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山田「債権大国日本の危機」⑤

2024-04-30 | 気になる本

第4章

現在日本は、約1000兆円の国債発行残高を抱え込む、世界トップレベルの「政府債務大国」に他ならない。戦後の大規模公共事業や不況対策、バブル崩壊後の不良債権対策、直近のコロナ禍対策などの財政資金が、日本銀行に支援された国債の発行により調達されてきた。実体経済の長期的な低成長下で、資本蓄積の舞台が金融・証券市場にシフトするようになると、増発される国債は内外の国債投資家や金融機関によって、有力なビジネスチャンスを提供してきた。

国債増発の仕組みをフル回転させたのが、第二次安倍政権下の黒田日銀の異次元金融緩和政策である。(円安・物価高の今、黒田氏が春の叙勲とはいかがなものか?)。国債発行による財政資金調達を禁じた財政法第五条を空文化させ、国債は無制限に発行されてきた。これは日銀信用に依存した財政資金調達=財政ファイナンスを意味する国債の発行残高は2023年度末見込みで1068兆円にまで膨張し国債を大量に買い入れてきた日銀は55% 593兆円を保有する。

戦前まで、政府債務を高水準に押し上げる最大の要因は戦争であり、武器の購入などの軍備拡張、植民地経営。一時賜金・軍人恩給などの軍事費調達であった。戦後は平和憲法の下で戦争が禁止され軍事国債の発行は無い。それに代わって増発したのは、公共事業のための建設国債と財源補填のための赤字国債であり、終戦直後の対GDP比はもとより世界のトップレベルまで政府債務を積み上げてしまった。

 日本の政府債務の対GDP比は、主要国と比較しても261%に達し、2回の財政破綻に陥っ

た近年のギリシャの177%より高い。なぜ膨張したのか、第一に国債市場が現代日本の資本蓄積の主要舞台の一つであること。第二に日銀信用に支えられて国債が増発されたことである。ブレーキがなぜかからなかったのか?日銀による国債の爆買い(市中銀行経由)で、国債金利が0%台に定位固定化(YCC)されていること(2024解除)、1000兆円の発行残高にしては元本償還費を含む国債費は少額でブレーキがかかっていない。その秘密は世界でも例のない政府債務の返済を60年後まで作送りする「60年償還ルール」を採用しているからである。

 政府債務に国民の債権が向き合っているので、債務関係は互いに相殺されるとの一般論がある。国民全体が債権者ではなく、ごく限られた富裕層や内外の国債投資家だけが政府の債権者=国債保有者である。一般国民は消費税などを負担し、政府の債権者に国債の利子や元本償還のための支払いを、余儀なくされている。現代日本は国債・株式・預貯金などの金融資産を持つ者と持たざる者との資産格差が、拡大した「貧困・格差大国」に転落してしまった。将来世代に過大な税負担を強要し、国民生活を貧困に陥れるバブル経済の崩壊後長期にわたって、法人税率は1984年の43.3%をピークに現在の23.2%へと大幅に減税されてきた。その上超低金利政策下で、企業は借入金利の低下によって金利コストを削減するが、国民は預貯金金利の低下によって利子所得を失ってきた。(現在、1ドルが160円に達した。米はインフレで金利4.21%、日本はマイナスを解除しただけで、普通預金は0.02%である)

 この間の法人減税や各種の特別減税措置、所得税相続税の最高税率の引き下げなど新自由主義的な大企業金持ち減税を続けてきたことで失われた税制と税収を復活させ、またグローバル企業が全世界で獲得した利益を合算した課税、グローバルな金融取引への課税、デジタル課税、炭素課税などの新たな税制と税収を実現することで、財政破綻を回避する時代が訪れている。法人税や富裕層への増税に踏み出した欧米のように、国民負担でなく応能負担で得た税収を政府債務の返済に振り向け、また過大なリスク資産を抱え込んだ日銀のバランスシートの改善に振り向けることで、迫りくる財政破綻と円暴落の異次元リスクを、回避する大事業こそ現代日本の火急の課題である。(大企業などからの政治献金、パーティ券購入で裏金、「脱税」の自民党政権では実現できない。円安・物価高、金権腐敗政治は、市民党野党が共通政策を作ることである。その方向が3補選で示された。)

 財政政策でインフレを起こそうとした当時の安倍政権が、注目したのが「シムズ理論」でありヘリコプターマネーであった。日銀が供給するマネーは民間銀行の保有国債の日銀買い入れで、国債という金融資産を日銀が受け取る見返りにマネー供給しているのであって、現金をバラ撒いているのではない。実体経済の成長が伴わない状態で、国民がヘリコプターマネーを受け取り使えるマネーの量が2倍に増えたら、マネーの価値は半減する。ヘリコプターマネーとは、国民に現金をばらまいているように見えるが、その本質は政府が強制的にインフレを起こすことによって国民の預貯金を巧妙に引き出し、政府債務を解消する政策に他ならない。

 戦後日本のインフレ収束は、預金封鎖と「タケノコ生活」で、(デノミ新円切り替え、参考 河村「日本銀行 我が国に迫る危機」6章、7章)、インフレによる債務者利得は政府と大企業である。戦後のハイパーインフレはその戦略はインフレである。(検証*ドッジライン及び農地改革について?)

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