goo blog サービス終了のお知らせ 

孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

タイ深南部、止まぬテロ 繁華街で連続爆弾テロ

2012-04-02 22:45:27 | 東南アジア

(ヤラー県 爆弾が仕掛けられた車 “flickr”より By DTN News http://www.flickr.com/photos/dtnnews/6886929360/

治安当局の掃討作戦などと合わせ、犠牲者は5千人を超える
タイは、最近でこそタクシン派と反タクシン派の対立による混乱がクローズップされていますが、イメージ的には観光立国の「微笑みの国」という穏やかな印象で、テロとはあまり結びつきません。
また、敬虔な仏教徒の国というイメージも定着しています。

そうしたイメージは間違いではありませんが、南部のマレー半島でマレーシアに接する「タイ深南部」と称されるエリアは、住民の8割ほどがイスラム教徒で、歴史的にもタイとは異なる歴史を有しています。
そうしたことから、以前から激しい民族対立の場となっており、タイからの分離独立を目指すイスラム反政府勢力によって、仏教徒の首が切り落とされるといった類の凄惨なテロが多発しています。
これまでの犠牲者は5000人にのぼるということですから、その深刻さが窺われます。

タイ深南部のそうした事情については、
07年6月25日ブログ「「微笑みの国」タイの抱える“宗教対立”」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20070625
09年6月19日ブログ「タイ深南部 イスラム教徒による反政府活動が激化」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20090619
でも取り上げてきました。

対話に向けた接触始まるも手詰まり テロの動機は、対話の促進と妨害のそれぞれの見方が浮上
状況は今も変わっていないようで、ヤラー県とソンクラー県のハジャイで31日爆弾テロが相次ぎ、15人が死亡しています。

****タイ:南部で爆発相次ぐ 15人死亡****
タイ南部で31日、爆弾などによる爆発が相次ぎ、少なくとも15人が死亡した。イスラム教徒が多い南部では近年、分離独立を求める反政府組織によるとみられるテロが多発している。

南部ヤラー県の繁華街で車に仕掛けられた爆弾が爆発し、少なくとも10人が死亡、60人以上が負傷した。隣接するパタニ県でもオートバイを使った爆弾攻撃があり、警察官1人が負傷した。

ソンクラー県のホテルでは少なくとも5人が死亡、336人が負傷する爆発が起きた。警察当局はテロの可能性も含めて調べている。【3月31日 毎日】
*************************

下記記事によれば、“今年1月以降、インラック政権と武装組織の一部で対話に向けた接触が始まった”とのことですが、手詰まり状態のようです。

****タイ最南部の連続テロ、同一グループの犯行か****
タイ治安当局は1日、最南部のヤラーとハジャイで31日に起きた爆発事件などがマレー系武装組織による同時多発テロだったとの見方を示した。一般市民を狙った無差別テロの可能性もあることから、インラック首相は治安当局に警戒を指示。各地の空港では警備が強化されている。

最南部の最大都市ハジャイでは同日午後1時ごろ、大型ホテルなどが入る商業施設の地下駐車場にあった盗難車に仕掛けられた爆弾が爆発。火災がショッピングセンターに延焼し、3人が死亡、400人以上が病院に運ばれた。

武装組織のテロの標的は、兵士や軍の民兵、警官、地方行政官ら当局者やその協力者に集中し、待ち伏せや襲撃による攻撃が多かった。しかし今回は、これまでにあまり例のない、外国からの観光客や週末の買い物客でにぎわう繁華街で起きた。

関係者によると、今年1月以降、インラック政権と武装組織の一部で対話に向けた接触が始まったものの、手詰まり状態が続いている。このため犯行の動機としては、対話の促進と妨害のそれぞれの見方が浮上している。

マレー系住民が8割以上を占める最南部では2004年から武装組織によるテロ攻撃が活発化し、治安当局の掃討作戦などと合わせ、犠牲者は5千人を超えている。【4月1日 朝日】
*********************

繁華街での爆弾テロという犯行は、これまでの一般的なテロとは異なる形態とのことですが、10年5月26日にはヤラー県で、自動車販売店の前でバイクに仕掛けられた爆弾が爆発するテロが、11年10月25日には同じくヤラー県の繁華街の少なくとも12カ所で、バイクに仕掛けられた爆弾や投てき弾が爆発するテロが起きています。
従来の待ち伏せや襲撃で当局者や協力者の首を切り落とすといった形から、一般市民をも巻き込む爆弾テロの形に変化してきているように見えます。

タイ深南部の混乱が深刻化したのは、タクシン首相の強権的対応に地域住民が反発を強めた04年からと言われています。
そのタクシン首相の妹でもあるインラック首相には、混乱の収束に向けた指導力が期待されるのですが、やや荷が重いでしょうか。

とにかく、力で抑えつけようとしても限界があり、反発を強めるだけの結果にもなります。
武装組織の一部との対話に向けた接触が始まっているのなら、今回のような“妨害工作”を乗り越えて、譲歩を厭わず、粘り強く交渉にあたってもらいたいものです。

長期的には、経済開発による地域住民の生活の引き上げが融和への道となりますが、中国のチベット問題に見るように、経済開発の利益が一般住民のものとならない形であったり、地域住民の文化がないがしろにされたりする形では、混乱は収まりません。そうした点に留意した施策を期待します。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする