(【Tripadvisor】ギリシャ領のロードス島リンドス ロードス島もトルコから7日間の到着ビザで行けるようです)
【エーゲ海東部のギリシャの島々で観光を楽しむトルコ人】
今日TVを観ていると、トルコ沿岸のエーゲ海・ギリシャ領の島々にトルコ人観光客が大勢押し寄せて休暇を楽しんでいる様子が放映されていました。
これはなかなか興味深い光景です。というのは後述のようにトルコとギリシャは険しい対立関係にあるというイメージが強いせいです。
ギリシャの島々でトルコ人観光客が遊ぶ・・・という光景は、ギリシャ側の観光客誘致措置によって実現したもののようです。
****さあ、エーゲ海の島へ―必要な書類は?****
トルコ国民がギリシャの島々に到着ビザを取得して入国できるようにする措置が講じられた。レジェプ・タイイプ・エルドアン大統領のギリシャ訪問中、ギリシャのミツォタキス首相は到着ビザに関する発表を行い、ギリシャの10の島で7日間の到着ビザが導入されると述べた。トルコ国民がビザを申請するには、国境で行う必要のある手順がいくつかある。
ギリシャのキリヤコス・ミツォタキス首相は、本日エルドアン大統領と行った記者会見で、エーゲ海東部でトルコ国民に向けた7日間の到着ビザ問題についても話し合われたと述べた。
■トルコ国民のギリシャ諸島への到着ビザ
ギリシャのミツォタキス首相は、到着ビザに関する発言の中で、「トルコのEU加盟のプロセスでの支援提供についても議論した。ビザの問題に関しては、トルコの学生とヨーロッパの学生とのより緊密な協力を確保するためビザ免除の問題についても議論した。同時に、エーゲ海東部で年間を通じて7日間のビザを認めることで、トルコ国民がエーゲ海の島々及び東部エーゲ海の島々を訪問する自由を与える決定を取り上げた」と述べた。
■ギリシャ大臣発表:夏だけでなく一年中有効に
ギリシャの移民・庇護大臣ディミトリス・カイリディス氏は、協定の範囲内でトルコ国民がビザなしで1週間訪問できる島を発表した。
同大臣は、ギリシャがシェンゲン圏内にあることを指摘し、トルコ国民が東エーゲ海の島々をより容易に訪問できるよう、シェンゲン協定からの例外を要請したと述べた。
カイリディス大臣は、10島のビザ免除が夏だけでなく年間を通じて有効であるという情報を共有し、以下の島を挙げた。
リムノス島、レスボス島、キオス島、サモス島、レロス島、カリムノス島、コス島、ロードス島、シミ島、カステロリス島(メイス島)。(後略)【2023年12月07日付 Hurriyet 紙 TUFSmedia】
******************
ギリシャはEU・シェンゲン協定加盟国で、協定によれば、域内では国境管理をなくす一方で、対外国境では出入国管理に共通のルールを導入することになっています。
トルコからの観光客誘致についてはこの協定上のハードルがあったようですが、協定ルールの例外措置とすることでハードルをクリアして実現した“エーゲ海東部でトルコ国民に向けた7日間の到着ビザ発給”措置のようです。
【犬猿の仲のトルコ・ギリシャ関係 キプロスやガス田問題も】
トルコとギリシャ・・・・古来、両者は犬猿の仲。
小アジア世界とギリシャということでは古代ギリシャの時代から両者はひとつの地域を形成する関係にあって、都市間で戦争も繰り返されてきました。
例えば、トロイの木馬で有名なトロイ戦争(紀元前1700年~紀元前1200年のどこか)も、小アジアのトロイアとギリシャ・ペロポネソス地方のミケーネを中心とする勢力の間で戦われた戦争です。
オスマントルコ成立でギリシャはトルコ領となりますが、ギリシャ独立戦争を経て1832年ギリシャは独立します。
第一次世界大戦後の1919年5月~22年、敗戦国オスマン帝国の支配地として残るギリシア人居住地を統合してギリシア国家を完成させるという「大ギリシア」主義の願望を持っていたギリシアがトルコのイズミル(スミルナ)に侵攻(ギリシャ・トルコ戦争)。これをトルコが撃退に成功してイズミルを奪回。戦争を指導したムスタファ=ケマルの主導権が確立し、トルコ革命を完成させることになりました。【「世界史の窓」より】
