孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パキスタン  テロ組織との繋がりをアメリカが厳しく批判  昨年に続き洪水被害拡大

2011-09-23 20:29:55 | アフガン・パキスタン

(パキスタンでのイスラム系国際支援組織(イスラム過激派とは無関係です)による給水活動 “flickr”より By Helping Hand for Relief & Development http://www.flickr.com/photos/hhrd/6116607973/

駐留米軍防衛のためには実力行使も辞さない
アメリカの強い要請を受けて国内イスラム過激派掃討作戦を実施しているパキスタンですが、アフガニスタンのタリバンなどのイスラム過激派とパキスタン、特に国軍、更に言えば軍情報機関のISIとの密接な関係は半ば公然のものとなっていることは、これまでも再三取り上げてきたところです。

その“密接な関係”について、アメリカが最近異例の強い調子で批判を行っています。
17日には、アメリカのマンター駐パキスタン大使はが、カブールのアメリカ大使館などが13日襲撃された事件について、パキスタン国内に拠点を置く武装勢力「ハッカーニ・ネットワーク」の犯行と断言した上で、同組織と「パキスタン政府との結びつきを示す証拠がある」「こうしたことは終わりにしなければならない」と発言しています。

22日には、同趣旨の発言を、こんどは米軍制服組トップのマレン統合参謀本部議長が行い、駐留米軍防衛のためには実力行使も辞さないと警告しています。

****パキスタン情報機関がアフガン武装組織を支援」、米軍高官****
米軍制服組トップのマイケル・マレン統合参謀本部議長は22日、暴力的な過激思想を「代理組織」を通じてアフガニスタンに輸出しているとしてパキスタン政府を非難し、駐留米軍防衛のためには実力行使も辞さないと警告した。

米上院軍事委員会の公聴会で証言したマレン議長は、パキスタン軍3軍統合情報部(ISI)が武装組織「ハッカニ・ネットワーク」を積極的に支援しており、同ネットワークはISIの「正真正銘の片腕」として行動していると名指しで非難。かつてなく厳しい口調でパキスタン政府を批判した。

ハッカニ・ネットワークは、ソビエト連邦がアフガニスタンに侵攻した1980年代には米中央情報局(CIA)と協力関係にあり、CIAから軍事資金や武器供与を受けていた。だが、後に国際テロ組織アルカイダの同盟組織に転じ、現在のアフガニスタンで最も危険なタリバン系一派となっている。
前週、カブールで起きた米大使館襲撃事件もハッカニ・ネットワークの犯行とみられている。

マレン議長は、ISIの支援を受けたハッカニ・ネットワークによる犯行として、今月アフガニスタンで米兵77人が死亡した北大西洋条約機構(NATO)基地でのトラック自爆攻撃、首都カブールのNATO本部や米大使館襲撃、6月のインターコンチネンタル・ホテル(InterContinental hotel)襲撃などを挙げ、「彼らがわが軍への殺りくを続けるならば、ただ座って見ているだけというわけにはいかない」と述べた。

米当局者は最近、相次いでハッカニ・ネットワークに対し何の行動も起こさないパキスタン政府を非難しており、米国が実力行使に出る可能性も指摘されている。【9月23日 AFP】
*****************************

自爆テロを主要な戦術としている「ハッカーニ・ネットワーク」については、昨日ブログでも触れたように、アフガニスタンでタリバンとの和平交渉にあたっていた「高等和平評議会」議長でもあるラバニ元大統領殺害に関与しているのではないかとの見方もあります。

駐在大使や米軍トップが「パキスタン政府との結びつきを示す証拠がある」、“実力行使も辞さない”と言い切る以上は、アメリカ側はそれなりのものを掴んでいるのでしょう。

ただ、パキスタンはアメリカにとって、アフガニスタンでの戦いを遂行する上で必要不可欠のパートナーですが、無人飛行機攻撃による民間人被害などで国内の反米感情は非常に強く、パキスタン国内での米軍の実力行使といった事態になれば、軍の支持も弱いザルダリ政権では世論や軍の不満を抑えきれなくなることが予測されます。
ひいては、両国関係の破局もありえる話ですので、アメリカとしても簡単には動きがとれない問題でもあります。

