(高止まりの失業率、最悪の貧困比率・・・長引く不況がオバマ大統領の支持基盤の黒人(アフリカ系)、ヒスパニック(中南米系)や若者たちを直撃 “flickr”より By mezopants http://www.flickr.com/photos/75757822@N00/3316444237/ )
【民主党、牙城で約百年ぶりの敗北】
アメリカでは、2012年に向けて、すでに次期大統領選挙がスタートしていますが、共和党の方は比較的穏健なロムニー前マサチューセッツ州知事とティーパーティーからも支持される保守派のペリー・テキサス州知事を軸に、やはりティーパーティーを基盤とするバックマン下院議員などが絡んでの展開となっています。
与党・民主党の方は、オバマ大統領を脅かす存在はないようですが、ただ、オバマ大統領にとっては一向に上向かない経済が再選への重い足かせとなりつつあります。
先日も、民主党の牙城と言われてきたニューヨーク州の下院補欠選挙で、約100年ぶりに共和党に敗北を喫しています。
****米下院NY州補選で共和党勝利、民主党の牙城崩す****
米下院の補欠選挙が13日、ニューヨーク州で行われ、同選挙区で長年議席を維持してきた民主党が共和党に敗れた。2012年11月の大統領選に向け、オバマ大統領と民主党にとって今回の敗北は痛手となる。
共和党のボブ・ターナー候補は得票率54%と、民主党のデービッド・ウェップリン候補に8ポイント差をつけて当選した。
同選挙区で民主党が敗れたのは1920年代以来。
共和党はこれについて、大統領に対し有権者が不満を抱いている証拠だと強調した。
ネバダ州で行われた補選でも共和党が勝利し、米下院の議席数は民主党192に対し共和党が242と勢力を伸ばした。【9月15日 ロイター】
*****************************
【崖っぷちに立つオバマ大統領】
経済状況を端的に表すのが失業率で、全米平均で9.1%と高止まりしています。
“第2次大戦後、8%を超えた状態では、戦った大統領すらいない”という“崖っぷち”の状況とも報じられています。
財政問題で選択肢の幅が狭まっているなかで、オバマ大統領は今後3年間で4470億ドル(約35兆円)を投じる経済・雇用対策を打ち出してはいますが、関連法案については、下院で過半数を握る共和党が富裕層への増税案に強く反発しており、審議は難航が予想されています。
****失業率9% 支持率低迷 雇用対策で再選へ攻勢****
オバマ米大統領の再選に黄信号がともっている。来年11月の大統領選の行方を大きく左右する失業率は約9%で高止まりし、若者らオバマ氏の主要な支持層を直撃。大規模な雇用対策を打ち出して反転攻勢を狙うが、関連法案の成立に、野党共和党が立ちはだかる。(中略)
再選を目指す大統領は、崖っぷちに立っている。
第2次大戦後、再選に挑んだ9人の大統領のうち、果たせなかったのはフォード、カーター、ブッシュ(父)の3氏。いずれも7%台の高い失業率で大統領選に臨んで敗れた。8%を超えた状態では、戦った大統領すらいない。だが、米政府が1日に発表した見通しでは、来年の平均失業率は9.0%。米ギャラップ社の最新の世論調査では、オバマ氏の支持率は43%で、同時期ではカーター氏に次いで低い。
13日のオバマ氏の演説を聴きに来た公務員の白人男性(44)は「問題はオバマ氏がどこまで結果を出せるかだ。共和党が超保守的な候補ならオバマ氏が勝つだろうが、中道の候補を持ってきたら、再選は難しいかもしれない」と語った。
13日には、大統領の経済政策を争点に、ニューヨーク、ネバダ両州で連邦下院の補欠選挙が行われ、共に共和党の候補が勝利。雇用対策関連法案成立の見通しは、ますます暗くなっている。【9月16日 朝日】
*****************************
2010年の貧困比率は15.1%で、1993年以来最悪になったことが発表されています。
****2010年の貧困比率、93年以来最悪の15.1% 米国****
米国勢調査局は13日、2010年の米国の貧困比率が前年の14.3%から急激に伸びて15.1%となり、1993年以来最悪になったとする統計を発表した。08年の景気後退終了後も、経済の低迷が続いていることを強く示している。
