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東日本大震災 復興への提言

2012-01-10 | 気になる本

佐藤、奥野、大西、花崎編(2011.4)『東日本大震災復興への提言』東京大学出版会
 この本は経済、社会、都市、金融など様々な専門家が、震災後直ちに評論・提言したものです。「戦後」の時代から、「災後」という言葉も生まれ、一つの画期にもなりつつあります。兵庫県南部地震の時代と違って、世界経済危機、日本経済・政治の低迷と、閉塞感漂う時代での復興は多様な課題と多くの困難を伴います。愛知からは交通不便な東北の復興支援と同時に、それぞれの地域の防災計画見直し、自分の命を守る想像力の学習、社会を根本から考え直す機会でもあります。副題には「持続可能な経済社会の構築」とありますが、政治家、研究者、マスコミは従来の新自由主義的な頭脳のままであり、新しい思考が可能か疑念もありますが、破壊でなく住民が一歩ずつ討議・改善しかないのでしょう。以下、幾つかの気になった点をメモ書き風に記します。
 間宮陽介氏の感想と提言では、「テレビに写し出される被災地の荒涼とした風景を見ていると、被爆後の広島、長崎を見ているようで、いいようのない悲しみを覚える」と、多くの国民が感じた感想を述べています。大学の使命では、国立大学が法人化されて以来、国家の教育・研究への介入がますます強まっていると危惧しています。藤本隆宏氏は、現場の視点を活かせということをベースに、グローバル化での産業のあり方を指摘しています。法人税でも国内への貢献、雇用への貢献度での減税なら筋が通ります。CO2削減も、無理な一本化の努力が、仕組みの複雑化を招いていると指摘しています。金で解決する「キャップアンドトレード」は筋が悪いと述べています。国内排出量の推定は、燃種別のCO2係数によるどんぶり勘定です。農業現場の強化に「ものづくり技術」の移転で、強い農業現場の構築を提案しています。規模拡大は「良い流れ」の結果であって、目標ではないという点は、今のTPP論議に当てはまります。伊藤滋氏は伊勢湾台風での低地の被害について、災害危険区域にせずに40年過ぎたことを、今回の津波被害から教訓を学ぶべきだと論じています。震災に備え井戸を無数に掘ってはどうかという提案は同感です。個人的にも掘ろうかと思っていました。避難所には掘るべきです。コミュニティ施設に自家発電設備を備える提案はよいが、ガソリン、灯油は長く保存できるかが問題です。家庭で備える物、地区で備える物など区分リストが必要でしょう。また、学校などの避難所は毛布の外に、トイレ機能、パーテーションなどの備えなど再点検が必要です。さらに、学校での給食設備も望まれます。花崎正晴氏の提案する復興にマイクロファイナンスの活用は、是非実現したいものです。バングラディッシュで成功した事例を、日本でどう実現するか課題を大きいです。関良基氏は、復興への方向性で①原子力・火力主体の大規模集中型のエネルギー供給システムから、小規模で多様な再生可能エネルギーを組み合わせた地域分散型供給システム。②官・業・学のよる閉じたサークル内での中央集権的な意思決定システムから、各地方が独自色豊かな多様性のある分権型システムへ。③原発輸出やTPP推進など歯止めなき対外拡張を求める外需指向型経済から、エネルギーと食糧の自給率上昇を目指し、内に向かって安全と安心を求める内需指向型経済へ。など提言しています。(写真は大船渡にある津波記念碑です)
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