原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

正しい“地域観光起こし”のあり方

2013年05月22日 | 旅行・グルメ
 (冒頭からクイズですが、この写真の被写体は一体何でしょう?  正解者には原左都子から粗品を贈呈しま~す!、と言うのはほんの冗談ですよ~~。


 上記クイズの解答は後回しにして、本日(5月22日)NHKドラマ「あまちゃん」で放送された内容の一場面を取り上げる事にしよう。

 どうやらこのドラマは、“地域観光起こし”も一つの大きなテーマであるようだ。
 観光資源が「海」のみに限定されている北三陸の過疎地に於いて、何とか観光客を招き入れるべく「北鉄」なる地元の鉄道や観光協会があの手この手と“下手な”(失礼!)方策をドラマ内で打ち立て続けている。

 本日の放送では、市長の決断によりついに「北鉄」が廃線化されバス運行に取って代わろうとの運命を突きつけられた中、またもや登場人物内という狭い空間での“下手な観光起こし案”が持ち上がった。
 それは「お座敷列車」なのであるが、現在現実的に地元の列車利用“観光起こし”を実施している地方自治体観光現場が多々あると私は認識している。 (飲兵衛の私など、一度そういう列車に乗って酒盛りでもしながら風景を眺めつつの旅を楽しみたいものだ。
 ところがNHK「あまちゃん」ドラマ内では、北三陸の美少女として既にネット上でブレイクしている主人公のアキとその友人ユイを「お座敷列車」に乗せて、観光客のお相手をさせると言うのだ。

 ちょっと待ってよ! である。
 ドラマのストーリー展開上はそのシナリオで仕方がないとも思いつつ、ド素人の高校生ギャルに「お座敷列車」に乗り込まれる事など観光客側としては迷惑以外の何ものでもない。  しかも、主人公アキのとんでもなくド下手な歌も聞かされると言うではないか?!?  そんな「お座敷列車」に誰も乗る訳ないじゃんねえ……
 などとアッと呆れていられるのは、ドラマと言う「架空世界」だけにして欲しいものだ。


 ところがどっこい、実際上日本全国各地の何処の地方へ旅に出ても、上記ドラマの域を抜け出ていない“地域観光起こし”現場に遭遇するものである。
 結局国内の何処も観光開発現場人材の発想が陳腐過ぎる故か、全国津々浦々で同じような稚拙な“観光起こし”が実施されている寂しい現状であろう。 
 特に悲惨と感じるのは、全国各地で(例えば海なら海グッズ、山なら山グッズ等々)のお土産物が“公然”と販売されている事実である。 大手メーカーが大量生産で作成し全国の観光地にばら撒き、薄利多売方式で販売して結果として暴利をむさぼっている現状が浮き彫りにされるというものだ。
 NHK「あまちゃん」が取り上げた「ご当地美女コンテスト」なども今時全国何処の観光地でも実施されているが、(我がバックナンバーで既に記述した通り)その手の女性が美女であったためしがない。  この種の陳腐な企画を喜ぶのは“美女”として立候補する女性本人と一部の特殊“おたく男性”のみであり、何ともお粗末な“地域起こし”としか言いようがない。

 手厳しい私論が続いたが、そんな稚拙かつ陳腐な企画であろうと、それでも満足する観光客も存在するのかもしれないのか???


 ここで、私が今年3月に郷里へ帰省した際に訪ねた地に於いて経験した我が記憶に残る「旅物語」を、2013年3月バックナンバー「うみがめと共生するのどかな海の町」と題して公開しているため、その一部を振り返りつつ紹介しよう。

 郷里帰省2日目の朝、JR阿南駅より鈍行便を利用して、NHK連続テレビ小説「ウエルかめ」の舞台となった徳島県美波町のJR日和佐駅へ向かった。 徳島生まれの私にとっても、県南地方へ旅をするのは今回が人生3度目位である。 目指す日和佐駅には40分程の短時間であっと言う間に着いた感覚だ。
 JR日和佐駅にはコインロッカーはなく、駅内にある観光案内所に旅行鞄を預けた。 そして有難い事に、おそらく美波町が制作したと思しき地図ももらって、娘と共に美波町の徒歩旅に出た。 JR日和佐駅前からまっすぐ日和佐図書資料館を左側に見つつ海方面へ向かうと、その岸壁に漁船と思しき船が多数停留している。
 その道を海に向かって横断しようとした時、娘が海風に吹かれてくるくる回る“珍しいお土産もの”を発見した。
 これ、何と表現しようか?  私にとっても初めて目にするお土産品である。 原左都子名付けて「ビール缶風車(かざぐるま)提燈」!  今時お土産品も全国区になり日本の何処に旅しても同じ物を目にする機会が多い中、この「ビール缶風車提燈」に関しては徳島県南のこの地で初めて目にした。  娘と共に“手作り風”のそのカラフルな提燈を眺めていると、店内よりお爺さんと叔父さん風の二人の男性が出てきて我々にそのお土産の説明をして下さる。  「これは美波町より指示されて“地域観光起こし”のために我々が提案して創作した土産品です。 廃品のビール缶から苦労して作ったのですよ!」  応えて原左都子曰く「素晴らしい出来栄えですが、どなたかが芸術家でいらっしゃるのですか!?」  叔父さんが応えて曰く「そんなことはないですが、造るのに結構苦労しました」……
 (そうだろうな~~)と重々納得しつつそのお土産を買い求めた後、叔父さん風の男性の「海が美しい!」とのアドバイスにより、我々はその後大浜海岸へと向かった。  さすがに地元の人のアドバイスは正しい! 大浜海岸の3月の海の色は「青」だった。 私が過去に訪れた沖縄の海も「真っ青」だったが、それに次ぐ程の青色の海を見るのは都会に住む我々親子にとっては久々の感激であった。
 (以上、原左都子エッセイ集2013年3月「旅行」カテゴリーより一部を引用)

 しかも徳島県美波町の叔父さん達は、我々がその後NHK「ウエルかめ」で取り上げられた“海がめ博物館”へ行きたい意向を伝えると、その道程をご丁寧に説明して下さったのに加えて、上記「お土産」が荷物になるだろうから帰り道まで預かって置くとも言って下さるのだ。  この心温まる対応に感激させて頂きつつ「いえ、軽いですので持参します」と応えた私である… 

 
 “地域観光起こし”という全国各地の地方自治体がその財源確保故に切羽詰っている課題に関して、申し訳ないが何が正解なのかを原左都子が結論付ける立場には一切ない。

 そんな無力の私ではあるが、徳島県美波町「日和佐駅」に程近い海に面した小さな街で買い求めた(冒頭写真の)手作り品を、現在我が家の南側の窓に吊り下げている。
 新緑5月のそよ風に揺られて、都心の我が家の上層階住居でからからと美しい音色を刻みつつくるくる回る手作り品を見るにつけ、美波町において親切に対応して下さった叔父さん達と共に「青い」大浜海岸を思い起こすのだ。
 旅の価値とは、それこそが神髄なのではなかろうか……

 本エッセイの最後に、冒頭写真の被写体が何であるかに関する解答を発表しよう。

 その正解とは 「名無し」 である。
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