貧困層人口は4年連続の増加で、1959年にデータを取り始めて以来最多の4620万人となった。ただし、貧困比率は59年より7.3%低くなっている。
貧困層は、2010年の年収が4人世帯で2万2314ドル(約170万円)以下、単身世帯で1万1139ドル(約86万円)以下と定義された。
統計は、貧困層以外でも家計が苦しくなっていることを示している。年間世帯収入の中央値は、前年から2.3%減の4万9445ドル(約380万円)だった。【9月14日 AFP】
*******************************
【支持基盤を脅かす不況】
こうした不況の影響を最も強く受けているのが、黒人(アフリカ系)、ヒスパニック(中南米系)や若者たちという、オバマ氏を支えてきた中核の支持層であることが、オバマ大統領にとっては苦しいところです。
****中核支持層に不況直撃*****
・・・失業率の全米平均は9.1%だが、黒人に限ると16.7%、ヒスパニックで11.3%と上がる。
米国勢調査局が13日に発表した10年の米国の貧困者は4618万人で過去最多、人口の約15.1%に上った。ここでも黒人、ヒスパニックは平均を大きく上回り、状況はここ数年悪化。若者の貧困層も大きな問題だ。
米紙ウォールストリート・ジャーナルと米NBCテレビが公表した世論調査では、約4分の3が「米国は悪い方向に行っている」と回答。08年のリーマン・ショックと同じ水準だ。
米国の世論動向に詳しいアメリカン・エンタープライズ公共政策研究所のカーリン・ボーマン上級研究員は「08年にオバマ氏当選を決めた無党派層の支持が、大幅に減少している。この傾向は若者やヒスパニック、労働者層などで著しい。理由は経済に尽きる」と分析する。【9月16日 朝日】
****************************
【「未来はここから始まる」はずだったが・・・】
雇用・経済情勢に苦しむオバマ大統領の足を更に引っ張りそうな気になる“話題”が、経営破たんした太陽光発電パネル会社「ソリンドラ」の問題です。
****米国:雇用政策、苦境に…太陽光パネル会社破産****
米国で先月末に破産を申し立てた太陽光発電パネル会社「ソリンドラ」(カリフォルニア州)がオバマ大統領の頭痛の種となっている。環境産業を次世代の雇用創出の柱と位置づけるオバマ政権は、この会社を全面支援してきた。その経営破綻は雇用政策の失敗を象徴するものと受け取られている。しかも、政府からの融資の妥当性を巡り疑念の声が上がっているのだ。
バマ大統領は環境にやさしい新エネルギー分野の雇用を「グリーン・ジョブ」と呼び、後押ししてきた。ソリンドラはその筆頭格で、大統領は昨年5月、この会社を訪問し「未来はここから始まる」などと語っていた。
だが、大統領は13日にはオハイオ州、14日はノースカロライナ州で雇用創出に関する演説を行ったが、新エネルギー分野の雇用に関して一切言及しなかった。
ソリンドラは政府保証の融資を受けて事業を拡大したが、中国勢との競争激化で業績は悪化。約5億3500万ドル(約412億円)が焦げ付いた。
◇融資に疑惑も
この融資が適正に行われたかについて疑念の声が上がり、連邦捜査局(FBI)が家宅捜索に入る事態に発展した。
ワシントン・ポスト紙が入手した電子メールの記録によると、ホワイトハウスの担当者が、行政管理予算局の融資担当に融資の審査を急ぐように圧力をかけていたことなども判明した。さらにこの会社に投資していた投資家カイザー氏がオバマ大統領の08年大統領選の資金集め役だったことから疑惑が広がった。【9月16日 毎日】
********************************
今のところ、共和党候補がティーパーティー好みの保守的な者になれば、中間層を取り込む形で、オバマ大統領が逃げ切れるのでは・・・とも見られていますが、「グリーン・ジョブ」の象徴「ソリンドラ」の破綻、更に、“融資疑惑”が問題化・・・ということになると、再選戦略の黄信号の点滅も早くなりそうです。