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私の平和と戦争

2017-12-11 | 気になる本

広岩近広(2016)『わたしの平和と戦争』集英社

 今アベ自公政権が「虚構の多数」を占める中、憲法改悪の動き、北朝鮮のミサイル発射、トランプ大統領の軍事強化とそれを支持するアベ政治、まさに戦争と平和が問われている。この本は07年から著者がインタビューしたものの収録である。平和、憲法、日米同盟、昭和史を考える1冊である。心に留まった個所をメモした。

 はじめにで著者は、ノルウェイの平和学者ヨハン・ガルトゥング氏のインタビューを紹介している。氏は戦争やテロといった直接的暴力のない状態が「消極的平和」で、貧困や差別さらには帝国主義に代表される政治的抑圧といった構造的暴力を排除出来て初めて「積極的平和」になると定義した。安倍首相が「積極的平和主義」を持ち出したときはびっくりした。非戦を掲げる憲法9条を解釈改憲で傷つけ、集団的自衛権の行使を限定容認することで自衛隊に米軍の後方支援するように決めたのである。この安保法制によって日米同盟を強化する、「軍事体制の強化」こそが「積極的平和主義」というのだ。消極的な意味での平和も壊れる。権力者は「平和のための戦争」を主張して国民を戦場に送り込んだ。まずは経済の再生を喧伝し、防衛費を増やす考えは、かっての「富国強兵」に通じる。カントの「永遠平和のために」の理念は世界史的には国際連合を生み、日本では戦争の放棄を掲げる憲法9条に結実している。

 梅原 猛 改憲派は19世紀の国家主義の原理を信じていて、日本を再び19世紀なみの国家主義を目指す国にしようとしている。道徳を教えるのは文学が良い。だいたい日本の政治家に愛国心があるような人は、ほとんどいないでしょう。理想が低くなって、私利私欲にはしっている。平気でウソをつく政治家も多い。

 森村誠一 軍事力はすみやかに権力と化しやすく、想定敵国を設定して緊張を高めます。この想定敵国に勝つためだと吹聴して国民の思想を統一し、さらには表現、言論、集会の自由など基本的人権を侵すのは明らかです。戦争にでもなれば、戦力として国民を徴兵し、軍の補給源にしてしまう。自衛隊を国防軍にすれば、必ずや政治権力と一体となって、国民を食う天敵となる。開戦3点セットは用意された。

 野見山暁治・画家 これからの戦争は目の前に人間がいません。無人機やミサイルのボタンで、大量の殺戮をしあう。人間が喪失した戦争になると、地球は壊滅してしまいます。

 保坂正康 軍事を支えているのが、ナショナリズムや偏狭な愛国心、民族主義、国家主義といった類です。鉄砲を撃つのは最後の段階であって、軍事の根本は思想や制度です。著書『昭和史入門』、『若い人に語る戦争と日本人』

 前田哲夫 著書『日米安保を変える「従属」から「自立」へ』で、「我が国の安全」を武力や軍事同盟で守れば、「隣国」も「我が国の安全」に向かい軍拡となり、「際限のない軍拡競争」というジレンマに陥る。南シナ海が核軍拡の舞台になれば、海の核軍拡競争に拍車がかかり、日本の非核三原則は形骸化する。ソ連解体を受けて誕生したEUは「不戦共同体」となった。

 内田 樹 北朝鮮の弾道ミサイル実験について、ミサイルを撃ち込まれないようにする外交努力をすべきで、不測の事態が起きないようにするのが本来の「国防」である。今の核武装論はクールでリアルな計算から導かれていない。隣国に対する恐怖や不信をヒステリックに叫んでいるだけ。国防論を感情的にやれば、必ず失敗する。そのことを私たちは先の大戦で学んだのではないか。

白井 聡 「積極的平和主義」は米国流の手法で、敵を名指ししたうえで、武力を用いて攻撃し、そうして「自国を守る」。国民を騙し続けてきた、核持ち込み密約、原発事故の後で原子力基本法に「我が国の安全保障に資する」を加えた。米国は衰退しており、日本は収奪の対象になっている。

山室信一・吉野作造賞の『キメラ-満州国の肖像』 「積極的平和主義」の実態は「軍事介入主義」だの中で、第1次大戦後に国際連盟をつくり、不戦条約を締結したにもかかわらず、「満州事変」以後の日本は自国民を保護するために「自衛権」を行使すると主張して、中国に大量の軍隊を送った。満州でソ連軍の参戦がわかっている中、関東軍は開拓移民を見捨て撤退した。「自衛権」、「抑止論」、「防衛装備移転三原則」なども、政治の言葉に隠された本質を見なくてはならない。

 ヨハン・ガルトィング・平和学者 暴力は3つの形態に分類される。①戦争やテロや殺人は直接的暴力、②社会に組み込まれたシステムから来る「恐怖や苦痛が構造的暴力、③文化的暴力。スイスには専守防衛の軍事指針がある。先制攻撃のできる武器を持たない。海上自衛隊は日本のはるかかなたの方に進出している。アメリカの軍事行動に協力している。世界は、日本は平和国家どころかアメリカの従属国家とみている。日本は戦争放棄の憲法9条があるが、消極的平和を謳っているにすぎない

 伊藤 真・弁護士(著書「憲法の力」) ひとたび正式な軍隊を持てば、国防のため、国際貢献のためという名目で軍隊は拡大の一途をとるだろう。当然、年金、医療、地方活性化、災害対策は今以上なくなる

 小森陽一 改憲はアメリカの意向。朝鮮戦争は53年から休戦状態にある。北朝鮮の核開発を問題化し危機状態を作り上げた。北朝鮮を攻撃する場合、イラク戦争時のイギリスの役割を韓国に期待した。だが韓国は同じ民族同士の戦争は避けたい。韓国はアメリカにノーと言える国になった。9条2項が集団的自衛権を認めていない、米軍は集団的自衛権を行使して北朝鮮を攻撃できない。だから9条2項の改悪をもくろんでる。改憲は、戦争する国・アメリカの「押しつけ改憲」なのです。

 吉永小百合 原爆詩を朗読するきっかけは、「夢千代日記」。「娘よここが長崎です」の筒井芳乃さんの作品で、つらさを乗り越えて、戦争や原爆の悲惨さを語り継いでいくことの大切さを訴えています。私たちから次世代へ、とても共感しました。

 

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