初めて会った人には、あいさつをしてから、名刺を交換し、イスかソファーに座ります。この動作を厳しく叱責されたことが2回あります。
ともに男性で、一人は右翼団体幹部で、もう一人が暴力団組長です。右翼団体幹部は、社の関係者の紹介で会いました。金のペーパー商法で高齢者を中心に2000億円の金を巻き上げた豊田商事の永野一男会長(当時32)の殺人事件にからんで、犯人の自称右翼の素性を知っているというので面会しました。梅田のビルの一室を訪ね、あいさつをした後、座ろうとしたら「誰が座っていいと言った」。
暴力団組長は初任地の高松市で、なんの取材だったかは忘れましたが、暴力団側から会いたいと言われ、出かけました。組名が書かれた提灯が並ぶ居間に入り、あいさつをして、名刺を差し出した後、ソファーに座ろうとしたら、「誰が座っていいと言った」。
ともに、自分を大きく見せる稼業ですから、私は「失礼しました」と謝り、「座らせていただいてよろしいでしょうか」と続けました。取材の中身は大した話ではなく、いずれも記事にはなりませんでした。
柔道整復師の口頭試問の演習で、クラス名、名前を名乗ってからイスに座ろうとしたら、面接官役の男性の教師に「誰が座っていいと言った」と厳しく注意されました。「座らせていただいてよろしいでしょうか」と了解を求めるべきだ、と言われました。
面接試験は、新聞社の就職試験と、大学で奨学金を受けるため担当教授の面接の2回くらいしかありませんが、当時は「座らせてよろしいでしょうか」と承諾を受けるような人はいなかったと思います。マニュアル化が進んで、応対のノウハウが周知するに従い、こうした受け答えが求められるようになったようです。