原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

本人確認が厳格過ぎると消費経済が停滞する

2016年01月09日 | 時事論評
 1月末にイタリアのローマ・フィレンチェ方面へ旅に出る予定の私は、現在暇をみつけてはその準備を少しずつ進めている。


 海外旅行損害保険は既に契約した。

 そもそも私は海外へ旅に出る時にも、損害保険には加入しない主義を長年貫いて来た。 幸いにも保険のお世話になるような事態に陥らずにずっと済んでいたのだが…
 ところが9年程前に、エジプト・ギリシャ方面へ家族旅行に出かけた折に、娘が40℃近い高熱を出しホテルで寝込んだ際、添乗員氏にこっ酷く叱られたのだ。 
 「えっ! 未成年の子供さんを引き連れての海外旅行に保険に加入していないのですか! 親として何を考えているのですか? このままギリシャに残る事になっても私(及び旅行会社)は一切の責任を持てません!」
 私も負けていない。 「娘が高熱を出すのは幼少の頃より日常茶飯事です。 私は医学関係者ですし、今回の旅行中の発熱も想定内でした。 日程が予想以上にハードで無理があった故に一時的に高熱を出しているだけで、一昼夜ホテルで安静にすれば必ず明日までには娘の熱は下がります。 それはお約束します。」
 そして私の予言通り、娘はあくる朝には平熱にまで下がり、多少顔色が悪いものの次なる訪問地のエジプトまでのフライトが叶った。
 それにしても、団体旅行参加者の皆さんにご心配をかけたのは事実だ。 添乗員氏のみならず、旅行参加者の皆さんから次の日の朝、ホテルのロビーにて「娘さんの体調が回復して良かったですね!」のコールが巻き起こった事に、親として申し訳ないやら恥ずかしいやらの思いで、穴があったら入りたい肩身の狭い心境だったものだ。

 そんなこんなでそれ以降は我が身一人であれ娘を引き連れてであれ、海外旅行に出る際には必ず損害保険に加入する事にしている。
 ただし何を補償して欲しいとて、私なりのポリシーはある。 一番の候補として挙げられるのは、携帯品損害だ。 例えば空港で預けたスーツケースが行方不明になるなど昔からよくある例であり、その確率は低いとは言えないだろう。
 更には、今回の旅行に於いて一番危ぶまれるのが“テロ対応”だ。 これを補償内容として列挙している保険に加入したのは当然の事だ。

 それらを兼ね備えているネット加入可能な海外旅行保険を選び契約したのだが、保険加入に際しては本人確認は一切なく、即時に加入契約が成立したのは何よりだ。
 これを消費者側から考察するに、要するに海外旅行保険など保険会社側から言えば、“坊主丸儲け商売”だからではあるまいか。
 “入るは天国、保険金との補償を受ける際は地獄” とも表現可能な保険業界に於いて、顧客が保険に入りたいと申し出れば喜んでそれに応じる事であろう。 ところが一旦海外で補償を受けねばならない事態に遭遇した時に、これ程即時対応してくれるのかどうかが不安材料である。


 海外旅行保険の話題が長引いたが、次なる課題は「外貨交換」だ。

 私が初めて海外を訪れた(米国へ短期留学した)のは今から遡る事42年程前の19歳(1974年)時点なのだが、当時過疎地に住んでいた私にとって「外貨交換」に難儀させられた記憶がある。 とにもかくにも当時は銀行でしが外貨交換を扱っておらず、特に過疎地に於いてはそれを扱う銀行が本店のみだったのではなかろうか??  一体如何なる手段で外貨交換(¥から$への交換だが、当時は為替が¥360ー固定相場だった)したかの記憶がない。

 その意味では、現在は革新的な進化を遂げていると言えよう。
 如何なる場所でも、如何なる業者も外貨両替を扱っている現状だ。 こうなると顧客側としては、これまたその選択に苦慮する事態と相成る。

 とりあえず私が採った行動とは、円・ユーロ間の相場の動きに注目する事だ。 年末から年始にかけてその動向に注視しているとかなり大きな動きがあった。
 年頭に至り少し為替相場が落ち着いたかに思えた1月5日に、私はネット上にて“一番安価でユーロを購入可能な”業者をしらみつぶしに検索した。
 それはそれは、数多くの業界業者が競って外貨を販売している。 私のネット検索によれば、ユーロが一番安価だったのは、三井住友銀行だ。 ところが当該銀行の場合、口座を開設せねばならない。 これは避けたい。 あるいは、金券ショップが安価だとの情報も得た。 ところがその後私がネット検索したところ、さほどの安価ではない。

 そうして私が探り当てた、私にとって最小安価にてユーロを購入可能な場とは「ゆうちょ」だったのだ。
 私の場合既にゆうちょに口座を持っている。 それを利用すれば即刻“振替”により翌日ユーロを自宅まで届けてくれるとのシステムだ。

 ところが…
 翌日待てども、ユーロは自宅に届かない。 おそらくこちらの前日の申し込み時間が夜だった故と判断し、もう一日待つ事にした。
 翌々日のネット検索「追跡調査」によれば、確かに私が発注したユーロは、外貨取扱いゆうちょ銀行より発送されている! これはもうすぐ我が手元に届くぞ!と思いきや、次なる記載は「配達ゆうちょ郵便局にて保管、保管期間は1月17日」との事だ。
 これに憤った私は、早速配達郵便局へ電話をかけた。 そうしたところ、係員から返って来た応答に更に愕然とさせられる…
 「お客様が発注された配達書留は、本人確認を要します。 もしもお客様が今すぐ入用でしたら身分証明書を持参して郵便局窓口まで来ていただければ即刻お引き渡し致します。  そうでなくご自宅でお待ち頂く場合、郵便局からお手紙をご自宅まで届けますので、それが届いた後に電話かFAXにて再度お届け日時をご指定下さい。 その日時に、書留郵便をご自宅に持参します。」

 いやはや、これで商売が成り立つと信じている「ゆうちょ」なる大規模組織の行く末を案じるばかりだ…


 最後に、原左都子の私論でまとめよう。

 確かに金融機関を通して“振り込め詐欺”等の犯罪が後を絶たないばかりか、手口を変えつつ巧妙に弱者を狙う犯罪が悪質化している現状に一般市民としても心を傷めざるを得ない。

 たとえそうだとしても、それに甘んじて(あるいはそれを好都合と利用して)金融機関が一番大事に扱うべきであろう顧客の利益を軽視・損害するとは一体どうしたことか??

 しかも本人証明を強要する金融機関だが、そのセキュリティ対策に対しても私は疑義を呈さざるを得ない。
 例えば、一昨日我が自宅までユーロを持参したゆうちょ職員氏の私の運転免許証の確認が、単に番号記述だった事態に首を傾げざるを得ないのだ。  私自身の感覚だと、運転免許証に写っている私と家にいる私とではまったく印象が異なり、ほぼ別人と自分自身で認識している(外出する時には厚化粧で変貌する)のだが、それの本人確認が本当に可能だったのだろうか?!??

 とにもかくにもユーロを翌日届けると記載しておきながら、その実態とは「本人確認」のために3日を要した場合、発注した顧客が既に旅に出てしまっている事態となることも懸念される。
 
 いい加減な本人確認を実行し顧客に迷惑をかけるより、もっと有効な犯罪対策を打ち出せねば、今後の金融機関の未来はないと私は警告したいのだが如何だろうか!??