ウィトラのつぶやき

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EUの大統領

2009-12-23 11:20:05 | 社会
この秋、EUの大統領が選任された。ベルギーの首相だったヘルマン・ファン・ロンバウと言う人が初代の大統領になった。

EUの大統領とは正式には欧州理事会の議長ということらしい。欧州理事会は欧州の統合構想が始まった1960年台から開催されている各国首脳の非公式会議が発展したものである。

今年の12月1日に発効したリスボン条約の中で正式に規定されたらしい。 現状では大統領の選出方法は決まっていないのだが、12月1日には議長を決めないといけない、ということで話し合いで11月中に決めたらしい。

一時はイギリスのトニー・ブレア元首相が有力視されていたが、ドイツ、フランスなどが反対して調整型のロンバウ氏に決まったようである。どうも選任方法だけでなく権限や役割もあいまいで走りながら考えようということらしい。EUの憲法も草案されたが批准されずに流れてしまったようである。

こういうやり方がいかにもヨーロッパらしい、感じがする。先を急がず、皆の合意のとれるところから、少しずつ、確実に進めていく。

基本はヨーロッパが一つの国としてまとまるくらいの規模になったほうがアメリカや中国と戦っていく上で有利であるという各国の合意から来ている。 それぞれの国にはそれぞれの事情があり、利害が対立する部分もある。それでも合意のとれるところから始めて、通貨統合、そしてEU理事会が次第に各国の政治に影響を与え始めている。今回、初代大統領を調整型の人にしたのは正解だと思う。

アジアでは鳩山首相がアジア共同体構想を出している。日本や韓国にとってはこのような構想で統一していかないと次第に戦えなくなってくることが予想される。 しかし、アジア共同体は私はまず無理だろうと思っている。それは日本人を含めたアジア人に民主主義が十分浸透しておらず、底が浅いからである。

日本人で、自分が生活する上でのルールを自分で決めよう、そして皆と合わせていこう、というような考え方をする人はほとんどいない。このようなルールは上から与えられるものであると思っていて、与えられたルールに対して文句だけは言う。しかし力任せに抑えられると黙ってしまう、という人が圧倒的である。

仮に日本政府が日本に不利な条件で妥協しようとすると、国民の反対にあって選挙で負けてしまう。ヨーロッパのように権限があいまいなままに、シンガポールの人をアジアの大統領にするなども決して成り立たない感じがする。ヨーロッパも通貨統合で実績が出たから次のステップに進めているのだと思うが、アジアでははじめの一歩で躓くと思う。

携帯電話でGSM方式が世界を席巻した大きな理由は、この皆の合意をとって話を進める、という仕組みが出来上がっていたことが非常に大きい。

いずれEUの仕組みにEUコアメンバーではなくとも周辺メンバーとしてアフリカ・中近東などが入っていき、その波がインドからアジアに波及してくるのではないかと感じている