原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

新日鉄火災  社会に対する説明責任を放棄する気か!?

2014年01月18日 | 時事論評
 昨日(1月17日)午後1時のNHKニュースを見ていた私の身中に戦慄が走った。

 17日正午ごろ、愛知県東海市の新日鉄住金名古屋製鉄所内で火災が発生したとの速報と共に、現場の映像が数分に渡って流されたのだ。
 その映像によると、広大な敷地内工場の至る所から燃え盛る火と濛々と立ち上がる黒煙の数々が写し出されている。
 更に不気味なのはNHKアナウンサー氏の説明によると、この大火災に関する情報が何一つ得られていないとの事だ。 工場内には2000人を超える作業員が勤務しているがその安否も一切不明、との報道が私の戦慄に追い打ちをかける。

 しばらくこのニュースを見守っていたのだが、NHKのニュース時間内には詳細報道が入手不能だった様子で火災報道は中途半端に打ち切られた。
 (もしや、大参事か!?!)なる不安感で身震いしつつ、私は行きつけのスポーツジムへ出かけた。 そのジムでも新日鉄火災その後の推移が大いに気になり、いつものようにトレーニングに集中できない。 夜帰宅したら一目散にニュース報道を確認しよう、との思いばかりが募った昨日午後だった。


 折しも、昨日は阪神・淡路大震災発生後19年目を迎えた。

 19年前の1月17日の歴史的大震災の日を私は忘れることはない。

 あの日私は1歳になってまもない娘と二人で自宅にいた。 1月下旬に住居を買替え転居を予定していた我が家に、売却仲介不動産会社の担当者が不動産売却の最終確認でやって来た。 まだ午前中の時間帯だったのだが、その担当者が我が家を訪れるなり発したのが、「神戸で大きな地震が起きて何百人もの死者(当日午前中時間帯の報道に基づいている)が出ているようです!」
 訳が分からないままに仰天した私だ。 それまで歩んできた私の人生において、我が国内で地震による死者数が何百人にまで上る大参事を経験していなかった。
 その後不動産会社担当者と何を最終確認したかの記憶は全くない。 とにかく担当者退室後、急いでテレビのスイッチを入れた私だ。
 そのテレビ映像を一見して、(これは死者数百人などでは済まされない歴史的大参事だ!)と辛くも恐ろしくも悟らざるを得なかった…。

 とり急ぎ私がとった行動とは、神戸に海を隔てて程近い地にある実家に様子確認の電話を入れることだった。 幸い実家現地では震度4程度の揺れだったらしく、さほどの被害は出ていないらしい。 
 夜になって、滅多に電話をよこさない米国在住の姉より電話がかかってきた。「アメリカでも日本阪神地方の大地震についての速報報道があるが、どうなのか??」 その時点では死者数報道が既に千人単位となっていただろうか?? 
 その日は夜遅くまで阪神地方被害の生々しい現実をテレビ報道を通して見守り続けた。
 その中で私が一番ショックを受けたのは、神戸市長田区の街全体が地震に伴い発生した火災により燃え盛っている映像だった。  こんなにも壊滅的被害を被っている長田区市民がどう逃げればよいというのか… “真実は小説よりも奇なり”と言うが、映画でも見たことのないこんな悲惨な出来事がこの世に本当に発生してしまうのか…… 
 世の無常の現実を叩き付けられ、やるせない思いを募られたものである。


 話題を変えるが、実は私は成人後身近な場所での火事現場を数回経験している。

 その一つは20代前半に勤務していた職場の近くにおいてだった。 午後の時間帯だっただろうか、近くのタイヤ工場から黒煙が上がり始めた。 火事発生時に職場に居たことが幸いして、職場内での火事等危機管理措置対応がすぐに機能した。 まだ未熟者の私は指定された場に避難するのみで、結局我が職場までの延焼被害はないままに済んだ。

