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Con Gas, Sin Hielo

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「ストレンジダーリン」

2025年07月13日 19時13分54秒 | 映画(2025)
つかみ、伏線貼り、急展開、終わり方のすべてが理想形。


実は本作の存在を知ったのは、つい3~4日前のことだった。ラジオの映画紹介をきっかけに、ネットのニュースなどでユニークなスリラー映画との評判を次々に目にして、急遽観に行くことを決めたのであった。

前情報は最小限に抑えた。知っていたのは、逃げる女と追う男の話であり、全部で6章で構成されるが映画は第3章から始まるということくらい。

冒頭、モノクロの画面で女が尋ねる。「あなたはシリアルキラーなの?」。直後に鬼気迫る表情で誰かの首を絞めるような男の姿が映る。場面は変わり、草っぱらを怯えた顔で走ってくる女。赤いナース服のような着衣で、首筋には大きな傷ができている。

そして前情報どおり第3章がスタート。何の解説もなく、先ほどの赤いナース服の女が車を猛スピードで走らせている。その後ろからそれ以上のスピードで追いかける男。女の車が射程に入ると、男は車を止めて一発発射。車で逃げることを断念した女は、森の中へと駆け込んでいく。この後、冒頭の草っぱらの場面へと繋がっていく。

6章の構成は、3→5→1→4→2→6と続く。3章と第5章はいずれも、男が女を追いかけるスピード感と緊迫感がMAXのチャプターであり、それを最初に配置することにより、観る側の目と心を鷲掴みにすることに成功している。

しかしよく考えれば、アタマにインパクトのある場面を持ってくるのは、映画の常とう手段ということに改めて気付く。時間軸を遡るのもよくあることで、最近では「罪人たち」も、夜の闘いが終わった次の日の朝の情景を映してから本題に入っていた。

わざわざ章立てをしているところが本作のミソであるが、とにかく二人の表情が対照的で恐怖感が半端なく押し寄せてくる。そして5章の終わり、民家に隠れていた女が男に見つかったところで話は第1章のなれそめに移っていく。

1章で描かれるのは二人の出会いである。モーテルの前に停まっている車には、夜の酒場で出会って意気投合した二人。男は一夜の快楽を得るのが目的なのだろう。丁寧な言葉遣いと振る舞いで女を部屋に連れ込もうとしている。女は酒に酔いながらも頭の奥では冷静さを保っており、冒頭の「シリアルキラーなの?」の台詞もここで登場する。

結果的に部屋へ入る二人。いつ男の本性が現れるのかハラハラする展開が続くが、事実を知らない女は事もあろうに男をもてあそぶ素振りを見せる。しかし女は突然、男の顔を見てはっとした表情をする。1章はここまでだ。

4コマまんがの基本形は、起承転結である。しかし前述のとおり、映画はエンターテインメントであるから、特に「起」と「転」は大きく構えて観る側を驚かせなくてはならない。

本作はその点が非常に巧妙に練られている。3章と5章の間にある第4章で、何の疑いもなく見てきた立ち位置ががらっとひっくり返されるのである。中には、いち早く気付いた人もいるかもしれない。1章を注意深く観ていれば気付けたと言われればそのとおり。ただ、ここは騙される方が快感なのである。「シックスセンス」のように。

第2章は、全体の中で言えば前半のクライマックスである。3章のカーチェイスに繋がる二人の決定的な対峙までが描かれる一連の流れで、観る側はようやく物語の全体像を理解することができる。

そしてすべてに決着がつく第6章。最後にシリアルキラー"EL"の本性が牙をむく恐ろしい場面が待っていた。"EL"の中には悪魔が棲んでいて、それが表に現れるときに人を殺すのである。人でいるときには愛情を持って接した愛しい人"darling"を敢えて傷つける。それが"EL"の実像であった。

情を持ったら最後、"EL"の餌食になる。ラストは意外ながらも穏やかな展開となり、"EL"の表情の変化を長回しで映しながら画面がモノクロに戻っていく。そういえばはじめはそうだった。

章立ての分かりやすさ、人物設定の巧みさ、展開の練り上げ方、最初から最後まで作り手に気持ち良く転がされた97分であった。

(95点)
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