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時間かせぎの資本主義

2019-03-02 | 気になる本

ヴォルフガング・シュトレーク・鈴木直訳(2016)『時間かせぎの資本主義 いつまで危機を先送りできるか』株式会社みすず書房

 マクロ的な経済理論の書であり難解であるが、資本主義は成長が行き詰まり危機的状態にあると思う。まさに問題を先送りしそのツケは大きく跳ね返ると思っているが、誰もその問題に触れたくないようだ。主にEUの事例であるが、借金大国、日銀の異次元の金融緩和、虚偽のアベ政治、不正の企業社会の蔓延など、経済破綻は「日本を取り戻す」戦争前夜にならなければ良いが。

 背表紙にこの本の要旨・現代資本主義論が書いてある。

 「資本主義は危機を『時間かせぎ』によって先送りしてきた。

 70年代、高度成長の終わりとともに、成長を前提とした完全雇用と賃上げは危機を迎えていた。そこで各国はインフレによる時間かせぎ、つまり名目成長に実質成長を肩代わりさせて当面の危機を先送りした。

 80年代、新自由主義が本格的に始動する。各国は規制緩和と民営化に乗り出した。国の負担は減り、資本の収益は上がる。双方にとって好都合だった。だがそれは巨額の債務となって戻ってきた。債務解消のために増税や緊縮を行えば、景気後退につながりかねない。危機はリーマンショックで一つの頂点を迎えた。

 いま世界は、銀行危機、国家債務危機、実態経済危機という3つの危機の渦中にある。いまEUは最大の危機を迎えている。

 資本主義は危機の先送りの過程で、民主主義を解体していった。危機はいつまで先送りできるのか、民主主義が資本主義をコントロールすることは可能か。ヨーロッパとアメリカで大反響を呼び起こした」。

「租税国家から債務国家」、p107「税率の引き下げ競争にさらし、世界中の政府に法人税の最高税率の引き下げを促した」。p116「債務国家への移行過程では、もう一つの機能不全がある。債務国家が及ぼす分配政策上の影響が公共的議論の中ではほとんど完全に無視された」。

訳者解説から、本書はリーマンショックから3つの危機を相関的危機として記述している。4つの手法の時間稼ぎで、①70年代のインフレによる時間かせぎ、②80年代のインフレ抑止策で、新自由主義のスタートである。③93年のクリントンから社会保障の削減、増税と緊縮で国家債務の家計債務への付け替えである。サブプライムローンの破綻で08年のリーマンショックとなった。④各国の中央銀行は0金利、国債購入、株購入である。戦後復興期のケインズ的な介入資本主義が、新自由主義的資本主義を経てハイエク的な市場主義的へと転換してきた過去数十年間の歴史に、現代資本主義と民主主義の源泉を見ている。

現代資本主義論は日本で受けるであろうか?私に本書は理解できない面もあるが、論理的に正しいと支持する。日本の国家債務は1000兆円を超えている。しわ寄せは福祉に来る。地方自治体にくる。一方で軍事費の増大、大型開発である。日銀の異次元緩和はいつまで持つか?オリンピックまでであろう。国民は好景気を実感できない。アベ内閣はデーター偽装で取り繕っている。沖縄の辺野古基地建設反対の県民投票の結果は無視する。マスコミは取り込み、東京新聞記者の質問は無視しようとする。日本の民主主義は壊れつつある。するどい分析した理論であるが、どう対応すべきか指標が欲しいところであるが、3つの危機と時間稼ぎを多くの人が認識できるかどうかである。また、グローバル資本主義のもと、日本の場合はアメリカに従属する政治的自立がある。

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