現代史において両国関係を悪化させた問題が分断国家キプロスの問題。
****キプロス トルコの軍事侵攻から50年 南北の分断いまも続く****
南北に分断された状態が続く地中海のキプロスではトルコ軍の軍事侵攻から50年になるのにあわせ、ギリシャ系住民の多い南部とトルコ系住民の多い北部でそれぞれ式典が開かれました。
ギリシャがキプロスの再統合を訴えているのに対し、トルコは北部の独立を主張していて、半世紀が経ったいまも対立が続いています。
地中海の島キプロスは、多数派のギリシャ系住民と少数派のトルコ系住民の対立が激しくなる中、50年前の1974年7月、トルコがトルコ系住民の保護を理由に北部に侵攻しました。
その後、北部は北キプロスとして一方的に独立を宣言し、ギリシャ系住民の多い南部と分断された状態が続いています。
侵攻から50年になるのにあわせて南部では20日、ギリシャのミツォタキス首相が出席して追悼式典が開かれ、「ギリシャは常にキプロスの側に立つと約束する。私たちはキプロスが再統合されるまで闘いをやめない」などと述べ、分断の解消を訴えました。
一方、トルコだけが国家承認する北部では、記念の式典が開かれ、トルコのエルドアン大統領は「50年前、トルコはトルコ系住民を見捨てないことを全世界に示した。北キプロスの承認と2国家解決に向けた努力を決意をもって続ける」と述べ、北キプロスの独立をあらためて主張しました。
侵攻から半世紀がたったいまも南北の再統合を訴えるギリシャと北部の独立を主張するトルコの間で溝は深く、対立が続いています。【7月21日 NHK】
*******************
キプロスへのトルコ軍侵攻は50年前のことですが、もっと最近の話では、2020年には東地中海のガス田をめぐり一触即発の険悪な関係にもなりました。
****一触即発 東地中海で何が起こっているのか****
東地中海。・・・さんさんと降り注ぐ陽光の下に広がるエメラルド色の海を連想する人も多いだろう。しかし、インターネットで検索すると「軍事演習」や「衝突」といった何やらきな臭いキーワードが目につくようになってきた。
この海でいったい何が起きているのか。実は海底に眠る天然ガス資源を巡って、トルコとギリシャが他国も巻きこみパワーゲームを繰り広げているのだ。
ことし8月、東地中海は一触即発の危機を迎えていた。トルコ軍とギリシャ軍が、海では艦船が接触し、空では戦闘機がドッグファイトさながらの接近飛行を繰り広げたのだ。なぜそこまで両国の間で緊張が高まっているのか。
背景にあるのはトルコとギリシャの領有権の主張がぶつかりあう東地中海の海底で2009年以降、ガス田の発見が相次いでいることだ。
長年続く対立
東地中海をめぐるトルコとギリシャの対立は100年近く前までさかのぼる。第1次世界大戦でドイツ側についたオスマン帝国は敗北。後継国家のトルコは、勝利した連合国が賠償請求権を放棄する代わりに、エーゲ海の島々の多くをギリシャに割譲することとなった。この決定にトルコは不満を持ち続けてきた。
さらに1974年には、キプロス問題が起きる。この年、トルコは島の北側に住む少数派のトルコ系住民を保護する名目で軍を派遣。「北キプロス・トルコ共和国」として独立させた。しかし国際社会はギリシャ系住民の多い南側を「キプロス共和国」として承認したため、島は40年以上にわたって南北に分断されている。東地中海は両国の対立につながる火種がくすぶり続けてきているのだ。
トルコ外し
エネルギーをめぐるトルコとギリシャの対立は地中海を取り囲む国や地域を巻き込んで拡大している。ギリシャは東地中海で採掘した天然ガスをヨーロッパへ輸出する2つの大型プロジェクトに関わっている。
1つは採掘したガスをエジプトに送り、LNG(液化天然ガス)に加工して輸出する「エジプト・エネルギーハブ化構想」。そしてもう1つが、イスラエルの沖合で採掘したガスをギリシャへと伸びる1900キロものパイプラインを建設して輸出する「東地中海パイプライン構想」だ。
