孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  4月に次期大統領選挙  きしむアフガニスタン政府とアメリカの関係

2014-02-04 22:48:07 | アフガン・パキスタン

(カブールの街角で 来年以降もこうした光景が見られるのでしょうか? “flickr”より By Calvin Wilhelm http://www.flickr.com/photos/8929969@N05/12225761544/in/photolist-jCmdY9-jDyveK-jk3f16-jxXwS7-jxUmcp-jxWxoN-jCmYLP-jDy99D-jDzYTy-jEukp8-jxXmF3-jxYqLs-jxWEad-jCi2v6-j6jMEJ-j6gNFe-jxUjQM-jChXge-jDwCpx-j6hN3E-jqkrDd-jvUv8w-jxXTpE-jDwFDD-jDz2Jd-jDA7j5-j6frUD-jxXFM1-jCmc6k-jEwtcs-jtx8oo-jxVjUn-jxWQxr-jCoiQ1-jDy6pv-jCkSRp-jCoSEE-jDy47p-jEwBrU-jHKYFz-jEvifp-jDxEtP-jDz21j-jDzNHU-jDAjDL-jDzoNs-jDwVqX-jk3H4f-jqkius-j6i1fA-j6hMqC

ガニ元財務相とアブドラ元外相を軸に選挙戦へ
アフガニスタンでは次期大統領選挙(4月5日投票)の選挙運動が2日から始まっています。
カルザイ大統領は3選禁止で立候補できず、カルザイ大統領の兄を含む11名が争う形となっています。

****アフガン大統領選スタート 「カルザイ後」混戦模様****
 ■ガニ元財務相/アブドラ元外相
4月に行われるアフガニスタン大統領選の選挙運動が2日から始まった。同国に駐留する国際治安支援部隊(ISAF)の戦闘部隊が今年末に撤収する予定で、新大統領は撤収後の治安対策や国際社会との関係強化などの重要課題を担うことになる。

候補者11人による戦いは混戦模様で、各候補とも得票が過半数に届かなければ、上位2人による決選投票が行われる。
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米調査会社グレバム・アソシエイツが昨年12月下旬に発表した世論調査によると、主な候補の支持率はガニ元財務相(29%)、アブドラ元外相(25%)、カルザイ大統領の兄のカユーム・カルザイ元下院議員(8%)、サヤフ元下院議員、ラスール前外相(ともに6%)、ワルダク前国防相(5%)となっている。

 ◆有権者11%未定
有権者の11%が誰に投票するかまだ決めていないとし、84%が部族や民族に関係なく投票するとしている。イスラム原理主義勢力タリバンとの交渉を支持する候補に投票するとした有権者は61%で、71%が米国との良好な関係を求める候補を支持すると回答した。

ガニ氏はかつて世界銀行に勤務し、2009年の前回選挙にも出馬したが惨敗した。
アブドラ氏は、前回選挙で決選投票に進む権利を得たが、投票に不正が行われる懸念があるとしてボイコットした。内戦時代にはタリバンと対立した北部同盟の指導者の1人だった。

カユーム氏は米国在住歴が長い実業家で、サヤフ氏はソ連のアフガン侵攻時代にムジャヒディン(イスラム戦士)を率いた。ラスール氏はカルザイ大統領に政治的に近い人物とされる。

カルザイ大統領は憲法の3選禁止規定により出馬できず、今回、どの候補への支持も表明していないが、兄のカユーム氏かラスール氏の当選を期待しているとみられている。

 ◆成否握る公正さ
選挙運動などの警備はアフガン軍が主導するが、タリバンは各地で攻撃を行っており、治安悪化への懸念は強まっている。1日にはアブドラ氏陣営のスタッフ2人が何者かに銃撃され死亡した。

カルザイ大統領は、ISAF撤収後の駐留米兵の地位を定めた米・アフガン両国の安全保障協定への署名を拒否し続けており、署名を選挙後の権力維持のテコにしようとしていると指摘される。

政治評論家ムジダー氏は、「カルザイ氏は決選投票になる前に複数陣営が合同する政府を作らせ、配下の人物を新政権に入れて権力維持を図るのではないか」と予測しており、選挙が公正に行われるかも成否を握るカギとなっている。【2月4日 産経】
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途上国における世論調査・選挙予測の数字というのは、往々にして大きく外れます。
まして、治安すら十分でないアフガニスタンで一体どのような調査が行われたのか・・・甚だ怪しい感もあります。

