原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

「ゲゲゲの女房」が高視聴率を続ける訳

2010年09月14日 | その他オピニオン
 ここ数年のNHK朝の連続テレビ小説としては珍しくも高視聴率を維持し続けているのが、残すところ2週間で放送が終了する「ゲゲゲの女房」である。


 放送終盤を迎えている近頃では、既に成功を収め熟年期に達している漫画家水木しげる氏の活躍から焦点をずらし、親の老いと死や子どもの親離れを取り上げる等、周囲の人物を中心とした物語展開に移行して今までの迫力を欠いてしまっているのが、私個人的には惜しい気がする。

 このドラマは何と言っても極貧にあえぎつつも成功を勝ち取る過程の、漫画家夫婦の地味でかつ壮絶な日常生活がリアルに描かれていたところが最大の魅力だったのではないかと私は捉えている。


 ここでドラマ終盤にして現在展開しているストーリーを“ちょっこし”だけ紹介しよう。
 売れっ子漫画家水木しげるの娘であるが故に級友にからかわれたり利用されたりすることに小学生時代から心を痛め“学校嫌い”だった主人公の長女藍子が、学校が嫌いだから故に教員を目指す!との設定は、原左都子個人的には大変興味深い。 なぜならばこの私も生粋の“学校嫌い”であるから故に、教員時代は生徒である子ども達の目線で共感でき充実していたと実感しているからだ。
 (話が飛ぶが、どこかの愛子ちゃんも、身分や立場をわきまえない周囲からの馬鹿げた“税金泥棒”云々のバッシングにめげないで力強く自らの生きる道を全うして欲しい思いである。 国民の象徴の家系に生まれざるを得なかった愛子ちゃんが小学校でのいじめや社会からの誹謗中傷にあえぎ報道陣の前で表情を曇らせる姿が、我が娘の小さい頃に瓜二つの思いがある原左都子はいつも愛子ちゃんとお母様の味方だよ。)
           

 大河ドラマと並んでNHKの看板ドラマであるにもかかわらず、ここのところ視聴率低迷を彷徨っていた“朝ドラ”が、今回の「ゲゲゲ…」で吹き返した現象に関するメディア上の論評を幾つか見聞した。

 その一つは、このドラマの物語が今の我が国の国民同様に“貧困”にあえいでいる姿を描いているからだという論評である。
 これにはまったく同感である。 そして上記の通りその“貧困”の描き方が至ってリアルだったことが視聴率を押し上げたものと推測する。 今までのドラマの手法によると、ヒロイン(ヒーロー)に貧困期はあるものの、いつの間にか大した努力もないままに突然“成功”を勝ち取っていたりするのだ。 観ている側とすればあれは嘘臭く、演出者の薄っぺらな感性に興醒めするばかりである。  要するに「ゲゲゲ…」の場合、“貧困”を通り一遍ではなく“丹念”に描いたところが国民の共感を呼んだということではなかろうか。

 一番多い論評が、水木しげる氏を演じた俳優 向井理氏 の存在感であるようだ。
 確かに、向井理氏の容姿は“朝ドラ”ファンである熟年女性?を引きつける一種コケティッシュな魅力を持っていることに私も同意する。 ところが原左都子が多少懸念するのは、この人気のフィーバーふりは、何だか“熟年女性の韓流男優への一過性の感染症”と同様であるに過ぎないのではないだろうかという点である。
 向井氏が自らの学位論文(?)で高い評価を受けた過去の“自伝”を私は承知しているが故に、氏が学問研究を極めるよりも、持ち前の容姿を利用して簡単に成功を勝ち取れる俳優稼業の道に“逃げた”との思いが否めないでいる原左都子なのだ。 私も過去において学者を目指した端くれだからこその考察なのだが……
 生涯研究者として生き抜くより、一時役者としてフィーバーする方が簡単に世に名を売れるし、とりあえず金儲けできそうだものねえ~。 だたその後の人生の安泰という意味で未だ28歳の貴方の今回の選択はどうなのだろうね、向井さん?? そういう意味で意地悪くも貴方の今後の役者としての生命力に興味がある私でもあるよ。

 それから、今回の「ゲゲゲ…」は朝ドラ何十年かの歴史上初めて「専業主婦」を取り上げたことが視聴者の共感を呼んだのだ、という論評も目にした。
 これに関して、私は疑問符を投げかけざるを得ない。
 確かに私が記憶している“朝ドラ”は、今までずっと何らかの職業に就くべく努力する若い女性像を描いたものだった。 ところが上記のごとくその描き方や演出が手薄であるせいか、何処の女性も成功を勝ち取った割には軽薄短小な存在でしかなく視聴者に訴える力があったとは言い難い。 (その中で私の記憶では、2、3年前に双子姉妹マナカナのカナ氏が演じた“芸者雪花”の濃厚さは強い印象があった。)
 今回の「ゲゲゲ…」における主人公であるゲゲゲの女房を演じている松下奈緒氏の存在は貴重であろう。 専業主婦という目立たない存在である役柄を、ご自身なりに解釈、消化されて最初から最後までつつましやかに律儀に演じ抜いているのだ。 女優松下氏がドラマを通して一貫して売れっ子漫画家の“しがない専業主婦”に徹底した一歩引いた演技力こそが、今回の高視聴率の賜物であると私は実感しているのだ。
 松下氏は女優でありピアニストであり、身長174cmの長身を活かしたモデルであり、そして司会者としても卒なく活躍している才女であられるようだ。 元々多才である松下氏がこのドラマの主役に起用され、与えられた役柄を冷静に解釈して控え目に演じ切ったからこそ成し得た高視聴率ではなかったのだろうかと、私は結論付けるのである。

 
 最後に話が変わるが、今私がパソコンに向かう後ろでNHKテレビが民主党党首選の結果を伝えている。 よもや、政治と金問題を背負っている灰色小沢氏が首相になることのみはないと信じていた私は一応安堵しているのだが…

 それにしても先々お寒い政界の様子と比して、NHKの“朝ドラ”の久々のクリーンヒット!を一応評価しよう。   (やっぱり、主役である女優の真の能力で今後共勝負するべきだよ、NHKは。)
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2 Comments

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向井&松下さんは理想的 (issei)
2010-09-14 23:35:46
私もこの番組に対する評価は原さんと同感です。このお二人は身長が182&174cmで似合っているし明大&音大出身もなんとなく釣合っているように思います。(笑)
視聴者に主婦が多い事もあり、向井さんの人気は絶大のようです。ワンマン的な水木さんをげげげの女房がしっかり支えると言う部分も評価されて言いと思います。
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isseiさん、松下さんに控え目であることの偉大さを教えられた思いです。 (原左都子)
2010-09-15 08:07:40
松下奈緒さんの始終目立たないことに徹した演技は実に素晴らしかったと思います。

古手川裕子のしっとりとした存在感も良かったですね。

それに比して、南明奈(字が違うかな?)は馬鹿に見えましたし、竹下景子の今回の役回りもちょっと気の毒でしたね。

女性は控え目であるべきだとは決して思ってはいませんが、「控え目」であることの持つ偉大なエネルギーを再確認させてもらえたドラマでした。

向井さんは今やドラマ、映画に引っ張りだこのようですが、さてこのフィーバー、そして役者生命はいつまで続くでしょう??
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