全員が思い出を共有した夏。やばいよリライト。
映画はたいてい映画館へ一人で観に行くものと決めているが、ときどき無性に誰かと語りたくなる作品に出会うことがある。
謎解きモノはまさにそのジャンルであり、分かったつもりになっていながら、後で更に驚かされるというのもよくある話だ。
本作品の主人公は小説家の美雪。彼女は高校3年の夏に転校生の保彦と出会う。保彦は自分を未来人だと言い、これから二人で過ごす夏の出来事を小説に書き残してほしいと告げる。
保彦からもらったカプセル薬で一瞬飛んだ未来で会った10年後の自分からも完成した小説を見せられた美雪は、保彦と別れた後に努力を積み重ねて、ついに「少女は時を翔けた」と題した小説の発刊まで漕ぎつける。
しかしその時、彼女を待っていたのは、10年前に見たものとは違う風景の未来だった。
タイムリープを題材にした映画は数多あるが、おそらくそのルーツとも言える作品が「時をかける少女」だ。筒井康隆の原作もベストセラーならば、映像作品も実写からアニメから何度にも渡って作られるなど、国民的SFと言って過言ではない作品であるが、その中でも多くの人の心に強く残っているのが大林宣彦監督の1983年版「時をかける少女」であろう。
ぼくはそこまでディープなファンではなかったが、当時の角川映画の隆盛を知らないわけはなく、本作が尾道を舞台にしていること、担任の教師が尾美としのりであることといった、分かりやすいオマージュにはすぐに反応できた(ラベンダーの香りってのもあったな)。
不思議な雰囲気をまとった男子クラスメイトという設定も「時かけ」リスペクトと考えられる。たどたどしさが漂う保彦役の阿達慶の演技も世界観を保つのに一役買っている。
美雪を演じるのは池田エライザ。洗練された外見が周りの同級生から浮いた存在であることを感じさせる。美雪は、保彦の願いを叶えるために久しぶりに地元へ戻ってくるが、描いたシナリオ通りに進まない代わりに、なぜかことあるごとに同級生たちに絡まれる。
鑑賞後に予告篇を見直すと、実は結構この中でネタバレしている。保彦はタイムリープから抜け出せずに困っていて、美雪のクラスメイトにも同じ体験を仕掛けていたのである。
ここで予告篇の主題とタイトルが重なる。この物語を「リライト」したのは誰だ?
ここまで書いて、予告をじっくり見過ぎないで良かったと思う。だって、「怪しいのは誰だ?」となった瞬間に配役で答を想像できてしまうではないか。
何もほとんど知らない状態で観た本篇はおもしろかった。
なぜ10年前に見た未来と違う未来なのか?という疑問に答える謎解きと、では未来を書き換えたのは誰だ?という二段構えの謎解きをじっくりと味わうことができたからだ。
どちらの謎解きも、前半で分かりやすい引っ掛かりポイントが示されていた点が親切で良かった。
美雪の視点でストーリーを追いかけていた前半は、周りの同級生みんながうざったく怪しく思えたものが、謎解きが進むにつれてほぐれていく様子も不思議と心地良かった。
2番めの謎解きで美雪はあるクラスメイトと対峙し、この話のすべてを知るところとなる。
東京へ帰る道すがらに寄った書店で、不意に保彦の声が聞こえる。声の方に視線を向ける美雪。そこにいたのは保彦なのか。そして彼は美雪に気が付いたのか。ラストの描写はそれぞれの感情がいかようにも捉えられて味わい深い。
保彦にとって美雪は30数名のうちの一人に過ぎないのか。それとも特別な思い出を共有したパートナーなのか。受け取り方は人によって違うだろうし、そのときの感情によっても変わってくるのかもしれない。
(80点)
映画はたいてい映画館へ一人で観に行くものと決めているが、ときどき無性に誰かと語りたくなる作品に出会うことがある。
謎解きモノはまさにそのジャンルであり、分かったつもりになっていながら、後で更に驚かされるというのもよくある話だ。
本作品の主人公は小説家の美雪。彼女は高校3年の夏に転校生の保彦と出会う。保彦は自分を未来人だと言い、これから二人で過ごす夏の出来事を小説に書き残してほしいと告げる。
保彦からもらったカプセル薬で一瞬飛んだ未来で会った10年後の自分からも完成した小説を見せられた美雪は、保彦と別れた後に努力を積み重ねて、ついに「少女は時を翔けた」と題した小説の発刊まで漕ぎつける。
しかしその時、彼女を待っていたのは、10年前に見たものとは違う風景の未来だった。
タイムリープを題材にした映画は数多あるが、おそらくそのルーツとも言える作品が「時をかける少女」だ。筒井康隆の原作もベストセラーならば、映像作品も実写からアニメから何度にも渡って作られるなど、国民的SFと言って過言ではない作品であるが、その中でも多くの人の心に強く残っているのが大林宣彦監督の1983年版「時をかける少女」であろう。
ぼくはそこまでディープなファンではなかったが、当時の角川映画の隆盛を知らないわけはなく、本作が尾道を舞台にしていること、担任の教師が尾美としのりであることといった、分かりやすいオマージュにはすぐに反応できた(ラベンダーの香りってのもあったな)。
不思議な雰囲気をまとった男子クラスメイトという設定も「時かけ」リスペクトと考えられる。たどたどしさが漂う保彦役の阿達慶の演技も世界観を保つのに一役買っている。
美雪を演じるのは池田エライザ。洗練された外見が周りの同級生から浮いた存在であることを感じさせる。美雪は、保彦の願いを叶えるために久しぶりに地元へ戻ってくるが、描いたシナリオ通りに進まない代わりに、なぜかことあるごとに同級生たちに絡まれる。
鑑賞後に予告篇を見直すと、実は結構この中でネタバレしている。保彦はタイムリープから抜け出せずに困っていて、美雪のクラスメイトにも同じ体験を仕掛けていたのである。
ここで予告篇の主題とタイトルが重なる。この物語を「リライト」したのは誰だ?
ここまで書いて、予告をじっくり見過ぎないで良かったと思う。だって、「怪しいのは誰だ?」となった瞬間に配役で答を想像できてしまうではないか。
何もほとんど知らない状態で観た本篇はおもしろかった。
なぜ10年前に見た未来と違う未来なのか?という疑問に答える謎解きと、では未来を書き換えたのは誰だ?という二段構えの謎解きをじっくりと味わうことができたからだ。
どちらの謎解きも、前半で分かりやすい引っ掛かりポイントが示されていた点が親切で良かった。
美雪の視点でストーリーを追いかけていた前半は、周りの同級生みんながうざったく怪しく思えたものが、謎解きが進むにつれてほぐれていく様子も不思議と心地良かった。
2番めの謎解きで美雪はあるクラスメイトと対峙し、この話のすべてを知るところとなる。
東京へ帰る道すがらに寄った書店で、不意に保彦の声が聞こえる。声の方に視線を向ける美雪。そこにいたのは保彦なのか。そして彼は美雪に気が付いたのか。ラストの描写はそれぞれの感情がいかようにも捉えられて味わい深い。
保彦にとって美雪は30数名のうちの一人に過ぎないのか。それとも特別な思い出を共有したパートナーなのか。受け取り方は人によって違うだろうし、そのときの感情によっても変わってくるのかもしれない。
(80点)
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