特に、民族間で果てしない内戦・衝突を繰り返しているアフガニスタンで、“84%が部族や民族に関係なく投票する”というのは、とても信じられません。

“アフガニスタンは,パシュトゥン人(アーリア系),タジク人(ペルシャ系),ウズベク人(トルコ系),ハザラ人(モンゴル系)などによる多民族国家であり,各地の有力部族が,住民生活から文化や政治に至るまで大きな影響力を有していたことなどから,長期的・安定的な統一国家が形成されず,歴史的にも混迷した情勢が続いてきた。”
【公安調査庁HP】

タリバンの問題も、パシュトゥン人を主体とするタリバンとその他の民族の争いという側面があります。
もし本当に“84%が部族や民族に関係なく投票する”のであれば、アフガニスタンの混迷は明日にでも解決します。

それはともかく、“カルザイ政権に批判的なアブドラ・アブドラ元外相と、大統領に比較的近いとみられるアシュラフ・ガニ元財務相の2人が2割前後の支持率で上位を争う”【2月2日 読売】というのが大方の見方のようです。

民族的支持基盤は、ガニ元財務相は最大民族のパシュトゥン人、アブドラ元外相は第2民族のタジク人です。
なお、カルザイ大統領はパシュトゥン人です。

【「米軍には、いつ出て行ってもらっても構わない」】
いずれにしても、次期大統領にとっては、米軍主導の国際治安支援部隊(ISAF)の大半(あるいは全部)が年内に撤収する中、治安回復の具体策が最大課題となります。

来年以降も米軍の一部が駐留を継続するために必要な安全保障協定について、カルザイ大統領が責任逃れ、あるいはアメリカへのいやがらせのため署名を拒否しているという問題で、カルザイ政権とアメリカの関係は険悪な状況ですが、テロ容疑者釈放でも悪化が加速しています。

****アフガン、テロ容疑者釈放へ 「最も危険」の37人、米軍猛反発****
アフガニスタンで駐留米軍などが拘束したテロ容疑者の扱いを検討している調査委員会は、最も危険とされる37人を釈放することを決めた。駐留米軍が27日明らかにした。

米軍は「危険な武装兵を社会に放つことになる」と強く反発。米軍の駐留延長の是非をめぐりこじれている両国関係が、さらに悪化する可能性がある。

釈放が決まったのは、米軍などが作戦中に拘束し、首都カブール北方のバグラム米軍基地の施設に収容してきた反政府勢力タリバーンの武装兵ら。

施設は2001年の対テロ戦開始直後に設置され、キューバのグアンタナモ米軍基地と並んで国際的な批判を浴びたため、昨年3月、アフガン側に管理権が移された。

収容者の大半はその後、アフガン側により裁かれたり、釈放されたりしてきた。米側は最後に残った88人について、テロや攻撃に関与した証拠が明確で、治安上の危険が高いとして、釈放に反対。37人はその一部で、米軍は「アフガン治安部隊11人と米軍や同盟軍の要員42人を死傷させるなどした証拠がある」としている。

カルザイ大統領は25日の記者会見で、収容施設について「嫌疑不十分な人々を拘束し、虐待することで、新たにタリバーンを生み出す製造工場になっている」と批判。収容者の釈放を急ぐ考えを示していた。

米国とアフガンは、今年末に任期が切れる米軍の駐留延長に向けた協定の締結をめぐってもぎくしゃくしている。カルザイ氏は「米国はまず、タリバーンを和平交渉の席に着かせなければならない」などと新たな条件を次々持ち出し、署名を先送り。早期署名を求める米側をいらだたせてきた。

25日の会見でも「米軍には、いつ出て行ってもらっても構わない」と述べるなど、言動をエスカレートさせていた。【1月28日 朝日】
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カルザイ大統領としては国民の間で批判のある米軍への強い姿勢を示すことで、次期大統領選挙への影響力を含めて国民世論へのアピールを強めたい思惑があると思われますが、その姿勢はアメリカ側の神経を逆なでするところでもあります。

****アフガン政府提供の「米軍誤爆の証拠」、実は09年のAFP写真****
アフガニスタン北部パルワン州で今月15日に米軍が行った空爆をめぐり、民間人が犠牲となった証拠としてアフガニスタン政府が報道陣に提示した写真14点の中に、フランス通信(AFP)が2009年に撮影した無関係の写真1枚が含まれていたことが26日、米紙ニューヨーク・タイムズの調査で明らかになった。(後略)【1月27日 AFP】
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カルザイ大統領サイドは、問題の写真について「事態を非常に重くみている」と釈明しつつも、“「少なくとも10枚の写真や、動画、目撃者証言などから(米軍の)作戦に関する証拠は十分そろっている」と主張し、NYタイムズ紙の報道を「事件に関する一般的な見解を覆そうとする政治的な動機に基づいた記事だ」と批判した”【同上】とのことです。
旧日本軍の中国での行為を巡る日中間の感情のもつれにも似たような雰囲気もあります。

一方、タリバン側は、こうしたアフガニスタン政府とアメリカの関係悪化を踏まえて、米軍完全撤退へ向けた揺さぶりをかけています。

****アフガン:自爆テロ タリバン、米軍完全撤退へ揺さぶり 外国人標的、近年最大****
アフガニスタンの首都カブール中心部で17日に起きた自爆テロによる死者は、レバノン人の国際通貨基金在カブール代表部代表ら外国人13人を含む21人に増えた。

外国人を狙った旧支配勢力タリバンの攻撃では近年最大。米政府などは、アフガン軍や警察の訓練のため今年中に任務が終了しても駐留軍の一部を残留させる計画だ。

しかし、タリバンは2001年のアフガン戦争開戦以来、駐留外国軍を「異教徒による軍事支配」と批判しており、今回のテロも米軍などの完全撤退に向けた揺さぶりの可能性がある。

駐留米軍と北大西洋条約機構(NATO)軍は今年末までに任務を終える方針だが、タリバンは依然として高い攻撃能力を持っていることを示した。(後略)【1月19日 毎日】
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治安維持の要である国軍の資質向上は?】
「米軍には、いつ出て行ってもらっても構わない」と啖呵を切ったカルザイ大統領ですが、米軍の残留のいかんにかかわらず、今後の治安維持の責任は先ずはアフガニスタン国軍および警察にあります。

そのアフガニスタン国軍の“資質”の問題はかねてより指摘されているところですが、その改善はあまり順調とは言い難いようです。

****アフガニスタン軍の識字率向上プロジェクト、目標は非現実的 米監査官****
アフガニスタン軍兵士の識字率向上を目指した北大西洋条約機構(NATO)のプログラムが、2億ドル(約200億円)の予算を投じたものの、「非現実的な」目標を達成できない見通しとなっている。
アフガニスタン再建のための米特別監察官、ジョン・ソプコ氏が28日、報告書で述べた。

報告書によると、識字試験を監査する独立機関の不在や、別部隊に配置転換された新兵らの追跡記録がないことなどにより、識字率向上プロジェクトの結果を十分に測定することが不可能となっているという。

NATOの識字訓練プログラムは、2009年に開始された。2014年末までにアフガニスタンの軍兵士と警察官らの100%が米国の小学校1年生と同等の識字レベルを獲得し、50%が同3年生と同等レベルを獲得することを目標にしている。

だが現状、基本の識字試験に合格しているのは全体の64%で、3年生レベルに到達しているのは21%に過ぎないという。

報告書は、「(同プログラムに携わる複数の当局者らは)識字率向上プログラムの目標設定がいかになされたのか知らないと述べており、一方で、現状のアフガン国家治安部隊(ANSF)でそれを実現することは『非現実的』で『達成不可能』だと言っていた」と述べている。

「同プログラム責任者の司令官らの一部は、2013年2月時点で部隊兵士の半数以上が読み書き能力を持っていないだろうと推定していた」

アフガニスタン軍の脱落率は30~50%と高いため、プログラムの成功の度合いを測定することも困難という。
また、戦闘に部隊を配備する必要があるため、識字教育の途中で派遣されてしまう兵士らもいると報告書は述べている。【2月3日 AFP】
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アメリカの後ろ盾が縮小したアフガニスタン政府に、主導権をもってタリバンとの交渉を進められる力量があるようにはあまり思えません。

アフガニスタンの泥沼から抜け出したいアメリカ・オバマ政権ですが、その結果、アフガニスタン政府が崩壊してタリバンが再び・・・ということになったのでは、なんのための戦争だったのか?という外交責任を追及される問題にもなります。

カルザイ大統領とアメリカの思惑、タリバンの動向が絡み合うなかで、大統領選挙と外国部隊撤退という節目となるイベントがある今年、アフガニスタン情勢は・・・どうなるのでしょうか?
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