孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー  民主化・制裁緩和の流れを止めない「憲法宣誓拒否問題」対応を

2012-04-22 22:21:40 | ミャンマー

(4月1日 スー・チーさんの選挙勝利を喜ぶ人々 彼らも民主化の着実な進展を期待しており、過度の政治的緊張は望んでいないのではないでしょうか・・・ “flickr”より By Nicolas Jouhet http://www.flickr.com/photos/nicolas-jouhet/6927763038/ )

【「23日に初登院しない可能性は高い」】
ミャンマー民主化運動指導者スー・チーさんの「憲法宣誓拒否問題」がクローズアップされています。

****ミャンマー:スーチー氏ら初登院見送りも 憲法宣誓拒否で****
下院議員に初当選したミャンマーの民主化運動指導者アウンサンスーチー氏が議員就任時に「憲法を守る」と宣誓することを拒否している問題で、憲法裁判所が宣誓内容を変更するよう求めたスーチー氏の要求を却下したことが分かった。スーチー氏率いる「国民民主連盟(NLD)」のニャンウィン報道官が20日、報道陣に明らかにした。スーチー氏は宣誓を断固拒否しており、スーチー氏らNLDの当選者が23日の国会初登院を見送る可能性が高まった。

宣誓は憲法改正を訴えて当選したスーチー氏の公約と矛盾する。このため、スーチー氏はテインセイン大統領との会談などで政府側に内容の変更を求めていたが、文言は憲法の条文に定められており、要求は認められなかった。ニャンウィン報道官が19日に首都ネピドーの憲法裁判所を訪れ説明を受けたという。

NLDはテインセイン大統領に変更を求める文書を提出する予定だが、大統領は24日まで訪日中で、初登院までに変更が実現するのは難しいとみられる。
報道官は「憲法裁判所の判断には納得できない点がある。スーチー氏らが23日に初登院しない可能性は高い」と話した。

現憲法は旧軍事政権下の08年に制定。議員の4分の1を軍推薦枠とするなど軍人優位の政治体制を「恒久化」し、民主化勢力からの批判が根強い。このため、スーチー氏は現状を「軍に支配された見せかけの民主主義」と批判し、選挙期間中も憲法改正を訴えてきた。スーチー氏にとって自身の選挙公約に反する宣誓は受け入れられないが、一方で憲法の条文を変更するのは容易ではない。スーチー氏とテインセイン政権との間で妥協点が見いだされるかどうかは不透明だ。【4月20日 毎日】
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この問題はスー・チーさんが立候補を決めた時点で分かっていた問題ですが、なんとか玉虫色の政治的妥協はないものでしょうか。
スー・チーさん側の言い分は正論でもあり、さすがに“信念の人”といったところですが、現実問題としては、ミャンマー情勢がここまで好転したのは、テイン・セイン大統領側の変革・譲歩の姿勢があってのものです。

もちろん、政権側には経済制裁解除へ向けた思惑が背景にあってのことではありますが、やはりテイン・セイン大統領の柔軟な対応による部分が大きいように思われます。
ただ、政権内部には民主化勢力への柔軟姿勢を快く思わない勢力も根強いのではないでしょうか。

先の補選圧勝に加えて、今回の「憲法宣誓拒否問題」の頑なな姿勢が、そうした保守派を刺激する事態を憂慮します。
議員資格の保留、登院ボイコットという政治的緊張の事態は、民主化の進展にとって好ましいものとは思えません。
スー・チーさん、NLD側にも、議会活動に参加して改憲への道を開く、“実をとる”柔軟な対応を期待します。

【「一時代に一度きりかもしれないチャンスで、支援の機会を逃したくない」】
スー・チーさんについては、国外訪問も認められたようです。

****スー・チー氏24年ぶり国外へ…6月ノルウェー*****
ノルウェーからの報道によると、同国外務省報道官は18日、ミャンマー民主化運動指導者アウン・サン・スー・チー氏が6月にノルウェーを訪問することを明らかにした。
英国も同時に訪問する見通しで、ミャンマー国外に出るのは1988年以来となる。

