ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

将棋の名人戦と囲碁の本因坊戦

2009-07-23 10:41:52 | 囲碁
少し前に、将棋、囲碁の大きなタイトル戦が私の気持ちとしてはどうも盛り上がらない、と書いたが、今は両方とも終わっている。

将棋は羽生名人が4勝3敗で防衛し、囲碁は羽根本因坊が4勝2敗で防衛した。 将棋のほうは熱戦ではあったのだが私には分かりにくい内容だった。羽生名人の将棋は相手によって変わる、相手の得意戦法に飛び込んでいくような感じがあるので来年もまた羽生名人の名人戦が見られるということでよかったと思っている。

囲碁のほうはやはり物足りないまま終わってしまった。内容的には挑戦者の高尾九段のほうが強い感じがするのだが勝負は羽根本因坊が勝ったという感じである。従って逆転が多いのだが本因坊がうまい手を打って逆転したというよりも高尾九段の心の弱さが逆転につながった感じがする。

優勢な碁を勝ちきるのは大変難しく、自分でも逆転負けはしょっちゅうあるのだが、トッププロともなればあのくらいに優勢がはっきりすればきちんと勝ちきってほしいと思う。

この点で印象的だったのは名誉本因坊にもなっている趙治勲九段のやり方である。彼は優勢になってもそのまま逃げ切ろうとせずに、戦い抜く姿勢を基本としている。しかし、形勢判断は常にしていて「これで勝ち切れる」と感じるとそこからパタリの戦うのをやめて守りに入る。この判断をするのがかなり終盤の難しいところが少なくなってからであり、それまでは多少優勢であってもきちんと読んで戦いの中に踏み込んでいく。 従って、やりすぎて逆転負けをすることもあるが逃げに入ってから逆転を喫することはまずなかったと思う。

先日、テレビで高尾九段の師匠の(故)藤沢秀行九段の指導ぶりをNHKで放映していたが、藤沢さんの指導の根本は「逃げるな、立ち向かえ」だったと思う。戦おうとして踏み込めばミスも出やすく逆転されることもある。しかし逃げて逆転されるのと戦って逆転されるのでは後に残るものが違う。 今回の高尾九段の逆転負けは逃げの姿勢からの逆転が多かったように思う。

プロ棋士は勝敗が生活に直結している。色々言われても、勝率の高いのが一番である。しかし、まだ伸びる可能性のある人はやはり戦う姿勢を大切にしてほしいと思う。常に戦う姿勢を持っていた人が途中から引き揚げるようになると一時的にミスが下がって勝率が上がる。しかし1年もすると再び勝率が下がってくるのが常である。

少なくとも40歳くらいまでは、トッププロなら50歳くらいまでは戦いを中心にしてほしいと思う。坂田栄男九段、呉清源九段などの名棋士は生涯戦う姿勢を貫いていたと思う