ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

通信学会の凋落

2009-07-01 02:38:08 | 経済
最近の電子情報通信学会の会誌などを読むと学会に活力がないということが良く言われている。

大学の教授などと話をすると電気電子系は入試の偏差値もどんどん下がってきているそうである。要するに若い人にとって電気関係、特に通信関係が魅力的に見えていないということのようである。

日本全体をみると若者の理科系離れが問題視されている。その中でも電気系の凋落がひどく、電気系の中でも通信系の凋落がひどいということである。

私が大学生のころは電気系が工学部の中でもトップレベルだったし、大学を卒業してから現在までの変わり方を見ても、携帯電話、インターネットなど当時は存在しなかったものが現在では生活に不可欠になっている。

自動車などは進歩はしているがそれほど目に見えるほどの変わり方ではない。この傾向はまだしばらく続くだろう。 要するに電気の関係は技術進歩も早く社会に対する影響力も大きい。それがどうして人気がなくなってしまうのだろうか? 

おそらく職場のイメージが良くないのではないかと思う。安い給料と長時間残業というイメージがあり職業としてあまり期待できないというイメージがあるのではないかと思う。

電気関係は、理科系の中では一番理論と実際があう技術分野だと思う。つまり良い理論を考えればそれが実際の製品につながり瞬く間に世界中に広がる。その意味では大変に面白い技術分野である。

逆に言うとそのような発明ができる人はほんのわずかであり、そのような革新的なアイデアが出ない人は常に追いかけていかないといけない立場になる。

更に、新製品の価値がすぐに下がってしまうというのもこの分野の特徴である。アメリカのプロパテント政策とシリコンバレーの隆盛で新しい技術やアイデアはすぐに半導体に埋め込まれる。それを買えば良い製品が簡単に作れるので競争がものすごく激しくなる。

大手のメーカーが新しい発明をした場合にはそれを使ってコストダウンしたとしても急激に売価を下げるようにはしないで少しずつ価格を下げて大きな利益を享受する。これが大部分の製造業で起こっていることなのだが、電機関係ではそのアイデアが部品に入って安い値段で販売され瞬く間に広がってしまう。これが電気業界が利益なき繁忙を続けている理由だと思う。

そのおかげで世界が早く変わっているのだが、逆に業界のイメージが悪くなって人材が集まらないのはさびしいことである。 通信の人気がないのもこれにつながっているのではないかと思う。

通信の分野ではドコモなどの通信事業者は大変儲かっていて待遇も良いはずである。しかしながら、通信事業者は数が限られており雇用という点では極めて限定的である。この通信事業者数が増えない、つまり参入障壁が高いという点が彼らが利益を上げている源泉だと思うが、大部分の学生は数の多いメーカー系に行くことを想定する。

日本の通信機器メーカーの状況が良くないことが人気低下の理由ではないかと思う。

本来、面白いはずの分野に人が集まらない、これは国として考えるべき問題だと思う