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山田「債務大国日本の危機」その3

2024-04-28 | 気になる本

山田博文「国債ビジネスと債務大国日本の危機」

第2章 異次元緩和とは

 現在日本を崖っぷちまで追い詰めたのは、第二次安倍政権以来のアベノミクスと異次元金融緩和政策と言える。

 その特徴は、第一にメディアを利用し強いメッセージを発信し、「口先介入」を先行させたことである。「2年で2倍の資金供給」「国際買い入れで月7兆円」といった強いメッセージは、内外の投資家の関心を目覚めさせた。第二に、実体経済の成長を伴わない過剰なマネーの供給は金融資産や不動産関係のバブルを膨張させた。第三に、新規国債の7割ほどが日銀によって引受けられ、国債発行の歯止めは失われた。中央銀行は物価の番人として社会を混乱させるインフレ物価高を抑制する役割が逆行した。

 賃金は長期で停滞し、国民の可処分所得が減退している近年、物価が上昇すれば国民生活は困窮化する。2%の物価上昇と10パーセントの消費税増税が重くのしかかり、景気は冷え込む。

 日銀から銀行に供給された大量のマネーが向かった先は、リスクフリーの安全な金融資産の国債であり、銀行は貸出よりも政府保障の国際ビジネスにシフトした。こうして国債増発のメカニズムがフル稼働し始め、国債発行はその歯止めを失った。アベノミクスの二本目の矢は、40年間で200兆円の大型公共事業を実施する財政出動だったが、その財源は国債の増発に依存した。膨張し続ける政府債務の返済をどうするか、経済が成長すれば税収が増えるといった、実現しそうにない回答しか用意してなかった。経済は成長せず国債だけが累増した。

 国債バブルが崩壊し、中央銀行の信用が毀損し、国際社会から円の信認が失われ、円不安と円安の危機が進行し、円が暴落する。民間金融機関の場合は、銀行や生保・損保の危機が発生する。

 日銀やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人の公的資金)を株式市場に投入し、株高を演出してきた。グローバルに徘徊している投資マネーを、国内株式市場に誘い込んだ。ニューヨーク証券取引所など海外でのアベノミクスの売り込み営業は、目先の早い海外投資家を日本株投資に駆り立てた。株価下落を食い止めたのは日銀の株式ETF(株価指数連動型上場投資信託)の買手とGPIFによる大規模の株式投資であった。ETFを政策目的で買い入れるのは、日本だけである。(新自由主義・市場原理のまやかし)

 アベノミクスと異次元金融緩和政策の罪について4点。第1の罪は、中央銀行日銀の金融政策の独立を奪った罪である。第2の罪は、日銀信用動員して国債を増発する禁じ手を繰り返し、国債バブルを膨張させ政府保障の国際ビジネスを活性化させる一方、1000兆円を超える政府債務を累積させ、日本国民に深刻な1億総債務者に転落させた罪である。第3の罪は日銀信用や年金積立金を株式市場に動員し、官製の株式バブルを発生させ、国民の間での資産格差を拡大して来た事である。アベノミクスが日本を貧困格差大国に転落された罪である。第4の罪は、「資源なき貿易立国」日本にとって、現在と21世紀の最大の貿易相手国である中国や韓国など近隣のアジア諸国との軋轢を引き起こし、世界のGDP合計1000兆ドル33%を占め北米経済圏やEU経済圏を追い抜いて世界最大の経済圏になり、日本の貿易の総額53%を占めるアジア経済圏の経済成長の成果を日本経済に取り込めなくしている罪である。菅・岸田内閣にも引き継がれている。

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