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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

韓国  哨戒艦沈没に関する北関与が明らかになっても「韓国政府の対応には限界」の見方

2010-04-24 20:08:20 | 世相

(沈没した哨戒艦「天安」の引き揚げ作業に向かうクレーン船
“flickr”より By #PACOM http://www.flickr.com/photos/us-pacific-command/4494781451/)

【北朝鮮警戒論の急拡大】
韓国軍は24日、3月26日に黄海で爆発・沈没した哨戒艦「天安」の船首部分の引き揚げ作業を行い、行方不明となっていた乗組員7人のうち1人の遺体を発見しました。
事件発生直後から、艦内の弾薬庫などでの「内部爆発説」と、機雷や魚雷攻撃による「外部衝撃説」が論議されてきましたが、前後二つに折れて沈没した同艦の船尾部分はすでに15日に引き揚げられ、軍民合同調査団は切断面や内外部を調べた結果、原因は「外部爆発の可能性が非常に高い」と判断しています。

韓国国内では北朝鮮による攻撃説が強まっていることが報じられています。
****韓国艦沈没:強まる「北朝鮮攻撃説」…警戒論が拡大*****
・・・今後、本格的な調査が始まるが、韓国内では北朝鮮による攻撃説が強まっており、南北関係や6カ国協議への影響も憂慮されている。(中略)
韓国メディアはこれまで、「事件の背後に北朝鮮国防委員会傘下の偵察総局がいる」とする軍・情報当局幹部の発言を相次いで報道。北朝鮮の潜水艇による魚雷攻撃の可能性も詳細に報じてきた。
さらに20日、北朝鮮工作員2人が、韓国に亡命した黄長※(ファン・ジャンヨプ、※は火へんに華)・元朝鮮労働党書記の暗殺を企図した容疑で韓国当局に逮捕されたことが公表されると、北朝鮮警戒論が急速に拡大した。有力紙・朝鮮日報は22日付社説で「国民と政府が金正日(キム・ジョンイル)体制の危険性を十分に理解し(中略)厳密な対策を求めねばならない」と主張した。

李明博(イ・ミョンバク)大統領は「原因を最後まで明らかにし、結果に従い断固として対処する」との立場を表明。柳明桓(ユ・ミョンファン)外交通商相も「問題がある程度、処理されるまで6カ国協議の開催は難しいかもしれない」と発言した。
しかし、北朝鮮の関与が明らかになった場合でも、「韓国政府の対応には限界がある」との見方は小さくない。北朝鮮との緊張激化が軍事衝突に発展すれば、韓国経済に多大な影響を与えるからだ。朝鮮日報によると、政府の対応策は▽対北警告声明発表▽南北軍事会談開催要求▽開城工業団地閉鎖▽対北批判放送再開▽米韓合同軍事演習「チームスピリット」再開--などのレベルにとどまると分析している。【4月23日 毎日】
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韓国軍情報部は事件直後に、アメリカと共同で収集した情報に基づき、北朝鮮の潜水艦が発射した魚雷が原因との見方をとっていたこと、北朝鮮の関与は「確実」との報告書を青瓦台(大統領府)に送っていたことも、22日、聯合ニュースが報じています。【4月22日 ロイターより】

【慎重姿勢の李明博大統領】
李明博大統領は、事故原因調査の最終結果が出るまで待つとの慎重姿勢を保ち、結果が出れば、そのときに国際社会と協力し必要な措置を取るとの考えを示しています。
****哨戒艦沈没関連措置は国際社会と協力、李大統領******
李明博(イ・ミョンバク)大統領は23日、韓国海軍哨戒艦「天安」の沈没事故について、事故原因の調査を国際共助を通じ進めているように、結果が出れば、そのときに国際社会と協力し必要な措置を取るとの考えを示した。そのうえで、調査に関しては、厳格かつ科学的に国際社会が受け入れられる結果を出すことに重点を置いていると強調した。
李大統領は、南北分断のなか最北端で起きた事故ではあるが、いかなる場合にも原因をあらかじめ測ることはしないと、慎重な姿勢を示した。最終的な結果が出るまで待ち、結果が出た後にどのような措置をとるかは、慎重に検討していると協調した。事故原因については国際社会に発表することも考慮しているとした。【4月23日 聯合ニュース】
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【対決姿勢強める北朝鮮は中国頼み】
南北関係の緊張を伝えるものとしては、北朝鮮が23日、中断している金剛山観光事業を巡り、韓国政府などの資産5カ所の没収と韓国側の残る全資産の凍結を決めたことも報じられています。

****金剛山の韓国資産、北朝鮮が一部没収 対話路線から転換*****
北朝鮮は23日、中断している金剛山観光事業を巡り、韓国政府などの資産5カ所の没収と韓国側の残る全資産の凍結を決めた。昨年の南北対話路線から転換し、逆に韓国との対決姿勢を強めた形だ。経済難が続くなか、国内を引き締める狙いがある。近くあるとみられる金正日(キム・ジョンイル)総書記の訪中も利用し、「韓国包囲網」を築く戦略も描いているようだ。

