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内田、姜「アジア辺境論-日本の生きる道」その①

2020-10-19 | 気になる本

内田樹、姜尚中(2017)『アジア辺境論』集英社新書

 アメリカ経済圏とEUの間に挟まれ、アジア圏を主張すべきと思っていたが、大国の覇権争うの中で小さくても先進の韓日台に絞って連携し、自立した構想を創るという発想は具体的で現実的である。いか、本からの抜粋である。(  )内は私のコメント。

姜 自由を最高価値に掲げ、民主主義が一番進んでいると思われている国で、どうしてこのようなポピュリズムや反知性主義がぼっこするようになったのでしょうか。

 そんなやつらに雇用や税金を取られるなと排外主義の言説を唱える極右政治家が人々に熱狂的に支持される。デモクラシーの本家であったはずのアメリカで、イギリスで、フランスで、内なる敵を排除しようという力が大きく働いています。

 民主主義は自家中毒に内なる敵を作り出すことによって、人々の敵愾心をそちらに向けるような働きをする。日本でも、嫌韓、嫌中といったヘイト・クライム的な現象が以前より広がりつつあります。

 アジア主義の残滓として、戦後非常に歪んだ形で表出されたのが、安倍さんの祖父の岸信介によって結成された、日韓台の反共同盟だったと思っています。

 反共同盟の成果は、植民地主義や過去のアジア主義の負の遺産は清算せずに反共・冷戦の論理だけが覆いかぶさることになりました。いまだに過去の歴をめぐる日本と韓国の確執は消えていないし、溝は深まった。韓国と台湾で民主化が進んだ

 トランプ、プーチン、習近平など、大陸国家の共同覇権のシステムが出来上がるときに、民主主義的な連携としてその隙間にいる、韓国、日本、台湾、この関係が非常に重要になってくるんじゃないか

内田 なぜ、成熟した民主制国家から独裁性が生まれるのか、それは民主制と独裁制は相性が悪くないからです。

 ヒトラー以下の一連の事例に共通しているのは、外交内政の政治的環境が非常に複雑になり、変数が増えすぎて制御が困難になり、国民一人一人が自分の頭で考えることができなくなった状態で独裁制への移行がおきた。シンプルな政策を提示する政治勢力に人々は引きつけられる。民主制から独裁制への移行をもたらすのは、最終的には知性の疲労だと思う「難しいことを考えるのを好む」ような傾向をどうやって創り出すか。それが民主制を守るための思想的な急務ではないか、と考えている。

 共和制とは、穏やかでゆったりした気分で統治に関わる重要なことを論じられる環境のことです。いっときの感情や熱狂によって重大なことが即断されることがない。共和制とは意図的に作りこまれた「決められない政治」システムのことです。日本は何でもアメリカの模倣をするが、「共和制的な制度によるリスクヘッジ」だけはまったく模倣する気が無い。都道府県への分権性、三権分立も両院性もアメリカほど機能していない。

 トランプは選挙中に連邦税を払っていなかったことを指摘されたけど、「すべてのアメリカ人は私がスマートだからだ」と言って、支持者の喝さいを浴びた。税金を払わない人間に自分たちの納めた税金の使い道を決めてもらうことに、どうして気付かずにいられるのか。

 姜 今の日本はほとんど内閣独裁、官邸独裁に近い状態になっている。橋下元大阪市長は、選挙で「いったん選挙で選んだんだから文句をいうな」と、「白紙委任」という言葉まで使っていた。(安倍・菅政治を見ていると、民主主義は3権分立、議論の保証、地方分権、言論の自由、人事の公正が重要に思う。小選挙区制度や政治資金も問題である。)

内田 21世紀になって、自民党の若手議員は世襲議員と執行部の「オーディション」で、上の眼鏡にかなった「イエスマン」だけになった。自分の固有の政治的意識を持っていない。

姜 韓国では憲法裁判所がある。朴大統領の罷免がされた。日本では政治性の高い課題には、裁判所の司法審査の対象にならない。

内田 アメリカは失敗したら補正できる。ソ連にはなかった。中国にもない。(もちろん日本もない)中国が経済成長しても、アメリカに代わることはないと思う。アメリカ、ロシア、中国、EUの大陸型国家の世界分割になると思う。

 「グローバル化、グローバル化」となんで叫ばなくちゃいけないのか。成長率ゼロでいいじゃないですか。世界が変われば、経済モデルも変わる。グローバル化もいずれは止まる。

姜 アメリカの自動車は国際競争に勝つ見込みはない。それに代わるものは、兵器産業しか残っていない。兵器は「他の兵器を破壊するためのもの」で、多くの兵器需要が発生する。(兵器需要で軍拡競争となり、世界に戦争は絶えない)

内田 アメリカ人の代わりに自衛隊員が行って血を流してこい。アメリカ人はもう血を流す余力が無い。ベトナム戦争以降、帰還兵たちの精神の壊れ方が半端でない。帰還兵の自殺は毎日20人近い。日本の場合も、イラク復興支援に当たった自衛隊員の56名が、帰還後に自殺している。

姜 リニアはJR東海の9兆円のプロジェクトです。最初は自分たちで資金調達をやると言っていたのが、工期を速めてくれれば政府が3兆円負担することになった。(地下深く通るので土地所有者の買収も承諾もいらない。)関東、中部地方、関西地区でGDPの半分以上が集中し、首都圏以外は雑魚構想ですね。

内田 「コンパクトシティ」構想があるが、里山には行政コストをかけない、国土放棄の先駆的形態だ。(公共投資はしない。まずは「自助」で。)故郷を捨てて街に出ろ。「無法の荒野」が広がる日本列島になる。人口減局面で、なお経済成長するなどという無法なことを考えたら、地方切り捨て、国民資源の首都圏集中以外にない。(豊田市でも都心に選択と集中で多くを投資した。でも、松坂屋は撤退で都心の空洞化は進む。それでも、中央公園、博物館の建設は進める予定である。法人市民税は半分ほど国税化された。)

姜 (アメリカのサンディスプリングの独立事件について)富裕層による、効率化とモビリティの独占、自分さえ快適ならば、後の雑魚は知ったことではない。超富裕層のタックスヘイブンも同じことですよね。

内田 日本がこれほど人口減少になるのは有史以来初めてだ。回復見込みもなく、経験もない。日本が世界でその先頭を走っている。資本主義は人口増を前提にしている。マルクスもそうだ。リニアもそうだが、人口減で経済成長が停滞する過渡期には、五輪や万博やカジノのように打ち上げ花火的企画や兵器産業へのシフトや、大きな公共事業への支出という政策が次々と行われる可能性がある。

(2章以降は次回)

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