中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第7回紬塾'10 「取り合せの美」

2010年12月10日 | 紬塾 '9~'12
当塾も染織の基礎学習から、いよいよ「着る」ための実践に入ってきました。
着物に関しては親からも学ぶ機会のなかった世代にとって頼りになるのは、
着物雑誌や、洋服で馴染んできた組み合わせを参考にしていくしかないのだと思いますが、
日本人の美意識の底には自然界の四季のうつろいということが深くかかわっていて、
着こなしにもおおいに取り入れられてきたものだと思います。
自然の微妙な変化に敏感に反応しながら、
布の風合いや色柄を使いこなしてきた染織文化(食、住もそうだと思いますが)が
私たちにはあるのではないでしょうか。
また取り合わせにしましても、単純ではない奥深さがあると思います。


知人から「何にしたらいいかしら?」と相談を持ちかけられた
昔の上質の珍しい着物地から仕立て替えしたものを見てもらう。
2本取れたので1本いただきました!ラメ入りで私のお気に入りの1本。
帯は何本あっても楽しいもの。上質のものであれば服地などからも作ることもできますね。
う~ん写真がピンボケでわからないですね。

講義の録音から、一部ですが紹介いたします。

[講義の記録から]

日本の「取り合わせの美」というのは、違うものをいかに絶妙に合わせるか、
全部違っていて、でもバラバラではない。
お茶事の懐石の器の取り合わせにしても全部違います。
染付もあって色絵もある、それから焼締のもの、塗りもの、
木地ものが入ってきたりと、全然世界の違うものが、ひとつの膳の上に揃います。

西洋的な統一させたものの見せ方ではなくて、毎回出てくるたびに「わあーっ」て思わせる、
一回性というのかな、あるいは一期一会というか、
そういったところで成り立つ美意識というものが日本人にはあると思います。
露地に生えている草花を茶室に生けるということはしないですよね。
一度見た花を茶室でもう一度見るという野暮はやらないわけです。

重ねないということがとても大事なことですが、
取り合わせのバランスをとろうとして、同系色でまとめがちです。
着物と帯と帯揚げと帯締めの取り合わせにしても、
私は重ならないようにということを意識して取り合わせを考えるんです。
ある意味崩すんですよ。破調の美といいますか、壊すわけです。
それが日本人の美意識としてあったと思います。

西洋の洋服の文化では、スーツは上下お揃いでなければおかしいし、
グレーのジャケットにグレーのパンツという組み合わせでも、
グレーの質が違ってると何かヘンな感じになりますね。
でも着物ですと、同じグレーでもちょっと質を違えて、
グレーとグレーの取り合わせを考えたりすることができるんです。
それが着物の世界なんです。

ちょっとだけはずす、統一しない。
着物も帯も帯締めも帯揚げもみんなが私が主役ですというふうにならないようにする。
脇役が悪いんじゃないんですね、脇役には脇役なりの光の当たり方がありますから…。
そういうことを意識してコーディネートするといいんじゃないでしょうか。


次回更新は12月下旬の予定です。



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