朝鮮中央通信によると、北朝鮮名勝地総合開発指導局報道官は23日、13日に凍結処分をしたばかりの韓国側資産の没収に関する談話を発表。他の資産も順次、没収するとみられる。開城工業団地でも北朝鮮当局者が19日に現地を視察し、圧力を強めている。
これに対し、韓国統一省報道官は23日、「北の不法、不当な措置に強力に対応する」と語り、具体的な対抗措置を検討していることを明らかにした。韓国では哨戒艦沈没を巡って「北朝鮮の関与」を疑う声も拡大。李明博(イ・ミョンバク)大統領の外交ブレーンは「南北関係は太陽政策以前の状態に戻るだろう」と語った。

北朝鮮関係筋は、最近の北朝鮮外交について「南北首脳会談を現状打開の起爆剤にしようとした昨年の戦略から転換し、中国との関係強化をテコにする作戦に切り替えた」と語る。金総書記の訪中も良好な中朝関係を演出すると同時に、国連制裁を有名無実化させる経済支援や投資協力を得るのが狙いだという。

背景には深刻な経済難や統治能力の弱体化がある。北朝鮮の今年の食糧不足は130万トンに上ると推定される。
一方で、北朝鮮では経済を一部自由化した2002年7月の経済改革以降、「トン(朝鮮語でお金の意味)主」と呼ばれるニューリッチが生まれ、朝鮮労働党を頂点とする既存権力層を脅かしてきた。昨年11月に実施したデノミネーション(通貨呼称単位の変更)は新興勢力を押さえ込む目的があったが、経済の混乱を招いて失敗に終わったとの見方が強い。
以降、「対内的にも対外的にもさらに苦しくなった」(玄仁澤(ヒョン・インテク)韓国統一相)と言われ、これを乗り切るため内部統制を強化する一方、対外的にはいつ関係が改善するか分からない韓国を相手にするより、中国を頼りにする姿勢が鮮明になってきた。
国内では最近、内閣所属で警察にあたる人民保安省を人民保安部に改称し、最高権力機関の国防委員会の直属にしており、社会統制の強化の一環とみられている。
また金総書記は14日、軍の将官に例年より大規模な100人の昇進人事も命令。25日の北朝鮮軍創建記念日には軍事演習を予定しているという情報もあるなど、軍への依存も一層強めている。【4月24日 朝日】
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北朝鮮側は今回の資産没収を、長期にわたる金剛山観光中断で受けた被害に対する補償だと主張しています。
また、韓国海軍哨戒艦の沈没をめぐり、2国は交戦の危機にあると警告を発しており、北朝鮮の国営メディアは「戦争か平和かの道を分かつ危機的段階に達している。観光再開などありえない。このような状況下で南に対し、わが国が寛容や忍耐を見せることができないのは、あまりにも当然だ」と伝えています。

“中国との関係強化をテコにする作戦”とは言っても、頼られる中国にとっては困った話です。
昨年11月のデノミネーション失敗で、北朝鮮経済は破滅的危機にあり、中国が北朝鮮に長年求めてきた改革・開放政策についても、“08年11月の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」の署名論文で、「帝国主義者とその追随者がわれわれに『改革』『開放』を叫ぶ意図は、わが国の社会主義制度を覆し、資本主義を復活させたいためだ」と述べ、中国への警戒心を間接的に表している”【4月24日 産経より】という状況です。
国際社会が注目する中断している核問題の6カ国協議再開についても、既に核保有国宣言をした北朝鮮が協議に応じる可能性は極めて低いと見られています。
さりとて、突き放して崩壊させる訳にいかず、中国としては苦々しいところでしょう。
金正日総書記の訪中はこのところ話題になっていますが、いまだ行われていません。

【金持ち喧嘩せず】
哨戒艦「天安」の沈没事故への北朝鮮関与説の広がり、韓国資産の没収・凍結という事態で、南北関係が緊張しているのは事実でしょうが、韓国側の冷静というか、ことを荒立てない対応がむしろ印象的です。(特に、激昂しやすい韓国世論を考えると)
ひと昔前の一触即発の南北関係であれば武力衝突も・・・というところでしょうが、冒頭毎日記事にあるように“北朝鮮の関与が明らかになった場合でも、「韓国政府の対応には限界がある」との見方は小さくない。北朝鮮との緊張激化が軍事衝突に発展すれば、韓国経済に多大な影響を与えるからだ。”というのが現在の韓国側事情のようです。

国家の威信といったものを最重視する立場の人を除けば、豊かになった韓国国民にとって、いまさら武力衝突とか戦争というのは割に合わない選択・・・というところでしょう。
戦争の回避、平和の維持のためには、観念的な主張よりも、国民が失いたくない富を持つように経済状態を発展させることが一番現実的ということのようです。

コメント
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