水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

泣けるユーモア短編集-87- 当選

2018年05月02日 00時00分00秒 | #小説

  当選は笑顔のバンザ~イ! バンザ~イ! という事態になるから、いいものだ。逆に落選はショボく、ぅぅぅ…と泣ける事態を招(まね)くから、いただけない。
 選挙戦たけなわの、とある選挙事務所である。二人の選対本部役員が話し合っている。
「どうだね? 状況はっ!」
「大枠(おおわく)で五分(ごぶ)五分といったところでしょうかっ! あとは浮動票が、どう動くかっ…」
「そうか…。我々もだが、まあ、老骨(ろうこつ)に鞭(むち)打って、先生はよくやられたよ。あとは祈るだけだなっ!」
「対抗馬(たいこうば)は若手の新人ですからねっ!」
「今の時流(じりゅう)だと向かい風か…」
「いささか、不利でしょうか?」
「いや、必ずしもそうとは言えん天候もある」
「投票日の、ですか? …雨なら確かに、浮動層は動きません!」
「そうそう! 態々(わざわざ)、足を運ばんだろう」
「ええ…。となれば、先生は当選ですか?」
「ああ、まあな…。雨で当選、晴れれば落選かっ。ははは…妙な予想だっ」
「はい、確かに。ははは…」
 選挙当日である。天候は晴れるでもなく降るでもない曇りだった。二人は推測不能に頭を抱(かか)えた。
 老骨の当選には雨が必要なようだ。

                               完

 ※ 飽くまでも予想判断には個人差があります。^^


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