孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ギリシャ  パパンドレウ首相、改革について「イエス・ウィー・キャン」

2011-09-28 21:08:00 | 欧州情勢

(9月15日 ギリシャ・アテネ 財政削減の一環としての教育予算改革に反対する若者たち “flickr”より By odysseasgr http://www.flickr.com/photos/odysseasgr/6150193885/

ドイツに理解を求める
ギリシャのパパンドレウ首相は、ギリシャ支援に国内世論の反対が根強いドイツを訪問、歳出削減などの改革へ向けた姿勢を「イエス・ウィー・キャン」とアピールしたそうです。
欧州だけでなく世界経済全体の混乱の引き金になりかねないギリシャですから、“笑える”といったら不謹慎のそしりを免れませんが、なかなか印象的な発言です。

****ギリシャに必要な支援する」 ドイツ首相、改めて表明****
ドイツのメルケル首相は27日、ベルリン訪問中のギリシャのパパンドレウ首相と会談した。メルケル氏は「我々はユーロ圏の中で強いギリシャを望んでおり、ドイツは必要な支援をする用意がある」と述べ、経済危機に陥ったギリシャへの支援を改めて表明した。

パパンドレウ首相は歳出削減などギリシャが国際社会から求められている義務を果たすと強調。支援の実効性に不信の目を向けがちなドイツに理解を求めた。
パパンドレウ氏はベルリンで開かれたドイツ産業連盟の大会にも出席。「イエス・ウィー・キャン(我々にはできる)」とオバマ米大統領の選挙戦時のキャッチフレーズを使い、改革に取り組む姿勢をアピールした。【8月28日 朝日】
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ドイツ側は、メルケル首相がギリシャ支援を表明、議会も、成り行きが注目されていたユーロ圏の債務危機対策の要となる欧州金融安定化基金(EFSF)を拡充する法案を可決見通しです。

****独議会、拡充案を29日採決=危機対応の欧州基金―可決見通し****
ドイツ連邦議会(下院)は29日、ユーロ圏の債務危機対策の要となる欧州金融安定化基金(EFSF)を拡充する法案を採決する。与党から造反議員が出ているものの、野党の協力があるため、可決はほぼ確実な情勢。最大の負担金を拠出するドイツで法案が成立すれば、危機対策が大きく前進することとなる。

EFSF強化の柱は(1)危機国への融資能力を4400億ユーロ(約46兆円)に増強(2)流通市場での国債買い支え機能を追加―など。融資能力増強には債務保証の拡大が必要で、拡充後はドイツは年間国家予算の3分の2に匹敵する2110億ユーロの巨額の保証を負担することになる。

与党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が行った党内事前投票では、法案に11人が反対し、2人が棄権だった。
なお、29日の採決では、拡充自体が可決されても、EFSFの決定に対する独議会の関与強化も決まる見通しのため、将来的に議会の反発で融資の決定などが遅れる可能性はある。【9月28日 時事】 
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このようにドイツも“当面”は、ギリシャ、ユーロ圏を支援していく姿勢を見せていますが、ギリシャ国内の改革が進展するかどうかについては、厳しい情勢です。
「イエス・ウィー・キャン」という死語を耳にする気恥しさは別にしても、本当に“できるのか?”訝しく思う向きが増えているようです。

【「私たちが作った借金じゃない」】
ギリシャ議会は27日、電気料金を通じて徴収する新たな固定資産税の導入法案を賛成多数で可決しました。
新税によりギリシャ政府は年間20億ユーロ(約2060億円)程度の歳入増を見込んでおり、EUなどのつなぎ融資80億ユーロの確保に向けた努力をアピールしています。
しかし、ギリシャ国内の反発も強まっています。

****劣等生ギリシャ」国民の意外な本音*****
経済破綻を避けるためギリシャ政府は緊縮財政の強化に必死だが、労働環境の悪化や増税に苦しむ市民の不満は爆発寸前

デフォルト(債務不履行)の危機にあるギリシャでは今、一般の国民は途方もないプレッシャーにさいなまれている。ギリシャに疑いの目を向ける支援国に対して、支出削減と歳入増加をきちんと達成する、と政府が必死に説得しているからだ。
EU諸国とIMF(国際通貨基金)からの追加融資がなければギリシャ経済は崩壊し、ユーロ圏だけでなく世界経済までも脅かす事態になる。

