテロ掃討にかじを切る可能性も指摘されている。
政府とタリバン運動は今月6日に和平の初協議を行ったが、テロの激化で17日以降は開けていない。【2月20日 産経】
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通常の感覚では、とても和平交渉が進められるような状況ではありません。
ただ、テロが日常茶飯事のパキスタンでは、また別の見方もあるのかも。
どうでもいい私事ですが、4月中旬にパキスタン(ラワルピンディ、ラホール)旅行を予定していますので、パキスタン情勢が更に悪化すると・・・・困ります。