最後に、テロリストが決して核兵器を取得しないよう確保する必要がある。
これは、世界の安全への最も差し迫った、大変な脅威だ。核兵器を持てば、テロリスト一人で大規模な破壊行為が可能になる。アルカイダは核爆弾を求めていると表明している。我々は、安全に保管されていない核物質が世界各地にあることを知っている。人々を守るためには、我々は目的意識を持って直ちに行動しなければならない。
今日私は、テロリストなどに狙われうるあらゆる核物質を4年以内に安全な管理体制下に置くため、新たな国際的努力を始めることを発表する。これらの物質を厳重な管理下に置くため、新しい基準を制定し、ロシアとの協力関係を拡大し、また他の国との新たな協力関係も追求する。
核物質の闇市場をつぶし、移送中の物質を探知・阻止し、財政手段を使ってこの危険な取引を妨害するといった取り組みも強化しなければならない。こういった脅威は継続的なものであるため、大量破壊兵器の拡散防止構想(PSI)や核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアチブ(GI)などを恒久的な国際機関に変えるべきだ。まずそのはじめとして、米国は1年以内に核管理に関する首脳会議を主催する。
こんなに広範囲な課題を実現できるのか疑問に思う人もいるだろう。各国に違いがあることが避けられない中で、真に国際的な協力が可能か疑う人もいるだろう。核兵器のない世界という話を聴いて、そんな実現できそうもない目標を設けることの意味を疑う人もいるだろう。
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しかし誤ってはならない。我々は、そうした道がどこへ至るかを知っている。国々や人びとがそれぞれの違いによって定義されることを認めてしまうと、お互いの溝は広がっていく。我々が平和を追求しなければ、平和には永遠に手が届かない。協調への呼びかけを否定し、あきらめることは簡単で、そして臆病(おくびょう)なことだ。そうやって戦争が始まる。そうやって人類の進歩が終わる。
我々の世界には、立ち向かわなければならない暴力と不正義がある。それに対し、我々は分裂によってではなく、自由な国々、自由な人々として共に立ち向かわなければならない。私は、武器に訴えようとする呼びかけが、それを置くよう呼びかけるよりも、人びとの気持ちを沸き立たせることができると知っている。しかしだからこそ、平和と進歩に向けた声は、共に上げられなければならない。
その声こそが、今なおプラハの通りにこだましているものだ。それは68年の(プラハの春の)亡霊(霊魂とか投影、と訳したほうが良い)であり、ビロード革命の歓喜の声だ。それこそが一発の銃弾を撃つこともなく核武装した帝国を倒すことに力を貸したチェコの人びとだ。
人類の運命は我々自身が作る。ここプラハで、よりよい未来を求めることで、我々の過去を称賛しよう。我々の分断に橋をかけ、我々の希望に基づいて建設し、世界を、我々が見いだした時よりも繁栄して平和なものにして去る責任を引き受けよう。共にならば、我々にはできるはずだ。
http://www.asahi.com/international/update/0405/TKY200904050209.html
次にプラハ演説のお終いの3節分を掲げる。
There is violence and injustice in our world that must be confronted. We must confront it not by splitting apart but by standing together as free nations, as free people. (Applause.) I know that a call to arms can stir the souls of men and women more than a call to lay them down. But that is why the voices for peace and progress must be raised together. (Applause.)
Those are the voices that still echo through the streets of Prague. Those are the ghosts of 1968. Those were the joyful sounds of the Velvet Revolution. Those were the Czechs who helped bring down a nuclear-armed empire without firing a shot.
Human destiny will be what we make of it. And here in Prague, let us honor our past by reaching for a better future. Let us bridge our divisions, build upon our hopes, accept our responsibility to leave this world more prosperous and more peaceful than we found it. (Applause.) Together we can do it.
Thank you very much. Thank you, Prague. (Applause.)
http://www.nikkei.co.jp/senkyo/us2008/news/20090423u0c4n001_23.html
この英文は上記のURLより拝借したが、下記のURLには日本語訳も掲載されている。
http://www.nikkei.co.jp/senkyo/us2008/news/20090423u0c4n000_23.html
「世界には対峙しなければならない暴力と不正義がある。我々は分裂するのではなく、自由な国々、自由な国民として共にそれらに対峙しなければならない。」と叫んでいる。小生は、ウイグルやチベットでの中国政府の弾圧や虐殺を思い浮かべる。しかしながら、先の米中戦略経済対話では、オバマは、このことには一切言及していない。4月5日にプラハでこんなことを言ったのならば、7月27日、28日には、面と向かっていたのであるから、直接、王岐山(副首相、金融担当)や戴ヘイ国(国務委員、外交担当)にも、そう言って欲しかったのだ。しかしこのことに関しては、たいしたことは言わなかった様だ。
こんなことはまだある。プラハ演説の冒頭から3~4節目に次の言葉がある。「冷戦思考に終止符を打つため、米国の安全保障戦略の中での核兵器の役割を減らすとともに、他の国にも同じ行動を取るよう要請する。」他の国にも同じ行動をとるよう要請する、ならば、この米中戦略経済対話で、中国にもそのことを伝える絶好のチャンスではなかったか。中国にも、お前のところでも核兵器の削減に協力せよとか、真剣に言うべきではないか。これも同じく言わなかった様だ。この演説で言及されている国などは、「米国、ロシア、北朝鮮、イラン、チェコ・ポーランド、それにアルカイダ」だけである。北朝鮮に核開発をやらせたのは中国である。六者協議の議長国でもある。北朝鮮に言及するならば、中国にも言及して、責任の一端は中国も担うべきだ、とか言及しても良かったのだ、と言うよりも言及すべきだったのである。(続く)