孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ギリシャ  厳しさを増す財政再建問題 “管理された債務不履行”“ユーロ圏離脱”の議論も

2011-09-21 22:24:29 | 欧州情勢

(19日、2012年の財政黒字を確約するギリシャのベニゼロス財務相 ただ目標達成に向け具体的にどのような策を講じるかは明らかになっていません。 財政黒字というのは無理でしょう・・・。そんな予算を組めば、経済は崩壊し、結果的に赤字が膨らむだけではないでしょうか。 “flickr”より By theseoduke http://www.flickr.com/photos/theseoduke/6162402351/

ユーロ圏残留の国民投票、「絶対にない」】
デフォルト(債務不履行)を何とか回避すべく切羽詰まった取組がなされているギリシャですが、ちょっとびっくりするような報道が一時流れました。
ユーロ圏にとどまるかどうかを国民投票にかけよう・・・という内容です。

****ギリシャ:「ユーロ圏」で国民投票か 首相検討の報道****
ギリシャのカティメリニ紙(電子版)からのロイター通信の転電によると、パパンドレウ首相はギリシャがユーロ圏にとどまるかどうかについて国民投票にかけることを検討している。欧州中央銀行(ECB)など国際機関が融資続行の条件として求める緊縮策に対する国民の反発は強く、首相は世論集約の打開策として国民投票を視野に入れたという。【9月20日 毎日】
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パパンドレウ首相もいよいよ行き詰って、国民にげたを預けようということか、でも、もしユーロ圏離脱が選択されたらどうするのだろう・・・とも思ったのですが、さすがに、この報道はすぐに否定されました。

****ギリシャ:ユーロ圏残留の投票否定 副報道官****
ギリシャ政府がユーロ圏残留をめぐる国民投票の実施を検討していると地元メディアが19日に報じたが、政府の副報道官は20日、「絶対にない」とこれを否定した。ロイター通信が伝えた。
パパンドレウ首相は、緊縮策など政治改革をめぐる国民投票を検討中だと表明しているが、副報道官は、ユーロ残留の是非を問うものかどうかについて「その問題については議論していない」と述べた。【9月20日 毎日】
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第6弾融資がないと、10月半ばに資金が枯渇
ただ、こんな話が出てくるというのは、状況が相当に煮詰まってきているとも考えられます。
EU・IMFによる80億ユーロ(約8400億円)の第6弾融資について協議が行われていますが、20日には合意がなされるだろうとのギリシャ財務相筋の見方でしたが、まだ合意には達していないようです。

****ギリシャ審査を来週再開 第6弾融資でEUとIMF****
ギリシャからの報道によると、深刻な財政危機に陥っている同国のベニゼロス財務相と、同国に金融支援を行っている欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)の査察官らとの電話会談が20日夜、前夜に引き続き行われ、査察官らが来週アテネ入りし同国への第6弾融資の実施に向けた審査を再開することが決まった。
ロイター通信によると、財務省筋は80億ユーロ(約8400億円)に上る第6弾融資が「合意に近づいている」と述べた。

ベニゼロス財務相は今月2日、今年の財政赤字の削減目標が達成できなくなったと発表。このため融資を審査していたEUとIMF、欧州中央銀行(ECB)の査察官がアテネから引き揚げ、ギリシャ側にさらなる努力を促していた。ギリシャはデフォルト(債務不履行)を当面、回避するため第6弾融資を必要としている。【9月21日 産経】
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この融資が実現しないと、ギリシャは10月半ばに資金が枯渇し、国家財政は破綻します。
ですから、EU・IMFも最終的には融資を認めるしかない状況ですが、一段の財政赤字削減についてのギリシャ側の対応が難航しているようです。

****財政政策バラバラ ギリシャ支援なお難関 負の連鎖、ユーロ危機****
80億ユーロ(約8400億円)の第6弾融資の条件として一段の財政赤字削減を突きつけられたギリシャのパパンドレウ首相は米国への外遊をキャンセルして18日、臨時閣議を開いたが、追加の緊縮策は発表されなかった。ベニゼロス財務相はEUとIMFの査察官と19日に電話会談した後、再検討すると述べた。

しかし、不動産増税など追加策には与党内でも反発が強い。議会過半数の支持を得られなければ10月半ばに資金が枯渇し、国家財政は破綻する。一方、政府が公務員の退職金・年金カットを打ち出し、15、16の両日で1万人以上の公務員が駆け込み辞職した。【9月20日 産経】
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上記記事にある公務員の駆け込み退職については、次のように報じられています。
****ギリシャ:退職金削減恐れ、2日間で公務員1万人が辞表****
深刻な財政危機に陥っているギリシャで大量の公務員が退職を希望する事態となっている。現地からの報道では、15、16日の2日間で辞表を出したのは1万人以上。政府が財政緊縮策の一環として公務員の退職金や年金のカットなどを打ち出しているためで、もらえるうちにできるだけ多く受け取ろうという算段のようだ。
退職金や年金の受給資格を既に得たベテラン職員が多いため、行政機能に支障が出るのでは、と懸念する声がある。

地元メディアによると、15、16の両日で全国の地方公務員や税務署員、公立病院の職員など1万人以上が辞表を提出。特に希望者が多かったのが社会保険公社で、約8400人の職員のうち約1000人が退職を願い出た。

同国が欧州連合(EU)などの金融支援を打ち切られ、デフォルト(債務不履行)に陥るのではないかとの臆測がこうした動きに拍車を掛けている。13年末までに定年を迎える国家公務員約15万人のうち、半数以上が今年中に早期退職するとの予測もあるという。【9月17日 毎日】
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財政赤字削減で立ち直ると言うより、緊縮財政と将来への不安感から社会・経済が更に収縮・混乱するという悪循環が予見される動きです。

【「ギリシャは管理された債務不履行に乗り出すべきだ」】
ギリシャの破綻はギリシャだけにとどまらず、同様に財政赤字に苦しむスペイン・ポルトガル、更にはイタリアなどに波及し、また、ギリシャ国債を抱えるフランス金融機関などの経営にも影響し、欧州経済全体の信用不安に突入する危険があることはみなが承知しているところですが、欧州各国では、これ以上ギリシャを支えることへの批判も強まっています。

****強まる懐疑論****
ギリシャやスペインなどユーロ圏の重債務国では政権への不満が鬱積(うっせき)する中、支援国ではユーロ懐疑論が強まる。
第2次救済策でギリシャに担保の差し入れを求めたフィンランドでは、財政悪化国への支援を認めない「真正フィン人党」が影響力を増す。
2009年にユーロを導入したスロバキアでは連立与党のシュルク党首が「欧州は債務危機を解決するため借金を積み重ねているだけだ」として第2次救済策反対を宣言、このままでは同国議会での否決は必至の情勢だ。
ユーロの命運を握るメルケル独首相もベルリン特別市議会選で連立相手の自由民主党が惨敗するなど政権基盤が弱まり、ユーロを取り巻く環境はますます厳しくなっている。【9月20日 産経】
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差し当たっては、主要20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が22日、ワシントンで開かれ、欧州債務問題が協議されます。

****欧州債務対策が焦点 G20、22日開幕****
■域外からの支援期待
ギリシャ政府と国際通貨基金(IMF)や欧州連合(EU)との間で交渉が続いている。議題は、ギリシャが財政再建努力を続け、経済構造の改革を進めていけるかどうか。IMFなどの納得が得られなければ、緊急融資を止められ、10月半ばには年金も払えなくなる。

ロイター通信によると、IMF幹部は19日、「ギリシャは企業が競争しやすい環境、透明性を高める必要がある」と語った。構造改革を強く求めるもので、交渉は甘くないことをうかがわせた。パパンドレウ・ギリシャ首相は、今週予定していた国連総会への出席を取りやめ、危機対応にあたっている。

ギリシャの債務不履行(デフォルト)への懸念は、財政が不調な他国にもじわじわと及んでおり、19日はイタリア国債が格下げされた。欧州メディアによると、イタリア政府側は中国の政府系ファンドに国債購入を打診しているという。せっぱ詰まっての「安定株主」探しだ。

銀行も、債務不履行の懸念の波をかぶる。とりわけ影響を受けているのは南欧の国債を多く保有しているフランスの金融機関で、ソシエテ・ジェネラルの株価は7月初めに比べ6割下落した。英紙フィナンシャル・タイムズは20日、独電機大手シーメンスが2週間前にフランス大手銀から多額の資金を引き出し、安全な欧州中央銀行(ECB)の口座に移したと伝えた。

識者の間では、ギリシャの再建のためには債務不履行を避けるべきではないとの見方も出ている。米ニューヨーク大のルビーニ教授はインターネットの投稿で「ギリシャは管理された債務不履行に乗り出すべきだ。競争力を回復するために、ユーロ圏から脱退すべきだ」と主張した。

混迷する状況に、G20としてどんな手だてを講じることができるのか。ブラジル経済紙は19日、ブラジルやロシア、中国など新興5カ国(BRICS)が、ギリシャなどに資金支援する「欧州金融安定化基金(EFSF)」が発行する債券を一部購入した、と報じた。新興国からの支援に対する期待は日増しに強まっている。
ただ、まず欧州自身が危機対応の態勢を整えなければ、G20の話し合いによる成果は期待できそうにない。(後略)【9月21日 朝日】
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欧州内部からの不満も高まる中で、EU・IMFの支援にも限界がありますので、“管理された債務不履行”で軟着陸を図るという方策が現実味を帯びてきています。
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