原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

イージー・マネーで世を撹乱した“イージー・アベノミクス”

2013年05月24日 | 時事論評
 つい先だって知人と談話した際に、日銀新総裁黒田氏に関する話題が出た。

 黒田氏ご本人には大変失礼であることは承知の上だが、知人曰く「黒田総裁って、単に馬鹿じゃなかろうか?」 
 そこまで言うか?とは思いつつ、内心(よくぞ言ってくれた!)である。

 日銀新総裁黒田氏に関して「原左都子エッセイ集」にて取り上げるのは今回が2度目である。
 比較的最近の3月28日バックナンバー 「日銀新総裁黒田氏就任で庶民は微笑めるか?」 に於いて、前日銀総裁白川氏と比較する形で私論を展開している。 その中で、原左都子自身もアベノミクスに操られるままに「デフレ脱却政策」を唱える黒田氏を懐疑的に捉えた私論を展開しているため、以下にその一部を振り返らせていただこう。

 新聞報道によると、3月21日に日銀新総裁に就任した黒田東彦氏とはどうやら“話し好き”であるらしい。 黒田氏就任に先立ち退任に追い込まれた前日銀総裁の白川方明氏など、対照的な人物のようだった記憶がある。 日銀総裁たるもの口数多く喋ってりゃ一国の金融政策が何とかなるのか? あるいは何も言わずに黙ってりゃ済むものなのか??
 朝日新聞3月22日「ひと」欄の記事によると、新日銀総裁の黒田氏は「話し出すととまらない」と周囲から言われる程の話し好きであるらしい。 3月21日、2人の副総裁と共に臨んだ就任会見に於いても金融政策への自らの考えをとうとうと語り、1時間45分に及んだ。 物価も給料も上がらない「デフレ」退治の請負人として、第31代日銀総裁に就任した黒田氏は「やれることは何でもやる」と意気込む。 氏は日銀への不信感と共に金融政策に関心を持ち、02年には財務官としては異例の「デフレ脱却目標」を日銀に提案した。
 原左都子の私論だが、そんな黒田氏を“アベノミクス”を掲げる安倍政権が、白川氏を退任に追い込んででも政権下の日銀総裁に指名しないはずもなかった。 金融引き締め主導の白川氏など、安倍政権にとっては“およびではない”存在だった。 これをとっとと切り捨てるその強引な手法には呆れるばかりである。 これが長い目で見て吉と出るのか凶と出るのか、未だ国民から票を集めたばかりとも言える現時点に於いて、“アベノミクス”の将来性は多くの危険性を孕んでいると捉えるべきであろう。
 安倍政権は、この春労働界に“ボーナス満額回答”をももたらすに至った。 ところがこの“ボーナス満額回答”とは自動車・重工等の一部の大企業に限られている。 すなわちこの恩恵を賜れるのは庶民のごく一部である。 電機業界の中には経営難により夏のボーナスゼロ回答をしている企業もある。 円安や株高傾向が今後如何ほどの期間持続可能かに関しても、不確実性が高いと考えるべきではなかろうか。 
 安倍内閣はせっかく民主党から政権を脱却し与党として返り咲いたにもかかわらず、どうも金融の元締めである中央銀行改革や、経済主体である大企業にばかり視野を向けるとの姿勢において、昔の自民党体質から何らの変貌も遂げていない感覚を一庶民として抱かされる。
 創業以来130年の歴史を誇る我が国の中央銀行の長たる者が、時代の政権政策に操られるがままに「金融緩和」にばかり視野を狭める事態とは如何なものか? ここは自分の主張を公に話すことばかりに突進せず少し寡黙な時間も持ち、庶民の立場もわきまえた「脱・デフレ論」を展開することに期待申し上げたいものだ。
 (以上、「原左都子エッセイ集」3月バックナンバーより一部を引用。)


 冒頭の知人との会話に戻るが、知人の感想としては前白川総裁の方がよほど日銀総裁としての力量があったとのご意見だ。
 対照的な両人であるが、原左都子の私論としてはどっちもどっちと判断した上で、黒田氏にはアベノミクス迎合視点しかない事は“火を見るよりも明らか”である。
 特に最近メディアで見聞する“長期金利急騰抑制策”に関しての黒田氏の記者会見対応振りには辟易とさせられていた。 苦し紛れに(気持ち悪くも)自分のほっぺを押さえたりしつつ(そんな影像に黒田氏の自信の無さを垣間見たりもする意地悪な私だが)相変わらずメディアを通して多言を吐く黒田氏を見るにつけ、もっと日銀総裁たる理念の下に論理的な解答ができないものか!?と苛々させられていた。
 そうしたところ原左都子の予想よりずっと早く、昨日(5月23日)東証株式市場が久々に大暴落した。 
 1143円安とは、何と13年ぶりの下げ幅であるらしい。

 昨日の東証株式市場暴落を受けて、本日(5月24日)朝日新聞朝刊一面に編集委員 原真人氏の署名にて「アベノミクス 危うさ露呈」との論評記事が載せられている。
 この原氏の論評がまさに原左都子の私論と一致するため、以下に要約して紹介させていただく事としよう。
 「アベノミクス」の本質は、人々をその気にさせようとの「心理学」だ。 金融と財政を通じて思い切りカネをばら撒く。その勢いで多くの人が「景気がよくなる」と信じ込む。こうなれば本当に景気がよくなる…  そんなシナリオである。  だから崩れる時はもろい。最初からその恐れはあった。 ひずみは早くも表面化した。日銀が押さえ込むはずだった長期金利が急騰。 頼みの綱の株価も13年ぶりの暴落となった。 
 アベノミクス政策以来の株価上昇を景気好転と勘違いするべきではなかった。これは日銀による人為的な市場操作で上がるべくして上がったものだ。 日銀は国民に「その気を育てるタネ」として年間50兆円超のカネを国債や市場に流し込もうとして、投資家達がそれに誘われたが故に短期的に株価が上がるのは当然だった…。
 (以下省略するが、以上は朝日新聞5月24日一面記事より一部を引用。)


 最後に、原左都子の私論で締めくくろう。

 表題に戻るが、「イージー・マネー」とは日本語にすると「楽に儲かるカネ」の意味合いがある。  あるいは、「不正に儲けたカネ」「悪銭」「あぶく銭」「泡銭」等々…の意味合いもあるようだ……。

 日銀黒田総裁は少し前にメディア上の記者会見に応答して、「今回の金融緩和政策は決して“バブル経済”の再来ではない!」と言い切っていた事を私はメディア画面を通して記憶している。
 「イージー・マネー」を最前線に呼び込む経済政策など“バブル”でしかあり得えない事を、日本の中央銀行の長たる者が認識していないなどあり得ないはずだ。 にもかかわらず、何故国民相手に「イージー・マネー」の投入を煽ったのか??

 これこそが、今後の「アベノミクス」経済政策の限界を示す指標と私は捉える。 
 「アベノミクス」は、日本国内に於けるほんの一部の富裕層(これとて所詮庶民の範疇であり大してリッチでない層と私は捉えるが)を煽る事による“階級制度”を末端世界で築きたいのか??
 今後益々多くの国民を更に貧困層に落とし入れ不幸にしないためにも、「イージー・マネー政策」は即刻辞めにするべきだ。 
 そんな貧乏国民のバブル銭にしか頼れない財務・経済政策など、原左都子に言わせてもらうと「イージー・アベノミクス」としか表現できないよ。
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