この2つのプロジェクトの実現に向けて、関係する7つの国と地域(ギリシャ、エジプト、イスラエル、イタリア、キプロス、ヨルダン、パレスチナ)は「東地中海ガスフォーラム」というグループを立ち上げた。いずれのプロジェクトでもトルコは排除された。
歴史の塗りかえに警戒
ことし1月、パイプラインの建設プロジェクトに調印した際、ギリシャのミツォタキス首相が強調したのは、プロジェクトが「地域の平和と安定に貢献する」ということだった。
東地中海の深い海底に築くパイプラインの採算性を疑問視する声は少なくない。関係するイタリアもプロジェクトには消極的だ。
なぜギリシャがそこまでパイプラインにこだわるのか。ギリシャはトルコが国境を実力行使で変えて「歴史の塗り替え」をするのではないかと警戒しているという研究者の指摘もある。プロジェクトからは、トルコに対抗してできるだけ東地中海で仲間を増やしたいというギリシャの思惑が見え隠れする。
リビアの対立持ち込まれる
ギリシャのパイプラインプロジェクトに対抗するため、トルコはある“奇策”に打って出た。去年11月、地中海の対岸のリビアの暫定政府とEEZ=排他的経済水域を設定。
トルコのエルドアン大統領は「イスラエルからギリシャへ海底経由でパイプラインを敷設するにはトルコとリビアの承諾がないと不可能になった」と釘をさした。
怒るギリシャに加勢したのはフランスだった。肩を持つ大きな要因の1つは、東西に分裂して戦闘が続くリビアを巡るトルコとの対立だ。
リビアでフランスは自身が権益を持つ油田をおさえていた軍事組織を支援していたが、トルコが暫定政府を支援し始めると軍事組織は劣勢に追い込まれた。
リビアでのトルコの台頭に不快感を隠さないフランスの後押しもあり、EU=ヨーロッパ連合はトルコに対して制裁を科すか、議論するため、9月下旬、臨時の首脳会議が開かれることになっている。
“チキンレース”
東地中海をめぐりトルコとギリシャはどちらも後に引かない。トルコがリビアの暫定政府とEEZを設定したのに対して、今度は、ギリシャがエジプトとEEZを設定するといういわば“意趣返し”を行った。これにトルコは、東地中海へ探査船を軍艦のエスコートつきで派遣。冒頭で紹介した緊張高まる事態につながっている。
みかねたドイツはトルコとギリシャとの仲介に乗り出し、マース外相は「小さな接触をきっかけに破滅的な衝突が起きかねない」と警告。
トルコとギリシャが加盟するNATO=北大西洋条約機構は、双方の軍の間で偶発的な衝突が起きるのを回避するため、協議を始めることで両国が合意したと発表したが、翌日には、ギリシャがその発表を否定する異例の事態となった。一見穏やかに見える東地中海で続く“チキンレース”の行方は予想がつかない。【2020年9月8日 NHK】
*******************
【関係改善の動きも 観光など国民レベルの交流が関係改善には重要】
そんな険悪なトルコ・ギリシャ関係にあって、関係改善の動きも。
****トルコとギリシャ、関係改善で合意 アテネで首脳会談****
トルコのエルドアン大統領は7日、訪問先のギリシャの首都アテネでミツォタキス首相と会談し、両国の関係改善に取り組むことで合意した。
意思疎通の窓口をオープンにし、緊張を招く要因を排除するために軍事的な信頼の構築を模索するほか、貿易の促進やエーゲ海を巡る両国の課題に取り組む方針で一致した。
両国はともに北大西洋条約機構(NATO)に加盟していながらも対立が続いていたが、2月に大地震が起きたトルコをギリシャが迅速に支援したことで関係が改善に向かってきた。両国関係をより緊密にし、新たな時代を切り開くロードマップを策定し、関係を再構築することを目指す。
エルドアン氏はミツォタキス氏との会談後に「大局的な視点に立つ限り、われわれの間に解決できない問題はない」とし、「エーゲ海を平和の海にしたい。トルコとギリシャの共同歩調を通じて世界の模範にしたい」と語った。