 その次は20代後半時期であるが、真夜中に5軒程隣の住居が全焼した。 消防車のサイレンで目覚めた私は、その家が燃える風景を確かに見た! ところが避難等の誘導指示が一切なく自主避難時代背景だったのか、誰も何も言ってこない。 ここでこのまま居ていいのかどうかの判断がつかないまま、私は近燐火災の消火活動を見守った。 鎮火を見定めて私は再び眠りについた。

 次なる火災の試練は、我が子幼稚園時代の出来事である。 娘を徒歩で幼稚園へ迎えに行った後帰宅道中にあるコンビニに立ち寄った。 その直前に、上空に黒煙が少し吹き出ているのを確認していた。 それを軽視してコンビニ内で5分程買い物をして外に出ようとした私は、周囲が黒煙で立ち込めているのに仰天した。 娘に口を塞ぐよう指示しつつ、親子で一目散にその場から逃げ去った。  集合住宅の自宅に戻り上階から火事現場を展望すると、更に黒煙が上空まで拡大していた。
 結局、この火災は1階にコンビニがあるビルのすぐ裏に位置するビル火災だったことが後で判明したのだが、火災とは発生当初はそれが火災とは判断しかねることを学習させられたものだ。


 話題を、冒頭に紹介した昨日の新日鉄火災に戻そう。
 
 夜自宅に帰り着いた私は、即刻上記「新日鉄火災」続報を得ようと、テレビのニュース報道に注視した。
 ところがどうしたことか、NHK7時のニュースは元より何処の民放ニュースにチャンネルを切り替えても、「新日鉄火災」に関する報道がない。
 夜9時になって、NHK「ニュースウォッチ9」のサブキャスターである井上あさひ氏が初めてこの大火災に関する報道を伝えてくれた。 
 その井上氏の解説によると、今回の新日鉄火災とはあくまでも“内部火災”であるが故に新日鉄内部にてすべて対応済みとの事だ。

 ここで、ネット情報より「新日鉄火災」に関する追加情報を紹介しよう。
 東海市消防本部などによると、第7コークス炉の高さ約10メートルの部分から出火した。製鉄所内の発電所と、別の建物内からも炎が上がった。死傷者や行方不明者の報告は午後1時半現在で入っていないという。  製鉄所の職員が一時、消火を試みたという。 
 その後、愛知県東海市の新日鉄住金名古屋製鉄所で17日に発生した火災の原因は、構内の発電所にある配電設備のショートとみられることがわかった。 火は作業員が消し止め、けが人はなかった。一方、コークス炉から噴き出した炎や黒煙は炉内のガスが燃焼したもので、同製鉄所は火災にあたらないとした。 黒煙の噴出は夜も続いたが、市などによると健康被害を訴える人は確認されていない。
 愛知県警や同製鉄所によると、作業員が発電所の電流を流すスイッチを更新する作業中、配電設備がショートして出火。停電が発生し、コークス炉への送電ができなくなった。石炭を蒸し焼きにする過程で発生するガスが炉外に噴き出すおそれが生じたため、非常装置が作動してガスを燃焼させ、大量の黒煙が出たという。 新日鉄住金は同日の記者会見で「お騒がせして申し訳ありません」と謝罪した。


 
 最後に、原左都子の私論で締めくくろう。

 昨日はまさに「阪神・淡路大震災」発生から19年目を迎える日だった。 
 時悪くして新日鉄製鉄所現場で大火災が発生したのは、単なる偶然の出来事だったのかもしれない。
 そうだとしても、大震災及びそれに追随して発生した大火災の下で、かけがえのない命を失わなければならなかった多数の市民の皆さん及びそのご遺族の方々のやり場のない思いに、新日鉄は少しでも思いが馳せられなかったものなのか??
 しかも今回の新日鉄火災に関しては、地域住民の方が「いつもとは違う火や黒煙が出ている」との切羽詰まった一報を公的機関に連絡しているとの報道だ。 それら地域住民の皆さんに配慮してこそ成り立つ巨大企業存命ではないのか!?

 昨日発生させ世間を騒がせた「新日鉄(内部)大火災」に関する社会への正式な謝罪を、是非共メディアを通して一度は拝見したい思いの原左都子である。