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空洞化と属国化

2018-05-05 | 気になる本

坂本雅子(2017)『空洞化と属国化』新日本出版社

 4月に著者の報告を聞く貴重な機会を得た。ずばり、豊田の産業空洞化はどこまで進んでいるか?が聞きたかった。この本は一度読んで、気になるポイントをメモしブログにもアップしている。改めて、トヨタ自動車の状況に焦点を当てて、豊田市で暮らす立場で本のポイントと私のコメントをまとめる。(カッコ内は補足、コメント)

 空洞化とはグローバル企業がものづくり生産を低賃金国に委託し、技術移転が進み、母国の産業が疲弊すること。アメリカの車がそうであった。ビッグスリーは他国で生産した自社の車を、逆輸入して、米国で販売していた。日本の電機産業は空洞化し全面敗退(例:東芝の不正会計、半導体部門の売却、シャープは台湾企業が買収)した。車の海外生産比率(15年で、トヨタ64%、日産82%、ホンダ84%、三菱52%・・)は増大している。

今後トヨタは国内300万台生産体制を維持できるか?トランプの脅しに負けないか?(トランプを支持する中堅労働者に注目、トヨタはトランプを考慮し5年で100億ドル・1.1兆円の投資を予定)

15年の生産能力はトヨタ(元町15万、高岡25万、堤45万、田原40万)、車体(吉原22万)で施設老朽化も言われている。(14年の豊田市の製造品出荷額は13.1兆円でリーマンショックからV字回復した。工場数071047から14860に激減した。)

 世界の拠点でそれぞれ研究開発がされ、最適調達地が最適輸出国に変わるだろう。生産台数はその時の需要と為替相場で決まり、日本もその一つとなる。(豊田市が「マザー工場」でいられるか疑問である。建設中の豊田の研究開発施設が国内生産比率の歯止めになる保証はない。)日本の自動車輸出の中心であった米国や欧州への輸出が減れば、日本の国内生産と輸出(貿易黒字も)は決定的なダメージを受ける。

 部品のモジュール化・共通化で23次の競争は激化する。車の部品は3万点もある。中国企業からの仕入れは、ますます拡大することが予想される。「世界最安値」の中国部品を、トヨタ自身だけでなく下請けメーカーにも使わせて一層のコストダウンを図っていくのが経営者の考えである。

 15年中国の年間生産台数は2450万台で、日本の1000万台弱を大きく上回った。中国は環境問題もあり電気自動車を進める方針である。(トヨタは電気自動車とFCVの2本立てのようである。)

  コメント

 他に国の一般会計は97兆円だが、1300兆円の借金があり財政再建の目処が立っていない。日銀は異常の金融緩和で「デフレ脱却」を口実に、0金利とインフレターゲットの政策を続けている。設備投資や国民の消費は増えず、日本のGDBは480兆円ほどで伸びていない。トヨタの内部留保は(利益剰余金+資本準備金、173月期)18.8兆円に増えた。なお、「内部留保は会社の将来の投資に必要、GMは内部留保が減り倒産」という意見、「株主価値の最大化」で倒産という説(バジュン・チャン「グローバリズムが世界を滅ぼす」)もある。著者は米国の自動車産業の空洞化は自国生産が減ったからとしている。パイは大きくなっても労働者への配分が少ないことも問題である。また、ものづくりは自動車だけでない。農林業の衰退で「都市と農村の共生」はできるのかという視点も大事である。自動車産業の国内と地域の空洞化は崖っぷちであり、政府・自治体がどう向き合うか、市民目線で大いに議論すべき時期である。

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