両国はまた、年間貿易額を現在の50億ドルから100億ドルへ引き上げたい考えとした。【2023年12月8日 ロイター】
*******************
もっとも、細かいいざこざ、対立は今も続いています。
****博物館モスク化、対立の火種=ギリシャ苦言、トルコは反論****
トルコ最大都市イスタンブールにあるカーリエ博物館が今月、約4年にわたる改装作業を終え、モスク(イスラム礼拝所)として一般向けに開放された。
元はキリスト教会の聖堂で、イエス・キリストや聖母マリアを描いたビザンチン美術の傑作とされるモザイク画やフレスコ画が多数残る建物だけに、隣国ギリシャはモスク化に反発。歴史的に対立を繰り返してきた両国間の新たな火種になる懸念も出ている。
かつて「コンスタンチノープル」と呼ばれたイスタンブールは、ギリシャ正教会の中心地でビザンチン帝国の首都だった。15世紀にトルコの前身オスマン帝国に制圧された歴史的経緯がある。
「カーリエモスク」となった聖堂は5~6世紀ごろ建てられ、オスマン帝国下の16世紀にモスクへ変更。政教分離を掲げるトルコ共和国成立後の1945年に博物館となった。
イスラム色の強いエルドアン大統領が2020年、同じく博物館だった世界遺産アヤソフィアをモスクに変えた直後に、カーリエもモスクへの変更が決まった。
今月13日にトルコを訪れたギリシャのミツォタキス首相は、モスク化に「再び礼拝の場所になったのは残念だ」と苦言を呈した。これに対し、エルドアン氏は「文化遺産の保護において、トルコは模範的な国だ」と反論した。
改装後のカーリエモスクは、ドーム内の天井などに描かれた鮮やかなフレスコ画を一目見ようと、観光客でにぎわっていた。一方、礼拝部屋にあるモザイク画は、壁と同系色の覆いで隠されていた。
初めて礼拝に来たという大学教授ビュレント・デイルメンジさん(48)は「イスラムに適さなくても、元の形や壁画は保存されている。トルコの寛容さの表れだ。これがギリシャだったら全て壊されただろう」と話した。【5月18日 時事】
*****************
上記のように、さまざまな対立の歴史、関係改善の試みのある両国関係ですが、冒頭で紹介したような観光を通した国民レベルの交流が深まることが関係改善に向けた重要な一歩となると思われます。
【翻って日中間のビザ問題】
観光を通した国民レベルの交流ということで言えば、現在実質的にストップしているのが中国への日本人観光客。
コロナ後の観光再開に際し、従来短期の入国についてはビザを免除していた中国側が相互主義(日本は中国に対しビザを求めています)を理由に日本人短期入国者にビザを求めることになっており、ビザ申請センターでの指紋採取など非常にハードルの高いビザ発給が実質的に日本人の中国観光を諦めさせています。(観光は諦めればすみますが、ビジネスでは障害となっています)
ただ最近、ここひと月か半月でしょうか、各メディアが提供するニュースを一覧できるニュースサイトで、急に中国国営メディア・新華社の記事、それも政治記事ではなく、観光案内のような情報提供を目にするようになりました。しかも連日、1日に5本、6本という大量の情報が発信されています。
おそらく、経済不振という事情もあって中国政府の日本人観光客誘致の方針に沿ったものだろうと想像しています。しかし、日本人観光客誘致のためなら、そういう情報提供以上にビザ発給の簡便化がはるかに有効。
中国側の相互主義の主張はもっともな話ではありますが(中国は欧州など一部の国に対しては一方的なビザ免除を再開していますが、日本との関係では微妙な両国関係を反映して、話が膠着しています)、ビザ免除でなくても、せめて到着ビザとか、あるいは郵送・オンラインでのビザ発給とか・・・簡便化してもらえれば、私などはすぐにでも中国に出かけるのですが・・・・。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます