原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

ジゼル

2007年11月27日 | 芸術
 先週の日曜日、五反田ゆうぽうとホールにて小林紀子バレエシアター第88回公演「ソワレ・ミュージカル」「ジゼル全2幕」を観た。

 バレエ古典名作ものはもうほとんど何回も観ているのだが、この「ジゼル」だけは今まで縁がなく今回初めての観賞であった。 小林紀子バレエシアターは、前回の第87回の3部作公演「コンチェルト」「ザ・レイクス・プログレス」「エリート・シンコペーションズ」がまれに見る傑作であり、英国紙“ファイナンシャル・タイムズ”に大きく取り上げられる程の大好評だったことは当ブログのバックナンバー「バレエを観に行こう!」でも既に述べた。今回の「ジゼル」への期待も大きく、娘と二人で大変楽しみに出かけた。

 バレエ古典名作ものは大抵そのストーリーは単純で、失礼な言い方をすると子どもにも分りやすい。そんな中で、この「ジゼル」は珍しく(?)大人志向であり、そのストーリーは愛と裏切り、怨念そして許し、永遠の愛を描いている。そういう理由もあるためか、今回の観客は若いカップルが多かったようだ。
 小林紀子バレエシアタープリンシパルの島添亮子さんは、決して長身ではなくきゃしゃで繊細な雰囲気なのだが、いつ拝見してもその存在感は揺るぎないものがある。今回も主役ジゼルとして女の可愛らしさ、情念、せつなさを見事に表現されていた。

 この「ジゼル」は1841年にパリのオペラ座で初演されたらしい。近代バレエの最初の大ヒット作が「ラ・シルフィード」であり、「ジゼル」は2匹目のどじょうを狙って制作されたそうだ。そのため「ジゼル」は「ラ・シルフィード」の影響を大きく受けているらしいが、なるほど、第2幕などは「ラ・シルフィード」の場面を彷彿とさせた。第一幕は舞台装置や登場人物、衣裳等が私は「コッペリア」と似ていると感じたのだが、「コッペリア」の方が後で初演されたようだ。そうだったのか「ジゼル」のほうが古かったのか、知らなかった。

 バレエは総合芸術であり、踊り、音楽、衣裳、舞台装置等、一度に様々な分野の芸術が楽しめるのが特徴だ。それに加えて、バレエは人間の体の美しさも堪能できるのがもうひとつの特徴であると私は思う。バレエの振り付けはこの体の美しさを極限まで表現している。人間の体こそすばらしい芸術であることを教えてくれる。特に、今回のアルブレヒト役のゲストプリンシパル、ロバート・テューズリーさんのナイスボディには見惚れてしまったなあ。

 さて、今度は12月の「くるみ割り人形」だ。毎年恒例で観ているためこれを観ないと1年が終わらない。今年は未だ予約していないが、どこのバレエ団の公演を観ようか。今からとても楽しみである。