2010年5月に決定された1500億ドルの救済を継続して受け取るために、ギリシャ政府は緊縮政策の強化を迫られている。今年の予算目標の不足分28億ドルを穴埋めするために、新たな固定資産税の導入も発表された。この固定資産税は電気料金を通じて徴収し、未払いの場合は電気を止められる。今週にも議会採決が行われる予定だ。

そんななか、ギリシャ市民の不安や不満は高まる一方。先週は労働組合のストで電車やバス、タクシーが運行を中止し、今週も大規模な交通ストが予定されている。
国営電力会社の労働組合は以前から、電気料金を通じての固定資産税の徴収を拒否すると、声高に叫んできた。それでもエバンゲロス・ベニゼロス財務相は先週、当初は2年間の暫定措置としていた固定資産税がもっと延長される可能性があると発言。さらに、財政改革を行わなければギリシャは2000年に経済破綻したアルゼンチンのような危機に陥ると警告した。

「大企業と銀行が作った借金だ」
しかし公立病院の小児科医クリストス・アルギリス(32)は、政府の要求は行き過ぎだと言う。「私たちは金持ちじゃない」とアルギリス。彼は「週100時間」働いているのに、年収は約3万2000ドルだという。「公立の病院には医者がほとんどいない。政府は銀行にカネを回すために私たちの月給を300〜400ユーロも減らしている」とアルギリスは言う。「だから私たちの答えはノーだ。債務なんて知ったことか。私たちが作った借金じゃない。資本主義の大企業と銀行が作った借金じゃないか」

首都アテネ郊外のガラッシの市場で花売りをするテオという名の男性は、ストがもっと起きればいいと言う。「首根っこをつかまれたような状態で、一体どうしろっていうんだ。ただ座ったまま、死ぬのを待てって? そんなわけにはいかないさ」と、彼は言う。
テオの妻は1年前、ビジネスコンサルタントの職を失った。所有していた車2台のうち1台を売って狭いアパートに引越し、2人の子供が通っていた私立幼稚園も辞めさせた。
「ギリシャはとっくに破産していて、政府がそれを公にしていないだけじゃないかと、みんなびくびくしている」と、テオは語る。「でも、政府が言うほど悲惨な事態になるとは思わない。恐怖を煽るのは、人々をコントロールする効果的なやり方さ」【9月26日 Newsweek】
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幽霊公務員、低い納税意識
こうしたなか、国際通貨基金(IMF)やEUの第6弾融資80億ユーロ(約8260億円)が実行されても、3400億ユーロ(約35兆1千億円)の政府債務を返済するのは難しく、「秩序あるデフォルト(債務不履行)」と呼ばれる大幅な債務再編は不可避・・・との見方が強まっています。

欧州各国がいつまでもギリシャ支援を続けられない・・・とする背景には、ギリシャへの不信感があります。
****ギリシャ追加緊縮策、成立見通しも実現には疑問符****
・・・市場が注目するのはギリシャの「資金繰り」ではなく「支払い能力」だ。そもそもギリシャは財政赤字を国内総生産(GDP)比2・2%と虚偽申告し、2001年に欧州単一通貨のユーロ圏に加盟したが、実は4・1%だった。

今回も09年に誕生したパパンドレウ政権が、旧政権が「4%台」と発表していた財政赤字を調査すると12・7%だったことが判明。債務危機を引き起こした。しかも、昨年5月に1100億ユーロ(約11兆3500億円)の第1次救済策を発動したにもかかわらず、ギリシャの財政再建計画は破綻し、1090億ユーロの第2次救済策を余儀なくされた。

ユーロ導入時、ギリシャに低金利の資金が流れ込んだが、産業は発展せずに公務員の数が増加した。中には一度も出勤せずに給与をもらい、他に本職を持つ幽霊公務員もいるという。パパンドレウ政権は20万人の公務員を削減する方針だ。
さらに、ギリシャ国民の納税意識は乏しく、政府の徴税能力も低い。不動産課税強化に伴い電気料金に上乗せして徴収する仕組みを導入するが、電力会社の労働者たちは増税反対の世論を代弁し猛反発している。

英BBC放送によると、ユーロ圏首脳はギリシャの政府債務残高を半分帳消しにして市場を安心させようと協議している。しかし独やオランダではギリシャに「性善説」は通用せず、財政規律を守らない場合はユーロ圏から離脱させるべきだとの強硬意見もある。【9月28日 産経】
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「秩序あるデフォルト(債務不履行)」あるいは「ユーロ圏離脱」という選択肢の現実味が次第に強まっていますが、いずれにしても世界経済の激震は避けられません。
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