ノルウェーは、反軍政組織「ビルマ民主の声」の本部を首都オスロに置くことを認めてきたほか、同国のノーベル賞委員会が91年にノーベル平和賞をスー・チー氏に授与するなど、ミャンマーの民主化運動を側面支援してきた。
英国は、スー・チー氏が88年にミャンマーに帰国するまで在住し、99年に病死した夫マイケル・エアリス氏の故郷だ。スー・チー氏は13日、キャメロン英首相から訪英を要請され、応じる意向を示していた。【4月19日 読売】
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こうした政権側の姿勢を評価して、アメリカはミャンマー外相の訪米を招請しています。

*****ミャンマー外相の5月訪問招請=スー・チー氏外遊を歓迎―米政府*****
キャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は18日、訪問先のニューデリーで記者団に対し、ミャンマーのワナ・マウン・ルウィン外相に5月の訪米を招請したことを明らかにした。国務省が会見録を公表した。

同次官補は「改革のあらゆる要素を支援し、さらなる措置を促すことを目指している」と説明。ミャンマーの民主化進展を受け、「一時代に一度きりかもしれないチャンスで、支援の機会を逃したくない」と語った。【4月19日 時事】
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民主化の流れを後押しする制裁緩和
また、ミャンマーに対するアメリカ・EUの制裁緩和も進展しています。
*****ミャンマーへの金融制裁緩和=NGO活動を支援―米******
米財務省は17日、声明を出し、ミャンマーにおける民主化支援や人道・開発援助、宗教振興などを目的とした非営利活動に対する金融規制を解除したと発表した。クリントン国務長官が先に発表した対ミャンマー制裁緩和の一環で、同国内での米NGOの活動拡大が可能になる。

声明によると、ミャンマーに対する災害救援や難民支援、食料援助などの人道支援、教育・保健・農業分野の開発援助、スポーツや宗教の振興活動について、米国の金融サービスの提供を許可する。【4月18日 時事】
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****EU、ミャンマー制裁を一時停止へ 武器の禁輸は継続*****
欧州連合(EU)がミャンマーに対する制裁を、一部を除いて1年間停止することで基本合意した。EU当局者が19日、明らかにした。23日の外相理事会で正式決定する。民主化への取り組みを評価しつつも、動きが後退しないか見極めるため、期限付きとした。

加盟27カ国の事務レベルの協議で基本合意した。現行の制裁のうち、武器や警備などに関わる装備の禁輸は継続する。当局者は朝日新聞の取材に「民主化が維持・進展すれば制裁停止を続けるだろうが、後退すれば制裁を再開する可能性はある」との見方を示した。

EUによるミャンマーへの制裁は1996年から本格化。武器禁輸のほか、資産凍結やEU域内への渡航禁止、木材や鉱物などの取引の禁止を実施しており、対象は計約500人、約900企業・団体に上る。【4月19日 朝日】
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テイン・セイン大統領の訪日を受けて、日本も支援の方向を明確化すると報じられています。
****ミャンマーに円借款再開=21日の首脳会談で表明へ―首相****
野田佳彦首相は21日夕、都内でミャンマーのテイン・セイン大統領と会談する。日本政府は、2011年3月に民政移管したミャンマー政府の民主化の取り組みを評価しており、首相は経済支援強化のため円借款を再開する意向を大統領に表明する。今後、年内の実施を目指し、具体額を検討。欧米に先駆け、ミャンマーへの有償資金協力に踏み切る考えだ。【4月20日 時事】 
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制裁緩和を急ぐことへの警戒もありますが、民主化への流れを定着させるためには制裁緩和を進めることがベターかと思います。
その流れを止めかねない「宣誓拒否問題」の穏便な対処を政権及びスー・チーさん双方に望みます。
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