テロ地獄
パキスタンはテロ実行勢力との繋がり、支援関係がある一方で、世界でも最大のテロの犠牲国でもあります。
ここ数日だけでも、北西部ローワーディール地区と南部の最大都市カラチで大規模なテロが起きています。

***パキスタン:北西部の葬儀会場で自爆テロ 20人死亡****
パキスタン北西部カイバル・パクトゥンクワ州ローワーディール地区の葬儀会場で15日、自爆テロがあり、地元テレビによると、少なくとも20人が死亡、30人以上が負傷した。死傷者は増える可能性がある。
犯行声明は出ていないが、同国北西部では、イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動」が敵対する政府関係者らへのテロを頻発させている。
地元テレビによると、政府を支持している部族の長老の葬儀が開かれていたという。(後略)【9月15日 毎日】
***************************

****パキスタンで自爆テロ、警官ら8人死亡****
パキスタン南部のカラチで19日、警察幹部の自宅近くで自爆テロ犯が乗った車が爆発し、現地からの報道によると、幹部宅の警備を担当していた警官6人を含む8人が死亡した。狙われた幹部は無事だった。
イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」が、仲間が殺害や逮捕されたことへの報復だとして犯行を認めた。また、ほかの警察幹部5人も標的にしていることを明らかにした。【9月20日 産経】
***************************

いずれも、イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」の関与が取り沙汰されているようです。
イスラム武装勢力を一方で掃討しながら、他方で支援する、そして国内ではそのイスラム武装勢力によるテロが頻発して“テロ地獄”と化している・・・いつものことながら、なんとも分かりづらいパキスタンの現状です。

昨年の傷も癒えぬ間に再度の洪水被害
そのパキスタン、2100万人が被災し、1年経った現在も数万人が避難キャンプで生活しているという昨年の大規模洪水に続いて、今年もまた洪水に苦しんでいることは報道のとおりです。

****パキスタン:洪水被害拡大 死者250人 被災600万人****
パキスタン南部シンド州で8月後半から続く豪雨による洪水被害が拡大し、少なくとも250人が死亡、被災者は約600万人に達した。被災地域は180万ヘクタールに及び、50万人近くが家を失った。
最大都市カラチでも多くの家屋が泥水にのまれ、住民らは所持品を抱えて避難した。

パキスタンは昨年夏、建国史上最悪とされる大洪水で2000人以上が死亡、被災者は2000万人を超えた。シンド州の一部はその被災地で、復興半ばで再び被害に見舞われた住民も多いという。【9月17日 毎日】
******************************

自然は弱った人々に、追い打ちをかけるように情け容赦なく襲いかかるものでもあるようです。
そうした自然に対しては、人間同士で助け合うしかありません。国連も救済対策を強めています。

****洪水被害のパキスタン、国連が支援強化****
国連は16日、モンスーンによる洪水で270人が死亡したパキスタンに対する支援を強化すると発表した。この洪水で住宅110万戸が破壊され、550万人に影響が出ている。

国連児童基金(ユニセフ)は、安全な飲料水を確保し、疾病を予防するため、近日中に40台以上の給水車を出して1日あたり20万リットルの水を4万人に提供すると発表した。
世界保健機関(WHO)によると、パキスタンでは多くの人が汚染された水を飲んだ後に急性下痢になっており、水不足が主要な問題となっている。
一方、世界食糧計画(WFP)は、9月中に約50万人に緊急支援を提供する目標であり、10月までには支援対象を220万人に拡大する計画だと述べた。

最も被害が深刻な地区への食糧配給を開始しており、地域共同体の82%が保健施設へアクセスすることができない南部のバディン地区から配給を始めたという。
WFPは、現在は危機対応に国内の備蓄を使用しているが、備蓄を補充するため、ドナーに拠出を増やしてもらう必要があると述べた。
 
パキスタンは2010年、被害総額が100億ドル(約7700億円)に上る同国史上最悪の洪水に見舞われ、2100万人が被害を受けた。洪水から1年経った現在も数万人が避難キャンプで生活している。【9月17日 AFP】
********************************

こうした災害による生活苦・貧困・将来への希望のなさは、テロに走る過激思想の温床ともなります。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする