代役アンドロイド 水本爽涼
(第67回)
昨日(きのう)ならここで後藤が来る・・と保が思っていると、案の定、アフロ頭を揺らして、後藤がドアを開けた。ただ、昨日と違ったのは、その後ろから同時に山盛教授が入ってきたことである。
「いやぁ~、珍しく後藤君と入口で鉢合わせしてね。おっ! もう大丈夫なんですか?」
いつもの教授の欠伸(あくび)がないぞ…と、保は思った。
『はい! 昨日はお騒がせしました。もう、すっかり元気です…』
「そうですか。それで、もう一度、ご見学を?」
『はい。お邪魔かとは思ったんですが…』
「いやぁ~、機械工学が好きなお嬢さんは少ないですから…。まあ、ゆっくり、見てって下さい」
『ありがとうございます』
今のところ会話には何の問題もないぞ…と、保は沙耶と教授の会話を聞きながら、チラ見して思った。保が座る机の前にはパソコンが置かれている。それを操作している保だが、沙耶の観察のため手指の動きは滞りがちだった。昨日、保が帰った後の研究室では、焼け切れた後藤のパーツの修理に齷齪(あくせく)したが、結局、教授と後藤では元に戻らず終いでジ・エンドとなったようである。だから、教授と後藤コンビは、また、どうのこうのと言い合いながら、その部分の修理を続けていた。検知メーターの予備はあったからいいとして、ローラー部の焼け切れパーツの修理は困難を極めた。