伽 草 子

<とぎそうし>
団塊の世代が綴る随感録

サクラだ

2019年04月12日 | エッセー

 「任命責任は私にあります」とアンバイ君は言うが、それは違う。テメーの内閣という身内の不祥事なら「私の身から出た錆です」と言うべきだ。「任命責任」と言っているうちは「私に人を見る目がありませんでした」や「運悪く変なのを掴まされちまいました」と同義で、他責的言辞に変わりはない。怯まず自責を負う者こそ人に長たる者だ。
 「復興より議員が大事」とは、オリンピックという打ち上げ花火で政権の浮揚、つまりは議員の頭数を増やそうとしている政権の思惑をそのまま語っているに過ぎない。現に五輪工事のためにヒトもモノも横取りされ復興は滞っている。「残念」発言も国威発揚のメダル数が減る心配を率直に吐露したまでだ。
 石巻市をちゃんと読めないといっても、スカ官房長官は枚方市が“まいかたし”で、副総理のアッソー君は“ミゾウユウ”、アンバイ君は「云云」が“でんでん”で、「背後」が“せいご”。ほとんど同じレベルだ。“サクラだ”君だけを責めてやっては可哀相だ。国民的な知的劣化を彼らが先鋭的に体現しているのだから。
 PCに触らずともUSBを知らずとも、サイバーセキュリティ戦略本部担当大臣は務まる。オリンピック憲章だってそうだ。読んでないからといって、それがどうした。そのような区区たる知識の有無に大臣の適否が懸かっているわけではない。その付置をもって派閥の威勢を顕示し、あるいはその威勢を封殺した証としての付置を顕示することで与党勢力を統御することが組閣の第一義的意味である。職掌に応じた適否なぞは末節の関心事だ。だから8人も辞める。
 こないだ、アンバイ政権が忖度政治であることを正直に打ち明けて首が飛んだなんとか副大臣がいた。今度は“サクラだ”君だ。客の振りをして真っ先に「買った!」と声を上げる露天商の配下を偽客(サクラ)と呼ぶ。きっと“サクラだ”君は甲斐甲斐しくサクラを演じようとしたのだろう。いや、演じてみせた。「復興」ではなく、「議員」に「買った!」と手を挙げた。露天商の意を忠実に準ったとみてよい。ただ、忠実過ぎた。なんせサクラが選んだら擬い物に決まってる。「身から出た錆」という由縁だ。 □