原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

猟奇残虐事件を引き起こされたアパートオーナーの悲劇

2017年11月25日 | 時事論評
 3年程前まで不動産賃貸を実施していた我が身として、他人事ではない話題にネット情報にて触れた。


 早速、以下に「『座間9遺体事件』のアパート、今後の資産価値は? 不可解な2つの事実と事故物件をめぐる不動産事情 」と題する情報の一部を要約して紹介しよう。

 連日メディアで報道されている「座間市アパートの9人殺害遺棄事件」。 これから徐々に事件の全容は解明されていくだろうが、大家にとっての災難は始まったばかりだ。 アパート外観の映像がさらされ、場所もおおむね特定されている。 入居者がおそれをなして出て行ってしまえば賃料収入は激減し、再募集するにしても家賃の暴落は避けられない。 果して収益物件としての資産価値はどうなるのか、周辺への影響はどうなるのか――。
 実は、このアパートには不可解な事実がいくつかある。 1つは、事件発覚の1ヶ月以上前から売りに出されていたこと。 売り出し価格が4,500万円前後、 表面利回りは7.3%前後で、不動産投資の物件情報サイトに複数の仲介会社が広告を出している。 周辺相場より1~2割高い。 とはいえ、5年前に外壁と屋根のリフォームを実施しているせいか、外観を見る限り築年ほどの古さは感じない。 そのため強気の値付けをしていたのだろうか。
 2つ目のナゾは、物件概要の備考欄に「告知事項あり」と書かれていたこと。 これは仲介会社に対して宅建業法で義務付けられた項目で、契約に先立って説明しなければならない重要事項の一つ。 事件・事故などの心理的瑕疵(欠陥)も含まれる。 ということは、今回の事件とは別に、既に何らかの心理的瑕疵があったことを意味する。 「事故物件・訳あり物件専門」の売買仲介会社によると、自殺や孤独死などの事故物件の場合で、売り値は相場より「2~3割、場合によって5割くらい下がる」と言われる。 しかし、前述の売り出し価格にはこの点は反映されていない。 なんともちぐはぐなのである。
 広告を出していた仲介会社に聞くと、現在は「売り止め」になっている。 ほとぼりが醒めるまで動けないのだろう。 改めて売り出すとしても、これだけの猟奇的事件が起きているのだから価格は大きく下げざるを得ないはず。 収益物件に詳しい不動産コンサルタントのS氏は「更地価格の半値になってもおかしくない」と指摘する。 このアパートの更地=土地だけの価格を試算すると3,000万円程度だ。 その半分として1,500万円。 元の売り出し価格の3分の1である。 それならば、売らずにこのまま賃貸経営を続けるという手もある。
 これだけの事件が起きたのだから、入居者はみな逃げ出してしまったと思うかもしれない。 ところが、意外なことに、管理会社に対して退去の連絡は届いていないという。 生活に便利な立地で、家賃はロフト付きワンルームで2.2万円と安いため、「出て行きたくない」「住み続けたい」という入居者が多いというのだ。 「事故物件でも気にしない」「家賃の低さ優先」という人も、一定程度は存在する。
 周辺の同条件の家賃相場は2万~2.5万円なので、特段このアパートが割安なわけではない。 殺人現場となった部屋の家賃は、リフォームしても半値以下でないと貸せないだろう。 両隣や上下階の部屋も3~5割引き、その他の部屋も2割程度は安くなるケースが珍しくないといわれる。 それでも借り手がいる限り、3分の1以下の価格で叩き売るよりマシかもしれない。 (中略)
 住民の周知性との関連で、近隣の不動産への影響について触れておこう。 事故物件の告知義務は法的には当該物件のみだが、今回のメディア報道で物件周辺の状況も知れ渡っている。 某氏は「このアパートに近い不動産価格も10%程度は下がる可能性がある」と指摘する。 周辺住民にとっては、とんだとばっちりだが、こうした事件・事故は自ら防ぎようがない。 天災とあきらめるしかないのだろうか。
 (以上、ネット情報より一部を引用したもの。)


 私事及び私見に入ろう。

 この私も零細賃貸物件オーナー(マンション一室賃貸)の立場で大失敗をしでかしている。
 3年半程前の事だが、賃貸歴20年にして不覚にも“悪質賃借人”の入居を認めてしまったばかりに大損失を計上するはめとなった。 今後まだまだ賃貸収入が得られたであろう所有物件をオーナーチェンジ物件として安価で売却せざるを得ない損害を背負った我が身としては、まさに他人事ではない。

 それにしても、上記座間市の賃貸物件価格及び賃料が超安価なのにひとまず驚かされる。
 座間市といえば地理的には都心のベットタウンといった位置付けだろうか? それにしても、駅徒歩10分程度の利便性が高そうなアパートにして、一部屋2万の家賃は破格に廉価な気もする。
 だからこそ、猟奇事件加害者も(被害者よりカネを巻き上げつつ)数カ月間殺人実行現場として賃借することが叶ったのだろうか。

 アパート物件そのものも、4500万円との価額で売りに出されていたとのこと。
 都心に住む人間の立場からはその廉価の程が信じ難いのだが、だからこそ、(メディア報道で見聞する限り)当該殺害物件周辺には同じようなアパート物件が建ち並んでいるのだろうか?
 上記情報によれば、表面利回り7.3%前後とのことだが、もしも賃借人に猟奇残虐事件など引き起こされなければ、この辺りのアパート経営とはオーナーにとってはある程度美味しい生業だったのだろうか?


 まったく別の観点からの考察だが。

 これだけ全国各地、いえいえ世界規模で日々残虐な事件・事故が引き起こされる現状下に於いて。
 事件が発生したアパート周囲の賃借人達がその場を去らずに入居し続けるだろう、とのネット考察も十分に理解可能だ。
 今の時代これ程までに事件事故が多発する事実と並行して、それらの事件事故を市民が忘れ去るスピードもそれにも増して猛スピードだ。  それが証拠に、当該座間猟奇残虐事件すら既に国民から忘れ去られているのではあるまいか??
 
 しかも世の中は、人間関係の希薄化も猛スピードで進んでいる。
 何も、せっかく敷金・礼金等々の初期投資をして借りた廉価かつ利便性の高いアパートを去り新たなアパートを見つける手間暇と金銭的損失を出さずとて、このまま住み続けるに限る!、なる結論を導くことこそが経済的との判断も理解可能だ。
 更には室内リフォーム業者の劇的技術邁進により、当該残虐事件発生現場とて、すぐさま新たな賃借人を迎え入れる準備もお手のものだろう。

 周辺地域の不動産価格が低下するとの記述もあるが、それに関しても、世間に於いて風評が忘れ去られる時間の速さにより、しばらくすれば元の価額に戻る事も考えられる。


 最後に、原左都子の私論で締めくくろう。

 そうだとしても。
 確かに、賃借人にアパート室内にて猟奇残虐事件を引き起こされたオーナーの悲劇の程を察して余りある。
 当該座間アパート物件の場合、事件発生以前に既に売りに出されているとのことだが。 おそらく、しばらくは売却不能なことだろう。


 今回のエッセイは、物件賃貸借を主眼として展開して来たが……。

 それよりも優先するべきは、事件被害者皆様のご冥福をお祈りするべきである事は重々弁えている。
 その意味で、被害者及びご家族の皆様に対して失礼な内容であることをお詫び申し上げたい。
 今後もこの事件に関し、被害者の皆様及びご家族の立場で見守って行きたいものだ。