代役アンドロイド 水本爽涼
(第54回)
「おはよう…。おや、どこのお嬢さんかな? ははは…。この研究室に女性は初めてだが…」
ニンマリしながら教授は沙耶を見た。
「あのう…田舎の従兄妹(いとこ)です。見学したいって言うもんで…」
保はシミュレートした通りの出任(でまか)せを、すんなりと口にした。
「あっ、そうなの…。岸田君の従兄妹さんか。私、研究室の山盛です」
「岸田の従兄妹の沙耶です」
山盛教授に合わせるかのように沙耶は頭を下げた。誰も気づいていないようだし、沙耶の対応、行動パターンも、まずまずだ…と保は思った。問題は、これからだが、さてどうなるか・・と気を引き締めた。
「まあね…。こんなことをしてるんですよ」
山盛教授は自動補足機を沙耶に示した。
『エスカレーターに乗るようなものなんですか?』
「…ちょっと違いますが、ある意味で違わなくもない。まあ、エスカレーターの一人用と考えてもらえれば…」
『なんとなく分かります』
「分かってもらえますか?」
沙耶が簡単に理解を示したことで、教授はご満悦だ。
「沙耶、しばらく見てれば、俺達がやってることが分かるさ」
保は、これ以上、会話が弾(はず)めば危険と判断して、沙耶に釘を刺した。