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ブラック企業

2014-10-21 | 気になる本

 今野春貴(2012)『ブラック企業-日本を食いつぶす妖怪』文芸新書
はじめにで、「ブラック企業から若者が被害を受けている、とだけ捉えてはいけない」。それは日本の経済・雇用システムを破壊してしまう。パワーハラスメントや長時間労働によって、若者のあいだで鬱病が蔓延すれば、それだけ国の医療費負担は増大する。あるいは、少子化が進展すれば、市場縮小してしまう」。「両親や家族からの相談も多い」として、個人だけの問題でなく社会的問題解決を提起しています。
 第1章で事例があります。「コミュニケーション能力の不足」、教育という内容の「退職強要」を受ける。ハラスメントに対して「自分が悪い」という状況を作りだす。Cさんの場合は一日残業が平均5時間で、叱責も続いた。「ハラスメントに共通するのは、努力しても何をしても罵られ」、人格を否定される。
 第3章ブラック企業の見分け方では、固定残業代、定額(定率)残業代の相談が多い。パターン4では、「訴訟リスクを避ける手口が高度化している。それが戦略的パワハラだ」。「精神的に追い詰められた労働者が自ら辞めることを待つ」というものです。パターン5では、みなし残業や「労働者ではない」いわゆる「名ばかり管理職」である。管理職ならば労働時間が自分で決められることがポイントになります。パターン6では、36協定をあげています。通常延長する労働時間の他に「特別条項」を付けて、意味をなさなくする方法です。厚労省の「過労死ライン」によると、月に80時間以上の残業をしていると、必要な睡眠を確保できなくなる。 
 第4章ブラック企業の辞めさせる技術では、労働者の退職、辞職、解雇の3つのパターンを説明しています。退職勧奨あるいは退職願いで、双方が合意すれば円満退職になります。ただ、自己都合か会社都合かの問題があります。本人が申し出ても、長時間残業、退職勧奨など理由があれば、ハローワークで会社都合にしてもらえます。パワハラによる自己都合にされる場合、退職強要とされ損害賠償の請求も可能である。辞職、解雇は紛争がらみで、労働契約をどちらかが一方的に解除するものです。普通辞職は2週間前に申し出れば問題ないが、解雇は法的に強い制限がある。問題解決には時間がかかり、本人の健康を害してはどうしようもない。著者は、「労働組合が職場の内部のさまざまな苦情に本格的に対応するしか方法がない」としています。
 第5章ブラック企業から身を守るでは、うつ病になると働き続けられなくなる。結婚など私生活のライフプランも打ち砕かれてしまう。耐えるより辞めてしまった方が合理的であるという考えである。もう一つの選択肢が有り、ブラック企業と争う道である。第1は、「自分が悪いと思わない」ことである。辞めさせるのが相手の戦略である。第2に、「会社のいうことは疑ってかかれ」、会社を信用するだけの「お人好し」では生き残れない。詳しい話は本書の後半に。第3に、「簡単に諦めない」で、権利の行使、正義の主張は諦めないこと。ただし、協力者がいなく争うことが難しいならば、辞めることも選択肢である。うつ病にならないこと、健康を守ることが最善である。第4の考えは、「労働法を活用せよ」で、ルール、マナーを守る。労働者が違法行為を我慢することは社会的合理性がまったくない。第5は、「専門職を活用せよ」で、組合、弁護士、労働基準監督署、労働局、NPOなどである。さらには文献やネットの活用、知人、友人、先輩などから情報収集や相談が必要です。場合によっては酒に頼らないストレス解消法も必要です。争い方は色々あり、人によって対応も違います。体調管理、経過記録をしっかりとって、適切な病院へ行き場合によっては休暇、休職も必要です。後半のブラック企業を作った社会的背景は次回にします。(「である」と「です」が混在していますが、著書は「である」ですが、「です」は私のコメントが入っています。詳しくは本をご覧ください。)写真はオーストリアの野草です。
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
求職 (ノブ)
2014-10-22 23:20:34
下から5行目は「休職」では?
大事な内容が書かれていると思う。
返信する
休職 (amenity)
2014-10-23 21:01:41
さすが元新聞記者ですね。今、別のレポートを書いているから、近い内に後半をアップします。
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